【R18】スパダリ幼なじみは溺愛ストーカー

湊未来

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計画的犯行


「廉さん! どういう事ですか!?」

「昔みたいに、廉って呼び捨てにしてくれないの? 『さん』付けなんて他人行儀な呼び方、やめてほしいな。そうじゃなきゃ、話さないよ」

(廉なんて、恋人でもないくせに)

 優しい口調なのに、否とは言わせないと脅されているような錯覚を覚えるほどの迫力に、美咲は渋々従う。今は状況確認が先決なのだから。

「――廉、どういう事かちゃんと説明してください。私と一緒に住む家に向かっているって、どういう事なの?」

「そのままの意味だよ。これから美咲はひとつ屋根の下、俺と一緒に住むんだよ。美咲の両親の許可もとっているし何の問題もない。ちなみに今まで美咲が住んでいたアパートは引き払って、荷物も全て引っ越し済みだから。あとは、なんの気兼ねもなく一緒に来ればいい」

「なっ――、何よそれ!!」

 あまりの驚きに開いた口が塞がらない。

(どういう事よ! 私の居ない間にアパートを勝手に引き払って、引っ越し済みって)

 飄々とした廉の言葉に、瞬間的な怒りが沸いてくる。

 貧乏大学生が住むに相応しいおんぼろアパートだったけど、今朝までは普通に暮らしていたのだ。間違っても引っ越し業者が来るような雰囲気はなかった。大家から引越してくれと言われた訳でもない。

(じゃあ、私は家なしって事なの??)

「……冗談よね?」

「冗談に聞こえた? 俺は事実を話しただけだけど」

 美咲の背を大量に冷や汗が流れていく。

 このままなし崩しに廉の家へ行く事だけは避けなければならない。一人になって冷静に考える時間が欲しい。今夜は、友人の瑠璃の家に泊めてもらい、朝一で母に状況確認をしなければならない。住んでいたアパートにも行きたい。

 とにかく今は、廉から離れるべきだ。

「廉! 近くの駅で降ろして!!」

「……はは、俺が簡単に美咲を解放すると思ってるの? まだまだ甘いな。美咲は、駅で降りてどうするの? 今夜はビジネスホテルにでも泊まるの? それとも女友達の家かな?」

「そんなこと……、廉には関係ないでしょ」

「まぁ、彼氏の家って事はないね。俺と離れていた三年間、一度も彼氏が出来た事なんて、なかっただろう」

「何でそんな事知ってるのよ!?」

「今の世の中、身辺調査なんて簡単に出来るんだよ。お金さえあればね」

 運転席に座り、淡々と話す廉の言葉に震えが走る。

 廉と離れた三年間、いったい彼は私のどこまでを把握しているというの。

「それで、今夜は何処かに泊まるとして、明日からはどうするのかな? ずっと泊まる場所を探して点々とするのも学生の身では無理じゃないかな。実家に帰るのも、大学からは遠過ぎるし、通えなくなっちゃうね」

「両親に事情を話して、新しいアパートを見つけます」

「あぁ、それも無理だよ。しばらくぶりに美咲の両親に挨拶に行った時、美咲と一緒に暮らす許可は取ってあるから」

「はっ?」

「弟の遥が出て行って、家に空き部屋があるから美咲が来ればいいと提案したら、とても喜んでいたよ。俺の持ち家だし、家賃もいらないと言ったら、是非と。家賃は美咲がバイトをして払っていたんだろう。それを心苦しく思っていたみたいだね」

 美咲の家は、どこにでもいる会社員の父とパートで働く母の三人家族だ。平均的な収入の一般家庭に、美咲を大学に入れて一人暮らしをさせるだけの金銭的余裕はない。

 それでも、隣の東條家へ廉が帰ってくるかもしれない状況で、実家に居続ける事だけは避けたかった。だからこそ、わざわざ実家から遠い都心の大学に進学し、一人暮らしを押し切ったのだ。その為、家賃含めた生活費は、バイト代で賄っているのが現状だ。

 実家にも帰れないなんて……、廉と離れたくて、実家から遠い大学を選んだのが、仇になった。

「でも、未婚の男女がひとつ屋根の下、一緒に暮らすなんて両親が許す訳ない」

「あぁ、それも問題ない。昔から美咲の両親には信用されているから。小さな頃から面倒を見てきた甲斐があったよ。防犯も不十分な安アパートに一人暮らしさせるより、安心だってさ。美咲がまた、一人暮らしに戻るのは無理だと思うよ。あきらめて一緒に暮らすしかないみたいだね」

 隣で嬉しそうに笑う廉を見て、絶望的な気持ちになる。

 知らぬ間に張り巡らされた蜘蛛の糸にかかった哀れな虫のようだ。廉が私に執着する理由がわからない。

 廉は、今でも静香さんの事が好きなのよ。

 あの時、静香さんから香った廉と同じ香水の匂い……、それを今でも愛用しているのが何よりの証拠だ。

 廉はただ単に、勝手に離れて行った年の離れた幼馴染みに怒っているだけ。

 メール一文だけの別れの言葉を残して、去った幼馴染に。

 勝手に離れて行った私に怒り、捕らえる事で自分の優位を再確認したいだけ。

 男の狩猟本能なのか……

 好きでもない女でも、思い通りにならなければ、手に入れたくなるものなのね。

 廉から逃げるのを諦めた美咲は、どうでもいい事を考えながら、流れていく車窓をぼんやりと眺めた。
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