【R18】スパダリ幼なじみは溺愛ストーカー

湊未来

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我慢するだけの恋①


「美咲ちゃん、ごめん。無理やり連れ出して」

 夕闇に沈んだ街並みは、ネオン輝く繁華街へと姿をかえる。
 司に手を引かれ走り続けること数分、美咲は繁華街の路地裏へと着いていた。
 はぁはぁと息が切れ、呼吸を整えるため胸に手をあて深く息を吸う。すると、冷たい空気が肺へと入り、熱のこもった身体を鎮めてくれた。

 路地裏の壁に背を預け、大通りへと視線をうつす。廉が追いかけてくる気配はない。

 心に宿る虚しさを振り払うかのように頭を振る。しかし、頭の中から廉の存在が消えることはなかった。

 廉に追いかけてもらいたかったのだろうか。
 あの時、司の手を振り払っていれば廉は私と一緒にいてくれたのだろうか。

 考えても答えなど出るはずもない。わかっているのは、性のはけ口でも、他の男に取られるのは癪に障るということだけ。

 廉の本命は、『川口静香さん』なのだから。

 司の手を取ったことは、正しい選択だったのだ。

(私も、前に進まなきゃ)

「ううん、連れ出してくれてよかった。ありがとう、司さん」

「また、司さんって言ってる。呼び捨てにしてって言ったのに」

「あっ……」

「まっ、いいや。美咲ちゃんが俺の手を取ってくれたから」

 離れた手を再度掴んだ司の指が美咲の指に絡み、キュッと握られる。恋人のように絡む指先に、美咲の心臓がトクンっと跳ねた。

「美咲ちゃん、ちょっと歩こうか」

 司に手をひかれ歩き出した二人は大通りを避け、路地から雑多な街中へと進む。ネオン輝く飲み屋街は、夜がふければふけるほど人で賑わい、皆肩を寄せ合い歩く。そんな風景の中、司と二人歩いていることが美咲には不思議でならなかった。

 まだ、幸せだったあの頃。いつも手を繋いで欲しいとせがむのは、美咲の方だった。
 今は、他の人と手を繋いでいる。

 本当は、廉と二人、昔みたいに手を繋いで歩きたかったのかな。

 見下ろした先、司に握られた手がもの悲しく映る。

「ねぇ、美咲ちゃん。さっきの男の人が、美咲ちゃんの好きな人なんでしょ?」

 人混みをぬうように少し先を歩く司の言葉に美咲の足がとまる。

 好きな人……
 今でも、たまらなく好きな人。

「泣いているの、やっぱり気づいていないんだね」

「えっ……」

 振り向きざまに美咲の手をひいた司が、頬を伝う涙の跡を指先で拭う。そして、気づいた時には唇に温もりを感じていた。

「俺が、アイツの代わりにはなれないのかな? 泣くほど辛い恋なんて、捨てちゃえばいい。俺に寄りかかってもいいんだよ」

 キュッと抱きしめられ、耳元で告げられた言葉が全身を震わす。

 辛い恋。
 我慢するだけの恋。
 逃げてもいいのかな……

 司の言葉が、甘い毒となりぽっかりと空いた心の穴を埋めていく。

 もう、我慢したくない。
 辛いだけの恋なんて、こっちから捨ててやる。

 美咲は、司の頬を両手で包むと自らの意思で彼の唇に口づけた。
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