22 / 45
重なり合う心①
「はい。少し、落ち着くと思うから」
「ありがとう」
浴室で泣きじゃくった美咲は、廉に抱きかかえられリビングのソファへと連れて来られた。脱衣所で着せられたバスローブが冷え切った身体をわずかに温めてくれる。ソファの上、身体を縮こませた美咲は、ジッとリビングの床板を見つめる。
今の状況が理解できない。廉は、話をしようと言った。だけど、何を話したらいいかも、今の美咲にはわからなかった。
美咲をソファへと置き姿を消した廉が、キッチンから戻ってくる。渡されたマグカップの中には、温めたミルクが入っていた。
湯気が立ちのぼるカップに口をつけ、ひと口飲めば冷え切った心を暖めてくれるような気がする。緊張からこわばっていた身体がやっと解放され、美咲はホッと息を吐き出した。
「さっき、美咲が言ったことは本心? 俺を今でも好きだと言った、あの言葉は本心からなのか?」
目の前のソファに座った廉がよこす真剣な眼差しと、美咲の視線がからむ。
廉が好き。それは、本心だ。
三年前から変わらない想い。何度も捨てようと思った廉への想いは結局捨てられず、今でも美咲の心の中に巣食っている。
全てをぶちまけた後だ。今さら、隠そうとは思わない。
「……うん」
「じゃあ、なんで俺を拒むんだ? 三年前だってそうだ。美咲から別れのメールが送られて来るまでは、俺達の仲は悪くなかった。少なくとも俺は、美咲と別れるつもりなんてなかった。確かにあの当時、俺はモデルの仕事が忙しくて、美咲は大学受験で、ほとんど会えていなかったけど、美咲が大学に合格したら、もっと一緒にいようって、約束していたじゃないか。なのに、なんで突然、あんなメール送ってきたんだ? それに、どうして俺が他の女を好きだなんて思うんだよ。誰かに吹き込まれたのか?」
美咲は廉の問いに、ただ首を横に振り『違う』と示すことしか出来ない。
廉の疑問も、もっともなのだ。当時、廉と美咲の仲はとても良かった。お互いに忙しく、会えない日々が続いていたが、毎日連絡を取り合い、寂しいながらも二人で歩む未来は希望に満ちていた。
受験に合格したら、都心で一人暮らしをして、たまに廉の家に行って、お泊まりをする。そんな小さな幸せを考えるだけで、美咲の未来は明るく、輝いて見えたのだ。
――川口静香。彼女が美咲の前に現れるまでは。
今でも、彼女の纏う廉の香りが、頭にこびりついて離れない。
「話しては、くれないんだね」
廉の疑問に答えることができない美咲は、うつむき涙を耐える。そんな態度しか示せず震えることしか出来ない美咲へと廉が近づき抱きしめる。その強すぎる抱擁に、美咲の心がキュッと痛みだす。
「話したくないなら、それでもいい。でも、これだけは信じて欲しい。俺は、昔も今も美咲以外に好きになった女なんていない。好きでもない女に、こんなに執着するわけないだろう」
廉の言葉が心をふるわす。
「美咲が、好きで好きでたまらないんだ。俺以外に頼る人がいなければいいと、本気で思うほどに愛しているんだ。信じて欲しい。愛しているのも、手に入れたいと、こんなに強く思うのも美咲だけなんだ」
廉は、私を愛しているの?
本当に、私の事を愛してくれているの?
信じていいのか、わからない。
でも、震える声で真摯に紡がれる言葉が、美咲の心に突き刺さる。悲しみの涙でポッカリと空いた心の穴が、廉の言葉で満たされていく。
「好き……、廉が好きなの。ずっとずっと、愛していた」
美咲は、もう我慢しなかった。
廉に抱きつき、あふれ出した想いのままに泣き続ける。
子供みたいに泣きじゃくる美咲の頭を、廉はいつまでも優しく撫で続けてくれた。
そして、大きな手の温もりに安心した美咲は、廉の腕に包まれ、深い眠りへと落ちた。
あなたにおすすめの小説
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
社長の×××
恩田璃星
恋愛
真田葵26歳。
ある日突然異動が命じられた。
異動先である秘書課の課長天澤唯人が社長の愛人という噂は、社内では公然の秘密。
不倫が原因で辛い過去を持つ葵は、二人のただならぬ関係を確信し、課長に不倫を止めるよう説得する。
そんな葵に課長は
「社長との関係を止めさせたいなら、俺を誘惑してみて?」
と持ちかける。
決して結ばれることのない、同居人に想いを寄せる葵は、男の人を誘惑するどころかまともに付き合ったこともない。
果たして課長の不倫を止めることができるのか!?
*他サイト掲載作品を、若干修正、公開しております*
罰ゲームで告白されたはずなのに、再会した元カレがヤンデレ化していたのですが
星咲ユキノ
恋愛
三原菜々香(25)は、初恋相手に罰ゲームで告白されたトラウマのせいで、恋愛に消極的になっていた。ある日、職場の先輩に連れていかれた合コンで、その初恋相手の吉川遥希(25)と再会するが、何故かヤンデレ化していて…。
1話完結です。
遥希視点、追記しました。(2025.1.20)
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
【完結】大学で人気の爽やかイケメンはヤンデレ気味のストーカーでした
あさリ23
恋愛
大学で人気の爽やかイケメンはなぜか私によく話しかけてくる。
しまいにはバイト先の常連になってるし、専属になって欲しいとお金をチラつかせて誘ってきた。
お金が欲しくて考えなしに了承したのが、最後。
私は用意されていた蜘蛛の糸にまんまと引っかかった。
【この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません】
ーーーーー
小説家になろうで投稿している短編です。あちらでブックマークが多かった作品をこちらで投稿しました。
内容は題名通りなのですが、作者的にもヒーローがやっちゃいけない一線を超えてんなぁと思っています。
ヤンデレ?サイコ?イケメンでも怖いよ。が
作者の感想です|ω・`)
また場面で名前が変わるので気を付けてください
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。