【R18】スパダリ幼なじみは溺愛ストーカー

湊未来

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幸せと不安は隣りあわせ①


「ただいま、美咲。夕飯は、何かな?」

「煮込みハンバーグにしてみたの。あとは、マッシュポテトとイタリアンサラダだよ」

 キッチンに立ち、夕飯の準備をしていた美咲に、帰宅した廉が近づき、手元をのぞく。

「うまそうだな」

「もうすぐ出来るから、リビングで待っててよ。先に、お風呂入っちゃってもいいよ」

「食事もいいけど、俺は先に美咲を食べたい」

 背後から手元をのぞいていた廉に、美咲は腰を抱き寄せられ、耳元でささやかれた低音ボイスに力が抜けそうになった。

「……ダメ、ご飯だってば」

「色っぽいうなじを見せて、誘った美咲が悪い」

 顔を寄せた廉に、首をチュッと吸われる。

「ほらっ、誘っている。耳も首も赤くなって、本当可愛い」

「ば、ばか……、さ、誘ってなんて、いないってば」

 心が通じ合った夜以来、毎日のように重い愛を与えられている美咲の身体は、わずかな愛撫にも反応するようにつくりかえられてしまった。

(今夜こそ、流されるわけにはいかないんだから)

 美咲は、陥落しそうになる身体を叱咤し、シンクの縁に手をつく耐える。

 廉との新たな生活での決まり事。朝食は廉の担当、夕飯は美咲の担当である。しかし、毎日の悪戯で、二人で出来立てのご飯を食べられたためしがない。

(廉の悪戯を見越して、温め直せる料理をチョイスしている私もどうかと思うけど)

 腰へと回された腕をはがそうと抵抗を試みるが、そんな可愛い反応など廉には効かず、反対に伸ばした手を捕まえられてしまうだけだった。

「廉、本当にダメだから。今日こそ、出来立てのご飯を一緒に食べたいの。お願いだから」

 美咲の必死の抵抗は、耳元でささやかれた恥ずかしいお願いに一蹴されてしまう。

「じゃあ、美咲からキスしてくれたら我慢する」

 キュッとつかまれた手を引かれ身体を反転させられた美咲の視線と廉の視線が絡みあう。
 シンクに両手をつき美咲が逃げられないように囲い込んだ廉の綺麗な笑顔が迫り、唇に触れる寸前、目をつぶった廉にささやかれた。

「ほらっ、キスして……」

 もう、恥ずかし過ぎる。

 ぶつかるように唇を重ねた美咲は、すぐ離れようとしたが、それは叶わなかった。廉の胸を押し戻すため置いた手は役目を果たさず、逆に頭を抱えられた美咲は、濃厚なキスを仕掛けられていた。

 わずかばかりの抵抗を示し閉ざした唇を割られ、廉の舌の侵入を許せば、あとは彼の愛撫に翻弄されるだけ。抵抗虚しく、廉が満足するまで唇を貪られ、足に力が入らなくなった頃、ようやく美咲は解放されたのだった。

 キッチンの床にへたり込んだ美咲を廉が軽々抱き上げ、リビングのソファへと下ろす。

「あとは俺がやっておくから、美咲は待ってて。力抜けちゃって、立てないみたいだから」

「誰のせいだと思ってるのよ!!」

 勝手なことを言う廉を睨むが、悪戯な笑みを浮かべ、悪びれた様子もなく上機嫌だ。

「まぁ~、感じやすい美咲のせいだよな」

「えっ!? なによ、それ!! 廉のバカァァァァ」

 美咲は手近にあったクッションをつかみ投げつけるが、上機嫌で笑いながらキッチンへと消えて行く廉には届かなかった。

「本当、意地悪なんだから……」

 なんだかんだ言いながらも、想いを通じ合わせてからの生活は幸せに満ち足りたものだ。

 忙しい廉とは、すれ違い会えない日もあるが、わずかな時間でも必ず電話をくれる。そして、廉の寝室で一緒に寝ると決めてからは、会えなくとも抱きしめて寝てくれているとわかる。

 大切に、大切に、してくれている。

 だからこそ、怖い。
 いつかこの幸せが、消えてなくなってしまいそうで。

 あの日から、静香の存在が美咲を苦しめる。

 なぜ、静香は廉と同じ香水を使っていたのか?
 あの当時、静香は廉の恋人だったのではないか?

 廉と別れるに至った静香とのやり取りの真相を聞いていれば、こんなに苦しまなかった。

 廉を信じていないのではない。
 ただ、あまりにも幸せだから怖いのだ。

 静香との関係を問いただせば、廉との幸せな日々は終わりを告げる。そんな妄想に取り憑かれ、前に進めない。

(あの夜、静香さんとの関係を聞いていれば、不安になることもなかったのかな。今さら後悔しても遅いけど……)

「美咲、ご飯出来たよ。あれ? なんか、落ち込んでる。何かあったのか?」

 些細な私の変化にも気付いてくれる廉を疑うなんてバカよね。きっと、大丈夫。

 美咲は無理やり笑みを浮かべ、廉に向きなおる。

「なんでもないよ。大丈夫だから! お腹空いたぁ~、廉ご飯食べよ」

 美咲はあえて明るい声を出すと、心配そうに顔をぞき込む廉の手をとり、ダイニングテーブルへと向かった。

「廉も食べよ! 早く早く」

 怪訝な顔をして椅子に座る廉に気づかない振りをして、反対側の席に座った美咲は、手を合わせ出来たての夕食を食べ始めた。
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