【R18】スパダリ幼なじみは溺愛ストーカー

湊未来

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ぶつかり合う心② ※


 頭上から降り注ぐシャワーの雨は、美咲の心から流れる涙そのものだった。

 司と別れ廉に捕った美咲は、車に乗せられタワーマンションへと連れ戻された。
 無言のまま廉と二人、玄関をくぐった美咲は、その足で浴室へと連れて来られ、抵抗虚しく頭上からシャワーを浴びせられたのだった。

 冷たいシャワーが服をぬらし、髪からは雫が滴り落ちる。話も聞かず暴挙に出た廉に、美咲の頭に血がのぼる。

「なにするのよ!!」

 美咲は、キッと廉を睨むが、見下ろされた視線の冷たさに、それ以上言葉を紡ぐことは出来なかった。

「他の男の匂いを纏わりつかせたまま、家に入れたくなかったんでね。それで、美咲はあの男にどこまで許したんだ?」

 美咲を壁際に追いつめた廉が、顔の横に手をつく。至近距離で見下ろされ、怒りを滲ませた声で問いつめられた美咲は、顔をそらし口を閉じることでわずかばかりの抵抗を示す。しかし、そんな抵抗でひるむ廉ではなかった。

「俺から逃げまわって、男までつくって。仲良く手を繋いで歩いていたようだが、唇くらいは許してしまったのかな?」

 美咲の顎をつかみ、無理やり正面へと向かせた廉の指が、濡れた唇をなぞる。

「それとも、とっくに身体まで許したのか?」

 皮肉げな笑みを浮かべ紡がれる廉の言葉に、美咲の目に涙が浮かぶ。

「――っ、ちが……」

「口では、なんとでも言えるよね。あの男が言うには、美咲は嘘つきみたいだから。彼氏はいないんだろう?」

 廉の言葉に、ズキリと胸が痛みだす。

 彼氏はいない。
 廉とは三年前に別れたのだ。
 今の私は廉の彼女でもなんでもない。

「私に、彼氏なんていない。三年前に廉と別れてから彼氏と呼べる人が私にいなかったことは、どうせ調査済みなんでしょ」

「俺は美咲と別れたつもりはないけど」

「はぁあ!? 三年前に別れのメールを送ったじゃない」

「確かに一方的に別れたいとメールが送られて来たけど、了承した覚えはない。俺が納得していないのに別れたつもりになってるなんて、美咲は無責任なんだね。あんなメール一つで、別れられるなんて本気で思ってたの? 今でも美咲は俺の恋人だ」

「そんなの屁理屈よ!」

「突然音信不通になっておいて、よくそんな事が言えるな! 一方的に別れを切り出された俺の気持ちなんて考えたこともないんだろう。そんな無責任で身勝手な美咲の言うことを俺が信じると思う? あの男とどこまでしたんだ!? キスか? 身体を触らせたのか? それとも、最後まで許したのか?」

 怒りの炎を瞳の奥に宿しつめ寄る廉に、美咲が言葉を発することはなかった。
 冷たいシャワーが頬を伝い、あふれ出した涙の跡を洗い流す。

「黙りか……、じゃあ、身体に聞いた方が早いか。あの男と遊んで来たばかりだ。痕跡は隠しようがないしな」

「――っ!? ま、待っ……」

 廉の指先に顎を掴まれた美咲は、無理やり唇を塞がれていた。
 引き離そうと廉の胸を押す手は、掴まれ頭上に固定されてしまう。抵抗虚しく美咲の唇をこじ開け侵入した廉の舌は、縦横無尽に口腔内を動きまわり、緊張で縮こまった舌を絡め取った。

『じゅ、じゅるぅ』と卑猥な音を響かせ吸われた唇から、含み切れなくなった唾液が顎を伝い首筋を落ちていく。
 頭上へと固定された美咲の指と廉の指が絡み合い、口腔内を蹂躙する舌に官能を引きずり出される。徐々に弛緩していく身体を自力で支えることが出来なくなった美咲は、ズリズリと浴室の床へと、へたり込んでしまった。

「美咲。こんなキス……、あの男とはしなかったの?」

 言葉を発しない美咲に焦れたのか、未だ焦点の合わない美咲の目をのぞき苦笑をもらした廉が、濡れて肌に貼りついたシャツワンピースのボタンに手をかけた。

「抵抗しないんだね。それとも、感じすぎて続きを強請っている?」

 抵抗なんて出来るわけ無い。
 たとえ性のはけ口だったとしても、好き人から求められれば許してしまう。
 好きになった方が損をする。でも、拒めない。

 プチプチとボタンを外されワンピースが肩から落ちる。廉の眼前には、下着姿の美咲が晒されていた。

「見たところ不埒な跡は、残ってないようだけど……」

 首筋から胸元へと滑るように降りて来た指先が、ブラジャーのフォックを外せば、乳房がフルっとまろみ出る。至近距離で見下ろしている廉の目には、美咲の豊かな乳房が丸見えになっていることだろう。

 羞恥に染まる顔も、ショーツだけの心許ない姿も頭上で両手を固定されている美咲は隠せない。そのことが、羞恥心をさらに煽る。

「ワンピースを着て行くなんて、あの男を誘いたかったのか? いつから美咲は、そんな破廉恥な女になったんだろうね」

「ち、違う……」

「違わないさ。ワンピースなら、わざわざ脱がす必要もない。実際にココも触らせたんじゃないのか?」

 美咲の片足をグイッと持ち上げた廉が、顕になった下着のクロッチ部分を指先でグリグリと撫でる。その強すぎる刺激に美咲は、身体をのけぞらせ身悶えるしかなかった。

 まるで尋問を受けているかのような廉とのやり取りに、涙が滲む。

 廉は私が誰にでも股を開く、軽い女だと思っているの? いいや、実際に軽い女なんだろう……

 廉と二人暮らす家に帰るのが嫌で、一人取り残されるのが寂しくて、司に縋ろうとしてしまった。
 あのまま、偽りの恋人関係を続けていたら、司と男女の関係になっていた。

 廉に軽蔑されても、仕方がない。
 ただ、弄ぶような関係……、もう終わりにして欲しい。

 廉に再会してから積もり続けたもやが心を真っ黒に染める。

「廉……、私はあなたが言うように軽い女なんでしょうね。司さんと男女の関係になるような軽い女、廉には必要ないでしょ」

 司と身体を重ねたと嘘をついた。
 告白を聞いて、廉がどんな顔をしているかなんて、美咲にはどうでもよかった。
 心にあるのは、苦しい想いから解放されたいと思う気持ちだけ。だから、嘘をついた。
 
「軽蔑したでしょ。私はあなたが執着するような女じゃないの。寂しさを紛らわすために、好きでもない男に股をひらくような軽い女は必要ないでしょ。だからもう解放して」

 涙が頬を伝い落ちていく。しかし、頭から降り注ぐ冷たいシャワーが美咲の涙を一緒に洗い流してくれる。

(廉を好きだと叫ぶ心の声も、シャワーの音で消されてしまえばいいのに)

 虚な目で見上げた廉の顔も、涙で歪み表情すらわからない。全てを投げ出し力が抜けてしまった美咲を廉が抱きしめる。

「それでも俺は、美咲を手放せない……」

 廉の言葉に、心の中で耐え続けた感情が荒れ狂い爆発する。怒りの感情に支配された美咲は不自由な身体で暴れ出した。

「……、離して!! もう、十分でしょ。私の自由を奪って、思い通りに扱って、満足でしょ! もう、離して!!」

「美咲が俺を嫌っているのは分かっている。家を奪い、家族を懐柔し、逃げられないように追い込んだ。犯罪紛いなことをしても、美咲を手に入れたかった」

 頭をふり、身体を捻り、叫ぶ美咲を廉が強く抱きしめる。強く強く美咲の身体を抱く廉の熱さに、『愛している』と心が痛いくらいに叫ぶ。
 本気で愛しているからこそ、苦しいのだ。

 心を支配する痛みから逃げるように、なおも暴れる美咲の耳に信じられない言葉が飛び込んできた。

「美咲、愛しているんだ。三年前、別れてからもずっと。俺から離れるなんて言わないでくれ……」

『愛している』の言葉に時間がとまる。

 廉が私を愛している?
 嘘よ……、彼には静香さんがいるじゃない。

 抵抗を止めた美咲は、自嘲的な笑みを浮かべ言葉を絞り出す。

「ふふ、嘘つき。廉は、私と付き合っていた三年前も、私のことなんて愛していなかった。あなたが私と付き合っていたのは同情から」

「ちょっと、待ってくれ。どうしてそんな誤解が生まれるんだ。昔も今も俺が好きなのは美咲だけなのに」

「なら、なぜあの時――――」

――――静香さんは、廉と同じ香水を使っていたの。

 美咲の口から、言葉が紡がれることはなかった。

 廉は知らない。
 三年前、静香が美咲に会いに来たことも、廉と別れるように迫ったことも。

 でも、その事実を美咲が廉に伝えることはない。疲れてしまった心が、それを許さない。

 美咲の心は決まっていた。

「もう、良いじゃない。勝手に別れを切り出し、音信不通になった女に傷つけられたプライドは、私を思い通りに扱って満足したでしょ。だからお願いよ。もう、解放して……」

 これで、最後だ。廉との関係も終わる。

 妙にスッキリした頭で、美咲はポツリ、ポツリと心の内を吐露する。

「廉のことが、本気で好きだった。別れてからも、忘れられなかった。今でも、廉が好きよ。……だから耐えられないの。あなたが他の女性を好きだと分かるから。そんなあなたの側にいるのは辛過ぎる」

 頬を伝う涙はとめどなく、いつの間にか止まってしまったシャワーが、涙の跡を消してくれることもない。だから、美咲は声を出して泣いた。体裁も、羞恥心もかなぐり捨てて、子供のようにわんわんと泣き続けた。そして、どれくらい泣き続けていたのだろうか。やっと落ちつきを取り戻した美咲を抱き上げ、廉が言った。

「色々と、お互いに誤解しているみたいだ。二人できちんと、話をするべきだ」

 冷静さを取り戻した廉の声が、浴室に響き消えた。
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