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用意周到な彼②
朝食を食べ終わった美咲は、自室へと駆け込むとすぐに、母へと電話をかけた。
あいさつもそこそこに、自分の置かれた状況について切り出しわかったことは、昨夜廉が言ったことは全て事実で、彼は美咲に嘘をついていなかったと言うことだ。
アパートの退去手続きから、引越しの手配まで、全て廉が代理でしてくれることになっていると言った母の言葉は、美咲にとっては絶望以外の何ものでもなかった。
廉の話の中で唯一違ったのは、美咲がすでに家なしになっていると言うこと。両親は、アパートの解約は廉と美咲、二人でするものだと思っている。ここで知らない間に勝手にアパートを解約され、廉の住むマンションに強制連行されたと母に訴えれば、アパートを借り直す許可も出たかもしれない。しかし、廉を誉めちぎる母の話を聞いているうちにそれも出来なくなってしまった。
離れて暮らす両親には心配をかけたくない。
昨夜の出来事が、用意周到な計画の元に準備され、実行されたことを思い知り、ほとぼりが冷めるまでは廉と一緒に住むしかないと、美咲はしぶしぶ納得するしかなかった。
「――っ遥!! 貴方のお兄さん、いったいどういうつもりなのよ!?」
「あっ……、とうとう兄貴、実行しちゃったか」
三コール目で電話に出た遥に向かい、美咲は開口一番怒鳴りつけていた。
今をときめくアイドルグループBRADMOONのメンバーである遥は、廉の弟でもあり、美咲の幼なじみでもある。多忙をきわめる遥に電話が繋がるか心配だったが、上手くいった。
「遥……、もしかして知っていたの?」
「いやぁ、まぁ。知っていたというか、何というか……」
歯切れの悪い返答に、美咲の怒りのボルテージも上がっていく。
「遥、知っていたわね。廉による拉致監禁計画を!?」
「拉致監禁って、おおげさなぁ」
「大袈裟なもんですか!? 知っていたならどうして教えてくれなかったのよ! 昨日の学園祭だって、廉が来るってメールで教えてくれても良かったじゃん! そしたら逃げられたかもしれないのに……」
「あっ! それ無理だわ。用意周到な兄貴が美咲の行動を把握してないと思うか? 大学からは逃げられても、解約されたアパートの前でとっ捕まるのがオチだ。まぁ、上手く逃げられても、家なき子じゃなぁ~、遅かれ早かれ捕まる運命だったんだ。諦めろ」
「そんな、無責任なぁ……」
「それと今だから話すけど、俺と美咲が二年前から繋がってるの、兄貴知ってるぞ」
「えっ!? どういう事?」
遥の言葉に美咲の心臓が嫌な音をたて、軋む。
遥とは、二年前から廉に隠れて、電話やメールでのやり取りをしていた。
廉と別れてすぐの一年目、彼と会うのが怖くて美咲は実家に帰らなかった。都会での新生活に早く慣れたいと言った美咲の願いを聞きいれ、両親も帰って来いとは言わなかった。しかし、二年目も同じ言い訳が通用するはずがない。
二年目の夏休み。美咲と同じく実家へと帰って来た遥に偶然再会し、今後も廉と鉢合わせをしないよう、定期的に連絡を取り合う約束をしていた。
「そもそも、夏休みに俺が美咲と出会うように仕向けたのも兄貴だぞ。お前が兄貴と別れてから、スマホもかえて一切の連絡も断ち、一人暮らしを始めた時の兄貴の荒れようは凄かったんだから。当時の兄貴に逆らう勇気はない~。マジで殺されると思ったよ」
「嘘でしょ!?」
「嘘じゃ、ねぇよ。大学が休みになるGWと夏休み、正月休みは必ず実家に戻るように命令されて、必ず美咲とコンタクトを取れと言われていたんだ。そこに、まんまとお前が帰って来たと言うわけだ。だから、美咲のスマホの電話番号もメールアドレスも全て兄貴は知ってるぞ。もしかしたら、GPSアプリで追跡されているかもな。調べといた方が良いぞ。兄貴ならやりかねん」
「……冗談よね。じゃあ、今までの私の行動は全部廉に筒抜けだったってこと?」
「まぁ~、そうなるな。美咲もさっさと諦めて兄貴とより戻せよ。今までも兄貴の掌の上で転がされていたんだから、今更逃げようったって無理だぞ。家無しで、美咲の両親の心まで掴んでるんじゃ、兄貴を頼るしかないだろう」
遥の言葉に美咲はぐうの音も出ない。
用意周到に張り巡らせた罠にかかった羽虫のように、美咲は廉の手の中へと落ちてしまった。
廉からは、もう逃げられない。
頭の中に浮かんだ言葉が美咲を追いつめ、遥の言葉を、ただ呆然と聞くことしか出来なかった。
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