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重なり合う心②
「美咲、起きたの?」
「うぅん……、あれ? ここは――、きゃっ……」
重いまぶたに薄らとうつる影。ぼやける視界が、徐々にはっきりすると同時に美咲は叫んでいた。
目の前に迫った綺麗な顔に驚きの声をあげた美咲は、逃げに転じた。しかし、廉に腰を引き寄せられ抱き込まれている状況では逃げるに逃げられない。
「今夜はずっと、美咲の顔を見ていたい。やっと手に入れたんだ。離したくない」
耳元で響いた色気増し増しの低音ボイスに、美咲の耳が真っ赤に染まる。
(なに!? この甘々な廉は)
一緒に住み始めた時とは、百八十度違う廉の態度に、美咲はただ戸惑うしかない。
ますます赤みを帯びる頬を誤魔化すように、美咲は廉の胸を両手で押すがびくともしない。しかも、さらに抱き込まれ、耳元で囁かれた言葉に、美咲の顔までも赤に染まった。
「ねぇ、美咲……、キスしていい?」
(うっ……、ダメ、かも……)
廉のエロボイスが脳髄を痺れさせ、身体の奥がジュっと燃え上がる。しかし、このままなし崩しに廉の手管に堕ちることだけは避けたい。
奥手な美咲だってプライドがある。なけなしの勇気を振り絞り、廉の胸へと置いた手をもう一度押すが、意味はなかった。
「廉!! ま、待って……」
「もう、待てない」
胸へと置いた手が大きな手に包まれ、キュっと握られた瞬間、美咲は廉に唇を奪われていた。
否の言葉を言わせないように深くなる口淫に、美咲の頭はとろけていく。
柔らかな唇が重なり、わずかに開いた唇から舌が忍びこむ。『くちゅ、じゅる……』と淫雛な音を響かせ、歯列の裏側や粘膜を刺激され、舌を絡め吸われれば、痺れるような快感が身体を駆け抜けた。
(なにこれ……、気持ちいい……)
一緒に住み始めてから数回交わしたキスとは別次元の気持ち良さに、美咲の力も抜けていく。唾液が交わり、舌を絡めるたびに漏れ聴こえる『ぴちゃぴちゃ』という卑猥な音にも耳を犯され、身体の奥底から快楽を告げる愛液が流れ出した。
「美咲、とっても可愛い。気持ち良かったのかな? 目が潤んで、真っ赤だ。我慢出来ない……、美咲を食べさせて」
私を食べる?
脳裏に廉との初めての情事がフラッシュバックし、身体がこわばった。
美咲の身体は覚えているのだ。途中で突き放され、心が死んだ夜のことを。
「美咲……、なぜ泣きそうな顔をしているの? 俺とするのは嫌?」
廉の言葉に『違う』と首を振れば、目にたまった涙の雫が飛び散った。
「まだ、早いのかな。美咲の心と身体が俺を受け入れるまで待つよ。いつまでだって」
廉の指先が濡れて輝く美咲の唇に触れ、軽いキスが落とされる。そして、悲しそうな笑みを浮かべた廉の顔が遠ざかっていく。離れていく温もりに、美咲の瞳から涙がこぼれ落ちた。
(廉と離れたくない……)
美咲は狂おしいほどに恋焦がれる想いのまま、無我夢中で廉の服をつかみ引き寄せていた。
「ヤダ!! 離さないで。違うの!! 廉としたくないんじゃないの。初めての夜……、廉に突き放されて悲しかったの。あの時のこと、思い出しちゃって」
廉の胸に顔を寄せ、美咲は消え入りそうな声で言葉を紡ぐ。
「あの時みたいに放り出さないで。ちゃんと、最後までして」
「美咲……、悪かった。本当にごめん。あの時は怒りで我を忘れてた。でも、どうしても最後まで奪いたくなかったんだ。傷つけてごめん」
廉の言葉が、美咲の心を熱くさせる。
(私に興味が失せたんじゃなかった。怒りで暴走していても、大切にしてくれていた)
熱い想いで、胸がいっぱいになる。涙があふれて止まらない。
「廉、ありがとう……」
廉の腕に包まれ、心が満たされていく。『愛されていた』その事実が、こんなにも自分を幸せにするなんて知らなかった。
美咲は、もう我慢しなかった。心のままに叫ぶ。
「廉と最後までしたいの。お願い……」
美咲の願いは廉の唇に奪われ、艶かしい音を響かせ消えた。
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