ウラオモテ

カラスヤマ

文字の大きさ
2 / 9

②不穏

しおりを挟む
昼休み。学校の屋上で望の手作り弁当を食べていた。

「この唐揚げ、少し味付け変えたんだよ。…………どう? 美味しい?」

少し心配そうに僕の顔色をうかがう女の子らしい仕草をする望が、なんだか可笑しかった。

「フッ…」

「なんだよっ! いいから、美味いって言え! 言えよ、早く!! さぁっ!」

「いぎ!?」

望に首を絞められ、涙目で美味いを連呼した。
でもお世辞ではなく、弁当は普通に美味かった。

午後からは普通科とは異なり、特別授業が待っている。

かなりの鬱だ。

「無理しないでよ、天馬。ところで、いつもの眼鏡は?」

「家に忘れた。まぁ……適当にやるから大丈夫だよ」

「はぁ? 嘘でしょ。また忘れたの! だってアンタ、それじゃあ」

「いいからっ! 早く行こうぜ」


僕たちは、校舎裏に設置された特別訓練コース(森)に入った。チラッと見えた四階の普通科の皆さんがひどく羨ましかった。

広場に到着した生徒たち。
まず訓練を始める前に、この生徒を【殺す側】と【ターゲット(魔物)側】に分ける。ターゲットは、森の中で息を潜め、殺し屋達から制限時間内、逃げきれれば勝ち。殺し屋は、二人以上のターゲットを始末(訓練なので、殺すフリをするだけ)出来れば勝ちだ。ゲーム形式だが、やることはほぼ実践と変わらない。

僕たちの殺し屋としてのスキルが試される。
ジャンケンで僕と望は殺す側となった。一二三は、ターゲット。ちなみに六条院も殺す側となった。

先に一二三含めたターゲット組は、森の中に消えた。

「お前らみたいな無能に俺は殺せないから~」

一二三は、ふざけた態度をとっていたが、森に入った瞬間、その気配が消えた。
僕よりも、クラスの中でも上位に入る実力者。『三十分以上呼吸を止めることが出来る』隠密行動が得意な一二三を見つけ出し、殺すのはかなり難しいだろう。

十分後。殺し屋側の僕たちも行動を開始した。

「天馬。お前さぁ、今日は一匹くらい始末しろよ。そろそろ結果出さないと落第だからな」

「はい……。分かってます」

担任のすんごい圧を背中で感じながら、僕たちも森の中に入った。確かに、一人くらい捕まえないとマズイことになる。もうすぐ、三者面談だし。両親をすでに亡くしている為、面談に参加した姉さんや兄さんに、後でキツイ説教をされるだろう。

殺し屋として、トップクラスの実力者。魔物討伐ランキングは、一桁の化け物。それが僕の姉と兄。自分と比較されると悲しすぎて涙も出ない。

まぁ、そんな弱音を言ってても仕方ない。
僕にも殺し屋になって【やるべきこと】がある。
汗ばんだ手で、先が曲がる玩具ナイフやペイント弾を放つ拳銃を握りなおした。

………………………。
…………………。
………。

放課後。
死にそうな僕を心配した望が、生徒会の仕事を早めに片付け、一緒に帰ってくれた。

「……そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ。次、頑張ればいいじゃん!」

「次なんてないって……はぁ……」

結果から言うと、一二三は時間内に殺し屋達から逃げ切った。望は、男子生徒を中心に八人も殺した。僕は、今日もゼロ。
焦る気持ちが行動を雑にし、ターゲットに察知され、逃げられる。

いつもの失敗パターンだ。ひど過ぎて反省する気すら起きない。帰って、可愛い女の子が出てくるゲームで癒してもらおう。
数分前からそのことしか考えていない。

「それにしても六条院、すごかったね~。十三人だっけ。最高記録だって、先生褒めてたよね。正直、あと五分時間があったら、一二三も逃げきれなかったと思うよ」

「……お前もあぁいうイケメン君が良いんだな」

「っ! なな、何言ってるの!! 馬鹿にしないでよ。私は彼を正当評価してるだけだし」

「どうだかなぁ」

ガツッ!!

「痛っって!! う、お前、マジか!?」

頭を思い切り、殴られた。信じられない暴力。

「私は、天馬が」

「え? なに」

「…………なんでもない。家着いたから。じゃあ、さよなら…」

気付いたら、望の実家兼弁当屋の前まで来ていた。不機嫌全開の望と分かれ、僕も帰宅した。それから三時間。部屋にこもり、ゲームの女の子に癒された。

同じ体勢だった為、軽く背伸びをした。

「…………」

新品同様の勉強机。その上に置かれた眼鏡ケースが目に入った。あのケースの中には、親父が愛用していたサングラスが入っている。形見として僕に残してくれたもの。
望が言っていた眼鏡とはあのことで。
僕は、あの眼鏡をかけることを躊躇していた。理由は良く分からないが、あのサングラスをかけると『変なスイッチ』が入ってしまう為、自分を上手くコントロールすることが出来ない。
自分が自分でなくなるような恐怖があった。
最近では、親父の怨念がこもっているんじゃないかと本気で思い始めている一品だ。

トュルル~~♪

突然の軽快なゲーム音楽。

「っ!?」

滅多にならないスマホが鳴っていた。それは、望からの電話だった。この時間にアイツから電話がくるなんて初めてじゃないか?

ピッ。

『どうしたぁ?』

『天馬…』

その泣き声を聞き、嫌な緊張が走った。

『……側に誰かいるな。代われ』

しばしの静寂の後、電話に出てきたのは。

『こんな時間にごめんね~、天馬君』

六条院だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

霊力ゼロの陰陽師

テラトンパンチ
ファンタジー
生まれつき霊力を持たない少年、西園寺玄弥(さいおんじげんや)。 妖怪の王を封じた陰陽師の血を引きながら、彼だけが“無能”と呼ばれていた。 霊術学院で嘲笑され、才能の差を突きつけられる日々。 それでも諦めきれなかった彼の前に現れたのは、王と対立する最強クラスの妖怪――九尾・葛葉。 「貴様の力は、枯れているのではない。封じられているだけだ」 仮契約によって解かれた封印。 目覚める霊力。動き出す因縁。 これは、無能と蔑まれた少年が、仲間と共に妖怪の王へ挑む物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

構造理解で始めるゼロからの文明開拓

TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。 ​適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。 だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――! ​――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

処理中です...