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第1章〜神様になれるほど強いけど、ぐーたらな生活をしたい〜
直りましたっ
しおりを挟むライムはピアノの腕に、自分の魔力がじんわりと広がっていくのを感じた。
それを丁寧に表面の消えそうになっている魔法陣に移していく。
目を閉じ、意識を集中させる。
ピアノからこっそり教えてもらった魔法陣の内容。
それを聞いたら、ピアノが4人に自分の魔法アビリティを教えなかった理由がライムにはわかった。
ピアノの慌てようにもおおよそ納得がいく。
これは重要なものだったのだろう。
ライムはピアノから教えてもらった魔法陣をイメージしながら、それを形作っていく。
ーー魔力が満遍なく通るように。
ライムが形作ることによって、絵具を垂らしたように魔法陣は元の紫色を取り戻していく。
ピアノの素肌に描かれている魔法陣。
それは、追跡魔法だったーー。
追跡魔法。
それは、描かれているその人を監視、異常があればすぐに検知し、その人の情報を把握できるようしたものだ。
ピアノに描かれていた追跡魔法、(ブースト系の魔方陣も混ざっていたが)それはライムでも分かるほどかなり高度なものだった。
魔力を通してみてわかる。
表面からではブースト系の魔法陣と間違えてしまうけれど、実際は皮膚の裏側に追跡魔法が隠されていたのだった。
皮膚の表面の裏側というより、腕や太ももの内部に、といった方が正しいのかもしれない。
……訳ありなのかな。
私でもこの魔法陣組むのに少し時間がかかるし、よっぽど大事にされてるのね。
それか、裕福な家庭か。
ピアノの様子から追跡魔法を嫌がっているようには見えないから容認して試験に臨んでいるのかもしれない。
深追いはするつもりないし、ライムにとってはピアノが安全であればそれで安心だ。
でも、きっとこの状況でピアノに何も起きないってことは関与できない事態であるのか、黙認しているかどちらかだろう。
もしかしたら、魔法陣を直したら誰か駆けつけてくるとか?
そんなふうにライムは考えつつ、今度はピアノの太ももに触る。
魔法陣を大切に包み込むように手を添え、魔力を込め始める。
視線を感じて、ぱっと目線を上にやるとピアノとピタッと目があった。
ピアノは顔を真っ赤にしている。
ーー?
嫌だったかな?
それとも魔法陣を直すのって、我慢が必要なのかしら?
「ごめんね。すぐ、終わらせるから」
ピアノにそっと声をかけて、目を閉じて意識を集中した。
すると、先ほどと同じように魔法陣に色が戻ってきた。
ーー成功ね。
初めて修復したけど、なんとかなるものね。
ライムは立ち上がって、ピアノの容態を確認する。
体調もーー大丈夫そうだ。
「ピノ。変わった様子はなーー」
「ライム!!ありがとう!ほんとに!!これがないと本当に大変なところだったわ。お父さんにも怒られると思ったもん」
ピアノは泣きそうな真っ赤な顔をして、ライムのことを抱きしめた。
ーーわぁ//
ピアノのふくよかな胸がライムにあたる。
そして、あったかいような、くすぐったいようなそんな気持ちが湧き上がってきた。
ライムも照れながら、
「どういたしまして。直って良かったわ」
と言った。
魔法陣も上手く起動しているみたいだし、変わったところもなさそうだ。
とりあえず、一安心だ。
===
ライムたちが抱きしめ合っている側で、シオンとジュエルの男2人は驚愕の顔をしていた。
口をあんぐり開けて、信じられないという顔をしている。
「なによー!女の子2人が抱きしめ合ってもいいじゃない」
ピアノのが茶化すようにして、座っているジュエルと先ほどまで壁に寄りかかっていたシオンに言った。
「ち、違う。ライムの魔法に驚いてだな……」
シオンはしどろもどろになりながら、ちらりとライムの方を見る。
ジュエルも語彙力を失っているようで「……すごい。すごいや!!」と呟いている。
「ライムは天使のようだわ!」とピアノも目を輝かせていた。
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