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聖剣の在処
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案内された部屋に入ると、司祭様は身を起こした。
「こんにちは、司祭様。勇者のフォルです」
「おお、言い伝えの勇者か……」
厳かだけど優しそうな雰囲気だ。白い髭を貯えていて、例えるとサンタさんみたい。
でもその目は固く閉じられていた。
「その姿と紋章を拝見できないのが残念だ……だが幸い、私には少しだが魔力がある。目は見えずとも、物の場所はだいたい把握できる。話を聞きに来たのは5人だな」
「大勢で押しかけてしまってすみません……」
「構わんよ。仲間なのだろう。私が知っている、聖剣の話をしよう」
"魔と対をなす光の地、聖なる剣静謐に眠る。選ばれし勇者にその道開かれる"
「以上だ」
「詳しい場所は分からないんですか?」
「うむ、情報はこれだけしかない。だが、魔は魔界のことだろう。魔界は遠い北の果てにあると聞く。ならば光の地は……」
「対をなす、南方向ってことですか」
司祭様は深く頷いた。
(魔界は北で合っている。人間界に住みつき群れをなしている魔物も多いがな。魔物は南に行くほど数が少なくなる……魔界から離れるからだと思っていたが、聖剣の力が存在したからか。腑に落ちた)
アズノストも同じ意見みたいだ。
「ありがとうございます。南に向かってみます」
「手遅れになる前に、聖剣を取りに行かないとね。今から向かおう、フォル」
「俺がフォルについていく。お前たちはこの国を守れ。騎士だろう」
飽きもせず、2人は睨み合う。
それを横目に、天真が進み出た。司祭様は音の方に顔を向ける。
「やはりアレク王子もいらしていましたか」
「あなたなら気づいていると思っていた。司祭殿、国から医者を派遣する。その目、治るといいが……」
「お気遣いに感謝いたします。しかし、この目が光を見ることは……難しいでしょう」
え……なんで……
アズノストを見上げると、眉を寄せて神妙な面持ちで頷いた。
「そこの膨大な魔力をお持ちの方も理解しているでしょう」
「ああ……その目には強力な封印がかけられている。俺からみても複雑すぎる……術者にしか解けない代物だ」
(王の時と同じく、出所不明の瘴気だ。時間をかけてひとつずつ解いていけばなんとかなりそうだが……すぐにまた鍵をかけられるだろう。それなら犯人を探す方がいい)
(そうか……)
「おいぼれの身を構うことはない。災厄が訪れる前に、聖剣を頼む、勇者よ……」
これも勇者の……俺のせいで起きた犠牲かもしれない。
ここは教会……神に祈りを捧げる場所だ。今は祈るしかできない。平和が訪れたら、犯人が分かったら、司祭様の目が治りますように……心の中で静かに願いを呟いた。
司祭様にお礼を告げ寝室を出る前に、俺だけ呼び止められた。手招きをされて体を近づける。
「“そなたの周囲にはただならぬ執念がうずまいている……己の欲火燃え上がらせる者はただ1人……”と、占いが示していた。この結果が出てすぐ、私の目は見えなくなってしまった」
「え……っ」
「元凶を探そうとしたが、この目では何も見えない。それには、そなたに知られたくないことがあるのだろう」
警告音のように大きく、心臓がドクンと鳴った。
「今日訪れた中にいないかと探ってみたが、易々と尻尾は見せないだろう。だが、暗躍する者は必ず近くにいる。仲間を信用することは大事だが、盲目になってはならない。己の目でしっかり見極めるのだ」
王様と司祭様を襲ったのも、俺の住んでた町にスライムを仕向けたのも、1人だけ……全部、俺を狙っているやつの仕業ってことか……!? 俺のすぐ近くにいるのに、なんで俺を直接狙わずにそんな回りくどいことをするんだ……?
犯人の目的が全く分からない。
この世界はいったいどうなってしまうんだろう……
「こんにちは、司祭様。勇者のフォルです」
「おお、言い伝えの勇者か……」
厳かだけど優しそうな雰囲気だ。白い髭を貯えていて、例えるとサンタさんみたい。
でもその目は固く閉じられていた。
「その姿と紋章を拝見できないのが残念だ……だが幸い、私には少しだが魔力がある。目は見えずとも、物の場所はだいたい把握できる。話を聞きに来たのは5人だな」
「大勢で押しかけてしまってすみません……」
「構わんよ。仲間なのだろう。私が知っている、聖剣の話をしよう」
"魔と対をなす光の地、聖なる剣静謐に眠る。選ばれし勇者にその道開かれる"
「以上だ」
「詳しい場所は分からないんですか?」
「うむ、情報はこれだけしかない。だが、魔は魔界のことだろう。魔界は遠い北の果てにあると聞く。ならば光の地は……」
「対をなす、南方向ってことですか」
司祭様は深く頷いた。
(魔界は北で合っている。人間界に住みつき群れをなしている魔物も多いがな。魔物は南に行くほど数が少なくなる……魔界から離れるからだと思っていたが、聖剣の力が存在したからか。腑に落ちた)
アズノストも同じ意見みたいだ。
「ありがとうございます。南に向かってみます」
「手遅れになる前に、聖剣を取りに行かないとね。今から向かおう、フォル」
「俺がフォルについていく。お前たちはこの国を守れ。騎士だろう」
飽きもせず、2人は睨み合う。
それを横目に、天真が進み出た。司祭様は音の方に顔を向ける。
「やはりアレク王子もいらしていましたか」
「あなたなら気づいていると思っていた。司祭殿、国から医者を派遣する。その目、治るといいが……」
「お気遣いに感謝いたします。しかし、この目が光を見ることは……難しいでしょう」
え……なんで……
アズノストを見上げると、眉を寄せて神妙な面持ちで頷いた。
「そこの膨大な魔力をお持ちの方も理解しているでしょう」
「ああ……その目には強力な封印がかけられている。俺からみても複雑すぎる……術者にしか解けない代物だ」
(王の時と同じく、出所不明の瘴気だ。時間をかけてひとつずつ解いていけばなんとかなりそうだが……すぐにまた鍵をかけられるだろう。それなら犯人を探す方がいい)
(そうか……)
「おいぼれの身を構うことはない。災厄が訪れる前に、聖剣を頼む、勇者よ……」
これも勇者の……俺のせいで起きた犠牲かもしれない。
ここは教会……神に祈りを捧げる場所だ。今は祈るしかできない。平和が訪れたら、犯人が分かったら、司祭様の目が治りますように……心の中で静かに願いを呟いた。
司祭様にお礼を告げ寝室を出る前に、俺だけ呼び止められた。手招きをされて体を近づける。
「“そなたの周囲にはただならぬ執念がうずまいている……己の欲火燃え上がらせる者はただ1人……”と、占いが示していた。この結果が出てすぐ、私の目は見えなくなってしまった」
「え……っ」
「元凶を探そうとしたが、この目では何も見えない。それには、そなたに知られたくないことがあるのだろう」
警告音のように大きく、心臓がドクンと鳴った。
「今日訪れた中にいないかと探ってみたが、易々と尻尾は見せないだろう。だが、暗躍する者は必ず近くにいる。仲間を信用することは大事だが、盲目になってはならない。己の目でしっかり見極めるのだ」
王様と司祭様を襲ったのも、俺の住んでた町にスライムを仕向けたのも、1人だけ……全部、俺を狙っているやつの仕業ってことか……!? 俺のすぐ近くにいるのに、なんで俺を直接狙わずにそんな回りくどいことをするんだ……?
犯人の目的が全く分からない。
この世界はいったいどうなってしまうんだろう……
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