転生勇者と転生魔王は平和を欲す

すももゆず

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紋章の示す先

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 全身を包まれている感覚で目を覚ます。

 ああ、陽凪か……こいつ、また俺にくっついて寝て……って、ここベッドじゃない!
 身を捩って陽凪の拘束から抜け出し起き上がると、苔と蔦以外は何もない石造りの部屋だった。

「え、何だここ!?」
「叶空……もう朝……?」
「ちょ、陽凪! 朝じゃない! なんか変なとこにいる!」

 悠長に寝てる場合か。肩をバンバン叩いて夢見心地の陽凪を起こす。辺りを見回した陽凪は目を丸くした。

「ほんとだ。俺たち、確か渦に吸い込まれたよね?」
「だよな、ぐるぐる~って落っこちて……つか、他のみんながいない!」
「はぐれちゃったみたいだね……ん?」

 陽凪が視線を落とした先、俺の手の甲に宿る勇者の紋章が淡くゆっくり点滅していた。

「光ってる……スライムを追っ払った時以来だ」
「へえ、こんな光り方するんだ」
「いや、あの時はもっとブワーッて光に包まれて、眩しかった」
「じゃあ点滅はなにを示してるんだろう。お知らせとか? 充電切れの」
「家電か! そんな機能備わってないだろ。でもなんとなく俺に伝えたいことがありそうな感じするんだよな……」
「うーん……勇者に関係がありそうなこと……あ、叶空、あの扉に近づいてみよう」

 その通りにすると、光が濃くなった。

「この先になにかあるのか?」
「ダウジングしてくれてるのかな?」
「便利な機能ついてるんかい……」
「扉はひとつしかないしとりあえず進んで、みんなと紋章が示すものを探そうか」

 今はそうするしかなさそうだし、陽凪に賛成して扉の先へ進むことにした。

(アズノスト、そっちは大丈夫? 今どこにいる?)

 テレパシーで呼びかけてみたけど、返答がない。そんなこと今までなかったのに……! アズノスト、楓月、天真……みんなは無事なのか。俺たちと同じ場所にいるんだろうか……

 不安の渦がぐるぐる回り始めた時、頭の奥……かすかに声が聞こえた。扉の先に続く回廊を渡りながら耳を澄ませる。

 "3人 無事 聖剣 ダンジョン 魔法 不調 先で 合流 可能"

 途切れ途切れになりながらもなんとか聞き取れた。つまり訳すと、みんな無事で、ここは聖剣のダンジョンで、アズノストの魔法が不調だからテレパシーもできない、先に進んだら合流できると……とにかくみんな無事でよかった!

 じゃあこの紋章は聖剣に反応してるってことか。なんでいきなり聖剣のダンジョンに飛ばされ……

「叶空、危ない!」

 ドン、と突き飛ばされた。顔を上げた先、伸びてきた蔦に絡み取られた陽凪が宙吊りになっていた。しまった、いろいろ考えてて気づかなかった!

「陽凪!」
「はは、叶空に見惚れて反応遅れちゃった」
「んなこと言ってる場合か! なんか切れるもの……って武器持ってないんだった! おい紋章、光ってないでなんとかしてくれ!」

 手をかかげても、紋章は点滅するだけ。その間にも蔦はどんどん増えて陽凪を縛る。
 ピンチなのに当の本人は俺を見て緊張感なくクスクス笑っている。俺の視線に気づいた陽凪は「慌ててる叶空も可愛いね」と調子を変えずに口説いてくる。

「お前なあ……」
「心配ありがとう。でも大丈夫、このくらい余裕だよ」

 陽凪が剣を振りかざすと、複雑に絡んでいた蔦があっけなくパラパラと崩れ去った。陽凪はひらりと華麗に地面に降りる。目にも止まらぬ剣技だった。

「瞬殺……」
「ほら、俺けっこう強いって言ったでしょ?」
「いやめっちゃ強いじゃん!」
「楓月にたっぷり鍛えられたからね」

 陽凪が戦うところを初めて見たから、想像してたよりも強くて驚いた。騎士団の実力が高いのが分かる。

「だから俺1人で叶空を守れる」
「そうだな。陽凪がいれば俺も安心できる」
「ふふ、頑張った甲斐があるなあ」

 ふんわり、幸せそうな笑みが溢れた。陽凪はだいたいのことは人並み以上にできるのに、ちゃんと努力ができるやつだ。ここまで強くなるのに、本当に頑張ったんだろうな。

 って感傷に浸ってたら、いきなり体が浮いた。
 また、蔦だ!

「え、ちょっ!?」

 背後から忍び寄ってきた蔦が全身に絡みつく。抜け出そうともがけばもがくほど変に巻き付いてしまう。

「うわーっ、きもちわるい! 服の中入ってきた! 陽凪、助けて!」
「……」
「陽凪?」

 陽凪は俺を見つめていた。ただ、じっと。
 そして真剣に口に手を当てて「良い」とだけ呟いた。この野郎……

「助けろ」
「ごめんごめん。つい見入っちゃった」

 シュパパパ、と食材を切るみたいに簡単に蔦が切られてほどけた。
 宙に放り出されて落下する体は軽々と陽凪に受け止められる。姫抱っこで。

「おかえり、俺のお姫様」
「姫じゃねぇ! つか見てないで早く助けろよ!」
「新しい扉を見つけちゃったからね」
「え、何の話……!?」

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