1軍陽キャ幼なじみの猛攻♡

すももゆず

文字の大きさ
7 / 50
猛攻編

1軍幼なじみと恋をする③

しおりを挟む
 バタン、と部屋の扉が閉まる。靴を履いたまま玄関で、和真の強張る体を強く抱きしめた。

「和真……」
「おい、璃央……? どうしたんだよ、何かおかしいぞ。てか、ついてきてたってどういう……」
「我慢できなくて、ずっと見てた」

 和真の「え!?」という素っ頓狂な声が耳もとで響く。

「入れなかったところもあったけど」
「あ、ああ……」

 感情が渋滞して訳がわからなくて、想いを発散させるように和真を力いっぱい抱きしめた。もっと、強く。

「う……和真、好き……ムカつく……好き……オレのなのに……」
「ちょ、痛いって! なに!? とりあえず落ち着けよ!」

 和真に押され、靴を脱いで部屋に入る。オレだって落ち着けるものなら落ち着きたい。深くため息をつきながら、ベッドに腰を下ろした。

 見上げると、そばに立った和真が心配そうに眉を下げている。隣に来いと手まねきすると、居心地悪そうに座ってくれた。

「なあ、なんでそんな顔してんだよ。怒ってんのか泣きそうなのか、よくわかんねぇよ」
「オレだってわかんねぇ」
「どういうことだよ……えーと、俺のことで怒ってる……?」
「そうだけどそうじゃない」

 顔を伏せたまま呟くと、和真の詰まるような息が聞こえた。

「……ごめん、怒らせて」
「なんで謝んだよ。そりゃ鈍感なお前にもムカつくよ、けどなあ、オレはお前のそういうところも好きなんだよ。だから謝んなくていい」

 くそ。和真に謝らせて、心配させて、カッコ悪すぎだろ……ムカつく……

「俺に話してどうにかなるなら、聞くけど……」

 優しい声に、顔を上げる。
 オレの言葉を待ってくれている。話がまとまらなくても、和真は昔からいつもオレの話を聞いてくれる。

 オレは、和真のそんなところが……

「……っ、話す、けど……オレのこと、嫌うなよ」
「うん。それは大丈夫」

 和真は微笑んで頷く。和真が大丈夫だって言うなら……受け入れてもらえる。

「……今日、尾行してたのはごめん。尾行しながら、楽しそうにしてるお前を見てた。でも隣にいるのはオレじゃなくてムカついた。……距離が近い友達にもムカついて、そんな事思う器の小せぇ自分にもムカつくし……イライラしてんのに悲しいし虚しいし悔しいし、もうわかんねぇ……和真が好きで、どうしようもないんだよ……」

 言いたいことをぶつけた。黙って聞いてくれていた和真の様子を、恐る恐る確認する。和真は、照れてるような気恥ずかしいような、何とも微妙な表情だった。

「り、璃央がそんなに嫉妬深いとは……」

 返ってきた的外れな言葉に、ムッとする。

「そうだよ悪いかよ。余裕なんてねぇよ、この野郎、鈍感」
「なんでそこで口悪くなるんだか」

 和真は笑う。こんな話をしたのに、引くどころか態度が同じだ。こんなオレでもいいのか。話したからか、ホッとしたからなのかわからないけど、胸の中のモヤモヤがなんだか消えていく。

 すると突然、和真は「あっ!!」と声を上げて弾かれたように立ち上がり、リュックから緩衝材に包まれた箱を取り出した。あれは和真が誰かに買ってた酒だ。3種類の小さな日本酒瓶のセット。

「こ、これ買ったのも見てたのか!?」
「そこがオレのイラつきのピークだ。いったいどこの馬の骨に買ったんだよ。ムカつく」
「ええと……」

 和真は気まずそうに目を逸らした。そんな言いにくい相手なのかよ。

「……り、璃央に」
「ん?」
「2日も璃央の家で世話になるのに、何も持ってこなかったから。酒なら飲むかなと……」

 もそもそと言い訳しながら渡された箱を持って、オレは固まった。

「これ、オレに……?」
「うん。俺、酒に疎いから前に飲み行った時、お前が何飲んでたか覚えてなくて……飲めないやつなら、誰かにあげて」
「いや飲む。何でも飲む」
「ならよかった」

 相手、オレだったんだ。

「オレ、自分に嫉妬してたのか……」
「俺にそんな相手いないの知ってるだろ」
「ふっ……はははっ、そりゃそーか」
「笑うなよ」

 ほんとに自分がバカみたいで笑えてくる。完全に気が抜けてしまった。オレのために、あんな真剣に悩んで買ってくれたんだ。中身なんて何でも構わない。和真のその気持ちが、欲しかった。

 酒をそっとテーブルに置いて、和真に抱きついた。

「すげえ嬉しい。ありがと……」
「そんな大げさにしなくてもいいって。喜んでもらえてよかったけど」

 弱いところを見せたからか、慰めるように背中をポンポンと叩かれた。

「その……えっと、俺も、けっこう璃央のこと考えてるよ」

 その声に顔を上げる。和真の頰は赤かった。
 これは自惚れていいやつだ、と確信した。こいつは鈍感だ。ド直球ストレートを投げるしかない。和真の肩を掴む。

「和真、お前もうオレのこと好きだろ」
「す!?」
「好き」
「うぅ~~~~~~ん……?? そりゃ嫌いではないけど……」
「まだ迷うのかよ……ほらお前、ゲームとか漫画とか、好きなキャラいっぱいいるんだろ」
「うん」

 聞いたもののムカつく。お前の好きがどんだけのキャラに向いてんだ。

「くそ……っ、そんでそいつらのこと、どんくらい考えてんだよ」
「四六時中」

 ムカつく。オレにだけ寄越せ。

「それだけ考えるんならさぞかし好きなんでしょーね」
「好きに決まってんだろ。生きがいなんだから」
「じゃあ、オレのことは? どんだけの時間考えてた?」
「……」

 和真は黙って考え込む。腕を組んだり頭を捻ったりするうちに、だんだんと顔が赤くなっていく。何かに気づいた和真は一瞬顔を上げ、目が合う。でもすぐに逸らされ、代わりにゆっくりと口を開いた。

「……えと、あの……けっこうどころじゃなく、いっぱい考えてた……わりと四六時中……」

 心臓がバクバクと鳴った。
 余裕なんか全くないけど、余裕があるように振る舞ってみせた。

「はは、それはもう答えだろ。言ってみ?」
「……っ、き……」
「ほら、でかい声で」

 和真は深呼吸をして、真っ赤な顔でオレに向き合った。

「璃央が好きだ!!」
「……うん、オレも」

 ベッドに押し倒し、キスをする。舌を絡ませると、拙いながらも応えてくれた。そうしてじわじわと実感する。
 両思いだ。オレだけじゃない、和真も、オレのことが好きなんだ。

 無理やり奪ったときよりもずっと、このキスは甘かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

処理中です...