1軍陽キャ幼なじみの猛攻♡

すももゆず

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恋人編ー3年生前期

サプライズなバースデー②

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 なんで今、ここに、目の前に和真が? 来るの明日って言ってたよな? 今日って9日だっけ、日付間違えた? いろんな考えが一瞬のうちに頭を駆け巡り、夢かもしれない、の結論に至り頰を引っ張る。普通に痛い。

「璃央、これ夢じゃない」

 頰を抑えるオレを見て、和真は苦笑いで首を振った。ということは……

「え……和真ぁ!?!?」
「ちょ、近所迷惑だから中入るぞ!」

 周りを確認して焦った和真に押されて部屋に戻った。鍵をかけて、ふう、とひと息ついた和真の両肩を掴む。ちゃんと感触がある。

「ほ、本物!?」
「本物だよ」
「沙羽が化けたとかじゃねーよな!?」

 顔を覗かせた大晴が「沙羽ちゃんを妖怪みたいに言うな」とムッとしている。和真が来たことに驚いてない。まるで来ることが分かっていたみたいに……

「木山くーん、暑い中お疲れ~!」
「ピザ取り行ってくれてありがとな」

 颯太がドタドタやってきてピザの箱を受け取ってテーブルに持って行く。大晴は和真の分のコップや皿を用意している。

「お、お前ら……グルだな!? 和真が来ること知ってて黙ってたな!?」
「黙ってたというより、木山に相談されたんだよ」

 和真に? オレは弾かれたように和真に向き合い、距離を詰めた。

「どういうことだ?」
「えっと、璃央になにかサプライズしたいと思って水戸と颯太くんに相談したんだ。それでこういう感じに……」
「いつの間にそんな相談を」

 大晴が変な気を起こさないよう、和真とのメッセージのやり取りは見せてもらっている。やましいことは別にないからいいよ~って大晴はスマホを渡してくれるんだけど……そんなやり取り見てないぞ!? 大晴の方を睨むと、オレが言いたいことを察したみたいだ。

「バレないように、3人でグループ作ってたんだ」
「グループ名も璃央が興味示さないよう『バレー部 コンパ』にしたり、ちょいちょいグループ名変えたり、いろいろ偽装工作したんだよな!」

 と、颯太が付け足す。再び和真の方に首を戻す。

「じゃあ、明日がテストって言ってたのは」
「ごめん、それは璃央を驚かせるための嘘。ほんとは今日の昼で終わったよ」
「んな……!?」

 和真に誕生日当日行けなくなった!って言われてからの日々が頭に浮かんでは消えていく。ここ半ヶ月のオレの落ち込みはなんだったんだ……!
 ふらりと力が抜けて膝をついた。心配してしゃがんでくれた和真の胸ぐらを掴んだ。

「オレの……」
「璃央?」
「オレの気持ちを弄びやがって~~っ!! このやろ~~っ!!」
「ごめんって! 璃央がそんな落ち込むとは思ってなくて!」
「落ち込む……」

 ん? 和真に落ち込んだ姿は見せないようにして、かっこつけてたつもりだったんだけど……

「おい、な、なんでそれ知って……」
「2人に聞いて……嘘ついて落ち込ませて、璃央に悪いことしたなって思ったけど、2人に協力してもらってる手前、もう引き返せなくて」

 バッと後ろを振り返ると、大晴と颯太はニヤついていた。

「わはは。テンション下がってうだうだしてる璃央くんの様子は全て筒抜けでーす」
「俺は楽しかったよ、サプライズ計画すんの」

 オレの失態を和真に漏らしていたこいつらへの怒りと一緒に恥ずかしさが込み上げる。いっきに顔が熱くなったのを見られたくなくて和真に飛びついて顔を隠した。和真はオレに体重をかけられてバランスを崩して尻もちをついた。

「ごめんな、璃央。サプライズとか慣れないことせずに普通に来ればよかったな……」

 和真は優しく背中を撫でてくれる。
 かっこ悪いな、オレ。和真に責任感じさせないように繕ってたのに……結局今、謝らせてる。和真を責めるようなことが言いたかったんじゃない。

 オレのことを考えて、計画立てて、会いに来てくれた。それだけで十分じゃねぇか。自分が落ち込んでたことなんてどうでもいい。今、目の前に和真がいるんだからな!

「嘘つかれたのとか全然気にしてない……! びっくりして動揺しただけだから、謝んな! お前がオレのこと考えてしてくれたことが嫌なわけないだろ! 今日、お前と会えてめちゃくちゃ嬉しい!」
「それなら……よかった」
「来てくれてありがとう、和真……」

 微笑む和真との間に広がる甘い空気。このままキスして、それから誕生日セッ……

「ちょ、ふたりがいるから!」

 キスは和真の手によって防がれた。そういや2人きりじゃなかったんだった……

「俺らのこと忘れんなよ」
「丸く収まったことだし、みんなでピザ食べよう。酒もあるし」
「チッ……そうだな。とりあえず食うか。いろいろスッキリしたし、腹減ったわ」

 和真も一緒になって、テーブルを囲む。ピザは一人暮らし用の小さいテーブルには置けず、床に並べられた。そっか、肉とピザがこんなにあったのも、ケーキがホールケーキだったのも……和真を含めた量だったってことか……

「すっかり機嫌直ったな」

 と、大晴が揶揄ってくる。

「まあな」
「璃央のことだから、木山が来たら『お前らは帰れ!』とか言うと思ったけど」
「こんな大量の食いもん、オレと和真だけじゃ食いきれねぇだろ」
「ツンデレ猫ちゃんだね」

 横にいる和真は大きく頷いている。オレはピザを取ろうとしている大晴と颯太に向き合った。

「……すまん、オレ、最近ずっと機嫌損ねてて。めんどくさかったろ」
「そりゃめんどかったけど、今に始まったことじゃないしな。それより、ここで言うべきセリフはすまんじゃねーだろ?」
「もっと適切な言葉があるよな?」

 2人はオレの言葉を待ちながらニヤニヤと笑っている。和真まで笑いを堪えている。オレが赤くなって言葉を詰まらせてるのがおもしろいんだろう。

「……あ、ありがとう……大晴、颯太!」







 たくさん食べて、飲んで、喋って、スポーツ中継見たりして……終電が近くなった頃、大晴と颯太は帰っていった。気兼ねなく盛り上がれる友達と、そこに和真もいて……今までの人生でいちばん良い誕生日になった。家族と過ごすのが嫌ってわけじゃない。それはそれ、これはこれ。

 今はすっかり静かになった部屋を、和真と一緒に片付けているところだ。

「まだ2人と話すの緊張するけど、楽しかったなぁ。腹もいっぱいだし……」
「そりゃホールケーキ半分食ったらな。よくあんな食えるな」
「だってみんな俺に食べろって譲ってくれたし、都会のケーキ美味かったから」
「都会とか田舎とか関係なくね?」
「どこのケーキも美味いけど、気分的なもんだよ」

 何気ない話をしながら、洗い物もしてゴミも袋にまとめ、ひと通り片付け終わった。
 チラッと時計を確認した和真は持ってきたスーツケースを漁りはじめた。まだ日付は変わっていない。取り出したのは、雑貨屋の包装紙に包まれた箱。

「これ、誕生日プレゼント」
「えっ……お前がプレゼントなんじゃねーの?」
「物も用意した!」

 言葉の意味を理解した途端にぶわっと頬を染めながら、その箱を渡された。見た目よりも重量がある。食べ物とサプライズで終わりかと思ってたのに、物まであるなんて。早く開けたくて焦って、きちんとしたラッピングはビリビリに破けてしまった。

 開けた箱の中には手挽きのコーヒーミルが入っていた。ウッド素材でレトロ感があるけど、シュッと締まっていてかっこいいデザインだ。

「ほら、璃央ってコーヒー好きだし、家で本格的なの淹れれたらいいんじゃないかと……ネットや店でいろいろ見て、かっこいいと思ったやつにしたんだけど、好みじゃなかったら……」

 和真は照れて目を逸らしながら、言い訳のように早口で買った経緯を説明している。

 オレは、和真がオレのことを考えながら選んで買ってくれたのが嬉しくて嬉しくて、話が終わる前に和真に飛びついていた。ほんとにこいつはオレを喜ばせるのが上手いなって、つくづく思う。

「ありがと。すげー嬉しい、めっちゃ嬉しい」
「よかった……」

 感極まりすぎて嬉しいしか出てこないけど、和真は安心したのかホッと息をついて、抱きしめ返してくれた。ぐりぐりと和真の首もとに頭を埋めてから顔を上げる。

「よし、さっそく明日の朝使うぞ!」

 って言ったものの……

「……そういや、豆がないな」
「ま、豆……!」

 やってしまった!と言わんばかりに、分かりやすく頭を抱えて眉を下げている。

「完全に豆の存在忘れてた……一緒に買っておけばよかった……!」
「ふっ……あはははっ!」
「笑うなよ……!」
「大事なとこ抜けてておもしれー」

 恥ずかしそうに口を窄めながら少し拗ねてて、かわいい。

「明日買いに行こーぜ。オレの好きなカフェ、豆売ってるから」
「じゃあケーキも買おう!」
「その店、テイクアウトあるからちょうど良いな。つか2日連続ケーキか。よく飽きねーな」
「はは」

 すぐに笑顔になった。恋人になったからこそ、こうやって近くで話せていろんな表情が見れるわけで……誕生日ってのもあって、和真のこと諦めなくてよかったなって、今までを振り返ってじんわりと嬉しさが込み上げてくる。

 日付はもうあと数分で変わる。でも、まだ貰ってないものがある。

 和真を床に押し倒し、覆い被さってキスをした。控えめだけど、オレを迎え入れるよう唇が開かれて、心臓がギュッと掴まれたみたいに強く鼓動した。始めの方の和真のキスはぎこちなさすぎでかわいくて笑えた。けど触れ合ううちに舌を絡ませるのも、鼻で息をすることにも、けっこう慣れてきたのが分かる。これで遠慮なく長々とキスができる。

 それでも長すぎたのか、混ざり合った唾液が糸を引いて離れる頃には、和真の息は上がっていた。慣れるのもオレが育てた感があっていいけど、いっぱいいっぱいなのも唆る。

「もう1個プレゼント、くれるよな?」
「う、ん……」

 真っ赤になった和真は喉を鳴らしながら、こくんと頷いた。

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