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終章 悪役令嬢は野菜令嬢に
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「いいお天気ですね」
「ああ。晴れたな」
「風も気持ちいいですね」
「そうだな。いい風だ」
「作物も順調に育っているみたいですね。こっちのナスなんか、実が詰まってて美味しそう」
「あっちの豆も、大きく育ったぞ」
畑の一角から、ぼそぼそとそんな会話が聞こえてくる。本人たちは当たり障りない会話だと思っているようだが、聞き耳を立てて聞いている周囲の人間からしたら背筋がむず痒くて仕方ない会話だった。
そうして痒さに我慢できなくなったジャンがついに立ち上がった。
「あのぅ……さっきから何の会話してるんですか、そこのお二人は? さっさと浮かれたやりとりを始めてくださいよ。こっちは聞き耳立ててずーっと待ってるんですよ?」
なんだか人聞きの悪いようなつっこみに、レティシアとアベルが一斉に振り向いた。
「な、何言ってるのよジャン!」
「聞き耳を立てられているから下手な会話ができないんだろうが」
「へぇ……『下手な会話』って何でしょうねぇ? 俺たちのことは気にせずにどうぞお二人の世界で盛り上がって下さいよ」
揚げ足をさらりと取り上げるように、ニコニコしてそう返されてしまった。アベルは、盛大に眉をしかめて俯いてしまった。
むず痒い会話すら途切れてしまったところに、大きな鍋を持った人物が二人、やってきた。
「まあまあみなさん、それくらいにしましょうよ。アベル様が拗ねちゃいますよ」
「アラン……誰が拗ねるだと?」
アランがいたずらっぽい笑みを返すと、その隣にいたもう一人の人物がくすくす笑った。
「お嬢様も、実はすごーく恥ずかしがり屋さんなので、お手柔らかにお願いしますね、皆さん」
「ネリー! 何を言うのよ!」
レティシアが顔を真っ赤にして全員に叫び返していると、からかう空気を沈めるように、パンパンと手を打つ音がした。
「ほら皆さん、そろそろ昼食ですから、お二人で遊ぶのはそこまでにしましょう」
レオナールのそんなかけ声に、畑仕事に打ち込んでいた……と見せかけて聞き耳を立てていた全員がどっと笑い出した。
「な、何よ! 私たちで遊ぶって!」
「すまん。こいつらは最近、娯楽に飢えていたようでな……お前が久々に来たから話を聞きたくてうずうずしてるんだ」
「は、話……ですか? いったい何の?」
レティシアは首を傾げたが、レオナールを含めたその場の全員が一斉に詰め寄ってきた。
「当然ですよ、レティシア様。皆、あなたが公爵令嬢だったって聞いてそれは驚いていたんですから」
「そうですぜ。おまけに国中の『恵み』の枯渇を解決した英雄! 加えて大司教による王家簒奪の目論見も阻止! 聞きたいことは山ほどあるんですよ」
「だけどあの件の後処理で、レティシア様は王都から離れられなくて、数ヶ月会えませんでしたからね。今日、こうして侍女のネリーさんも一緒に来て下さって、皆嬉しいんですよ」
順々に話すレオナール、ジャン、アランの言葉に、領民たちは揃ってうんうん頷いていた。
そこへ、ふわりと良い匂いが漂ってきた。アランたちが持ってきた鍋からは香ばしく、ほんのり甘い匂いが立って、誘うように鼻腔をくすぐる。
「さあさあ、積もる話は食事をしながらでも……ね?」
アランが、スープをそっと皿によそうと、いよいよ我慢がきかなくなってくる。誰かのお腹が切なげに鳴く頃がしたのを皮切りに、皆、鍋の方へと集まったのだった。
「ああ。晴れたな」
「風も気持ちいいですね」
「そうだな。いい風だ」
「作物も順調に育っているみたいですね。こっちのナスなんか、実が詰まってて美味しそう」
「あっちの豆も、大きく育ったぞ」
畑の一角から、ぼそぼそとそんな会話が聞こえてくる。本人たちは当たり障りない会話だと思っているようだが、聞き耳を立てて聞いている周囲の人間からしたら背筋がむず痒くて仕方ない会話だった。
そうして痒さに我慢できなくなったジャンがついに立ち上がった。
「あのぅ……さっきから何の会話してるんですか、そこのお二人は? さっさと浮かれたやりとりを始めてくださいよ。こっちは聞き耳立ててずーっと待ってるんですよ?」
なんだか人聞きの悪いようなつっこみに、レティシアとアベルが一斉に振り向いた。
「な、何言ってるのよジャン!」
「聞き耳を立てられているから下手な会話ができないんだろうが」
「へぇ……『下手な会話』って何でしょうねぇ? 俺たちのことは気にせずにどうぞお二人の世界で盛り上がって下さいよ」
揚げ足をさらりと取り上げるように、ニコニコしてそう返されてしまった。アベルは、盛大に眉をしかめて俯いてしまった。
むず痒い会話すら途切れてしまったところに、大きな鍋を持った人物が二人、やってきた。
「まあまあみなさん、それくらいにしましょうよ。アベル様が拗ねちゃいますよ」
「アラン……誰が拗ねるだと?」
アランがいたずらっぽい笑みを返すと、その隣にいたもう一人の人物がくすくす笑った。
「お嬢様も、実はすごーく恥ずかしがり屋さんなので、お手柔らかにお願いしますね、皆さん」
「ネリー! 何を言うのよ!」
レティシアが顔を真っ赤にして全員に叫び返していると、からかう空気を沈めるように、パンパンと手を打つ音がした。
「ほら皆さん、そろそろ昼食ですから、お二人で遊ぶのはそこまでにしましょう」
レオナールのそんなかけ声に、畑仕事に打ち込んでいた……と見せかけて聞き耳を立てていた全員がどっと笑い出した。
「な、何よ! 私たちで遊ぶって!」
「すまん。こいつらは最近、娯楽に飢えていたようでな……お前が久々に来たから話を聞きたくてうずうずしてるんだ」
「は、話……ですか? いったい何の?」
レティシアは首を傾げたが、レオナールを含めたその場の全員が一斉に詰め寄ってきた。
「当然ですよ、レティシア様。皆、あなたが公爵令嬢だったって聞いてそれは驚いていたんですから」
「そうですぜ。おまけに国中の『恵み』の枯渇を解決した英雄! 加えて大司教による王家簒奪の目論見も阻止! 聞きたいことは山ほどあるんですよ」
「だけどあの件の後処理で、レティシア様は王都から離れられなくて、数ヶ月会えませんでしたからね。今日、こうして侍女のネリーさんも一緒に来て下さって、皆嬉しいんですよ」
順々に話すレオナール、ジャン、アランの言葉に、領民たちは揃ってうんうん頷いていた。
そこへ、ふわりと良い匂いが漂ってきた。アランたちが持ってきた鍋からは香ばしく、ほんのり甘い匂いが立って、誘うように鼻腔をくすぐる。
「さあさあ、積もる話は食事をしながらでも……ね?」
アランが、スープをそっと皿によそうと、いよいよ我慢がきかなくなってくる。誰かのお腹が切なげに鳴く頃がしたのを皮切りに、皆、鍋の方へと集まったのだった。
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