こんにちは、みなさま

yoh_okazaki

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詩とか、愛とか

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「タワーの先には」

タワーの先には赤い灯り
宇宙まで行くつもりだと
区役所裏の空き地で犬と
同じ笑顔の人だった

いつか東京に行ったらさ
スカイツリーなんかじゃなく
東京タワーにのぼろう
二人で手をつないだまま
東京を適度に見下ろそう

そう言ってた彼は就職で
東京に行ったの、ひとり
連絡先はわからない
携帯はたぶん買い替えた
つながらん

きみとよく行ったお好み焼き屋
赤い灯りはまたともりました
今は通常営業で
常連もぼちぼち集まって
きみのことを尋ねられる
ときどきね

わからん、言ってもやし食べた
熱くて舌をやけどする
青のりついた歯で笑う
歯で泣く

東京にお好み焼き屋は
ありますか?
きみの好きなお好み焼き
もうさ、たまには寿司とか
ラーメンとか食いたくても
必ずお好み焼きになる始末
それも良かった
きみとなら

夜のニュース番組の
東京の夜景に赤く灯る
東京タワーの先の光
きみはのぼったのだろうか
あの東京タワーのてっぺんで
犬みたいな笑顔で手を振って

宇宙のニュースが流れれば
きみがそこに現れそうで
まじまじと見つめていたよ
でもきみは(噂では
宇宙飛行士でもなく
ロケットの設計でもなく
クルマを組み立ててるって
聞いた

クルマだって飛ぶよね
きみの好きなテグジュペリ
みたいにきっと空高く
飛んでしまったんだと思うよ

宇宙の地球のお好み焼き屋
暖簾をくぐって出たら
驚くほど大きな月
きみが笑ってる気がした
東京タワー、
いっしょにのぼりたかったな


「コンビニマシン」

呼吸と鼓動が並んで光る
週末深夜のショウ・ケース
肉まん・あんまん・ピザまん
とかとか
石焼き芋はじめました
の黄いろの暖簾

ぱりぱり凍ったソフトクリーム
チョコレートのコーティング
これを
暖房の効いた部屋で
食うのが至福だったりするよね

我ら働くコンビニマシン
商品のバーコードを
スキャンしちゃう
金額はそれな
払ってね
ああ、エコバッグに詰めたる
詰めたるわ
簡単なことでございます

お客さんが払ってる間に
テキパキと
漫画本缶チューハイイカくん
ろくな奴じゃないね
こういうタイプはダメ
でも客だからニコニコしたった
ニコニコニコ
多めにしたった

タバコとクルマのにおいのする
エコバッグというかズタ袋に
ひよひよ入れてもたせる
いい週末を
なんて祈らないけど
時給内のサービスです

後ろの孤独な女のひとは
スパサラに
トマトジュース
幸薄い感じね
と思ったら
石焼き芋をコール
ふーんこんなタイプが
石焼き芋か
包んであげる
優しくね
色の控えめなリップクリーム
きっと彼氏はいない
こんな週末に石焼き芋
買ってるようじゃ男はいない
紙に包んだ石焼き芋
そっと渡す
お会計はこちらへ
しばし放心する
女のひと見送る

さてさて
集団高校生か?
苦手なタイプ
ワリカンしたり
取りやめ交換
めんどくさいんですが
いちぶ怖かったりもする
女レジはなめられる
タバコくれとかマジかよ
制服じゃないし
めんどいので売る
こっちも危ないのよ
もうっ

なになに老人がひとり
店の中うろうろしてる
認知症なのかな
ギリギリだな
この時間にひとりは
怪しいし
万引きの可能性
も高いのだった
そいつもめんどい
ああだめだ
取った缶を戻そうとする
それできないでしょ
力いるからさ
もみもみやってるから
仕方なく
いいですよ、
と微笑んで受け取る
老人はちょい狼狽した
羊羹を掴んで、
百八円わたしの手に
握らす
あのバーコード、
という間に出ていった
つまんないな

交代の奴
2分前にしか来ないの
まあそれは良い
十五分残業してやるのさ
はした金だけどな
消費期限切れ切れの
高級おむすびを一個
ただでもらう

タイムカードをがちゃんと
してわたしの
週末が始まる
とはいえ
待たせた自転車に乗り
安アパートまで
月が折れそうに細いな
帰って何の映画観て
泣こうかな
それともさっさと寝るか
やけに生ぬるい
冬のバイト上がりの刻

「冬の空」

風が吹くと唄になる
12月が寒くて困る
適当な言葉ばかり並べた
真に迫る遺書をしたためた

ご飯を食べながら泣いたり
いい感じにしょっぱかったり
身体にいいことをしてあげる
いまは大音響の中で踊りたい
全体に暗い近頃
脈拍を炸裂させてやりたい

部屋の前の道を通り過ぎるクルマ
とか原付とか自転車
すべては過ぎ去ってゆくものなので
時間と同じカテゴリーだな

コンビニ袋が舞い上がり
3円の価値を思う
おにぎりの包装の開け方が上手い
それって褒め言葉?
コンビニの品揃えの
たとえばこないだ食パンがなくて
菓子パン1個の値段が
6枚切り食パン6枚の値段だと
気づいたときには
もう遅いと思った
人生のスタートがな

優しいね、は褒め言葉じゃなく
何も決められないバカの証

誰かの望んだ雨が降る
この世界では
誰かの望みが必ず叶う
牛の死すら
ビーフシチューに微笑む人

そして同時に
誰かの望みは
決して叶わない
牛の死なら
その体温を知る人が泣く

いや泣かないか
分からないけど

あの頃
大学はずるずると休み
昼夜逆転の生活
バイトは夜だから
バイトだけして
昔のロックでも聴きつつ
ビール飲む
それが19の冬の肖像だった

何も怖くはなかったし
不安もなかった
ただ
大学はもう辞めたかった
けっきょく辞めたけどね
だいぶ頑張ったさ
わたしとしてはね

ひもじい冬
うどんを食う
こういうときにね
近くに
といって住宅地のなかに
小さな店があって
歩いていけるところ
表通りに行きたくないとき
煙草とビールの自販機
店はコンビニよりも
品が少ないが
うどん玉とスープで
百円しない
そいつを買って
煙草とビールとうどん
冬の胃袋

街に住んで
空っぽでも生きなきゃ
マトリョーシカ
中の人が死ぬくらい
さみしいね

ところで
眠いなあ
耳鳴りがうるさい
欲しい本を昨日買った
今は欲しいものはない
いや、ないことないけど
いや、やっぱりないか

それです
ヤマイのときに
ヤマイについての本を買う
バカですね
そんな特効薬などないの
いつかヤマイは
雨のように上がるんです
睡眠と栄養です

早回しの画像で双葉が
ひらくまでの緩慢な生きざま
お医者さんがわたしの
カルテに書き込むヤマイの名
「離人症」
お薬はないの

街を歩く
そういえば
歳末たすけあいって
いう季節だな
駅とかで立ってる学生さん
心に訴えたいのなら
芸でもすればいいんじゃない?
ただ叫んでるだけじゃ
十円ももったいないわ

そんなに甘くない
生きていくことってのはさ
退屈と窮屈なら
わたしには前者が多いかもな
不平と不満は
不平等に配られる
ああ、弟にわたしの
時間をプレゼントしたいわ
多忙で過労死寸前の

話したのは何年前かな
覚えてるかなわたしのこと
ってそりゃ姉弟だし
わたしの買った本CDを
勝手に持ってって
そいつで出来てる彼の素養
感謝されるべきよ

ってまあいいけどさ
身体は大事にね
わたしは精神を大事にする
互い心配かけないように
しましょ
寒空
健康だったら
いつか分かり合える
って思える
冬の空の下で

「大きな空」

寒空はあかるく晴れている
つめたい風が吹き抜けるみち
飛行機が横切る
雲がついていく
ひとすじの雲

葉を落とす類は
落とし切る葉
落とさない樹も凍えてる
砂地の神社
雨降って地固まる
とはまさに

ことごとくこの冬を
やり過ごす日々
明るいニュースのように
大きな空を確かめる

夢をみないことは
賢いことかもしれないけど
シナリオ通りの生きざまに
ときどき濡らす枕

一年
という時間の単位としては
かなり大きい塊が
過ぎ去ろうとしている

来年はいいことがあり
幸せに暮らす
または
いいことばかりではないが
元気に暮らす

笑われそうな夢は言わず
ただ頑張っている
たまにつまずく
ときどき空を見てる
何でだろうね

空を見ると安心する
どうしてかはよく
分からないけど
草原で横たわると
分かった気になった
何かが

叶えたい夢はあった
もうダメなことが多いけど
残ってるのもある
諦めることはない
わたしはしつこい
タイプなのです

視界いっぱいの
大きな空
全身で感じている
いちばん近くでみる

わたしなんてちっぽけ
夢も叶いそうにない
空がある
信号は青に染まった
長距離ランナーの
血が騒ぐ

友だちはいませんと
ちゃんと言った
大きな空と孤独だけが
わたしを見守っている
そう信じれば眠れる

空にも孤独にも
言葉は通じない
それでも言葉を使うのは
なぜか
伝えたいひとはいないのに
あえていうなら
自分自身に伝えたい

大きな空です
雲も太陽も星も
そこにいます
くるんとこの星を
包んで離さない
青い空
赤い空
黒い空
いずれも見尽くすことは
できない

「サタデーナイト」

一週間がいそがしく終わる
このチョコレート色した
サタデーナイト
テキーラで乾杯

知らない曲が流れる
そのリズムに乗ればいい
ため息も舌打ちも
吹き飛ばすステップ

もうもどったのかな
流行りの病への警戒は
なくなったかな
サタデーナイト
マスクをしてる人がいない

浮かれて熱を帯びた身体を
外の温度にそめてひやす
低音の爆音がドアを叩く
一人ぼっちのサタデーナイト

TSUTAYAも22時まで
夜にねぐらのない類
朝までやってる
いつもの喫茶店

つまみはお腹にたまる
それはいいこと
カクテル二杯目であなたは
もうマティーニにしたのか
わたしの二杯目はまだ
しょっぱい犬(ソルティドッグ

レコードが流れるほど古い
深夜喫茶いつもの客
ジャズ
じゃまにならない音量
ここはまだ煙草が偉い

カウンターとなりのひと
話したことはない
顔は知ってるけれど

流れ着くのがこの喫茶店
お洒落なんてないような
孤独な街の隠れ家

もう日曜だな
誰にでもなくつぶやいた
腕時計が三時を示す
酔っていても
どうってことない
待ち合わせのふりしてる
女の香水が嫌い

明るくなる前には
この喫茶店も閉まる
歩いて帰れる距離の
安アパートのひとり暮らし
つめたい部屋

サタデーナイト
の次は
サンデーモーニング
積極的な日だね

服を着替えて
鏡を覗けば
いい歳をした女
ダサくて寒くて
孤独を抱きしめた

「時間が気持ち良くて」

こんなにたくさん時間があるのに
布団の中でスマホにこぼす
いったい何やってんだ
絵を描く
読書
そういった建設的な行動をな
したらいいのに

才能を腐らせることばっか
チョコレートほおばって
やるせない夢うつつ
真剣にやってるさ
全力出して絵を描いている
でもな
いい絵は気分が乗らないと描けない
そういうものさ

ああまだ夜の7時
ちびまる子ちゃんよ
サザエさんよ
明日は月曜よ

身体がふとんの中で
ほわほわに温まっている
手足の指先まで
温かい血が巡る
しあわせ
この時間が気持ち良くて
わたしは生きている(ようなもの

ふとんの中は
ちょっと息苦しいけど
痛いことはない
ほわほわになってから
もう出ることはない
出てもいいけどね
チョコレート取ってくる
それもまたありですね
そこまで太ってなかったし
なんかしあわせの刻
時間が気持ち良くできている

あごに激しくニキビって
ストレスかなって
心当たりはないけどね
チョコレートだな
がまんできないな

最近はずっと幸せだから
時間が気持ち良くて
キツい症状はあるけど
クスリでごまかして
音楽やチョコレートでごまかして
まだまだ病気入りです
パッションしぼむ頃
在宅勤務はアタマが痛い
マジで描けなくなっちゃうの
それはもう諦めて
休む

つまらない時間
頓服の液薬を
チューチューというほど飲んで
なんとかする
ふとんを敷くと落ち着くって
何でしょうね
温かい身体が柔らかくなる
そこにあるわたし

日曜の夜は
眠れないくせに
FMが終わっちゃう
残念な夜

もうなんか起きとこうかな
なんて睡眠薬はやくのみすぎて
ハイテンション
あるいは本能的
食ってしまうのです

眠れる気がしないな
わりと温かい夜だし
夜遊びでもする?
YOASOBIの歌はよくわからないけどね
時代の骨董品
であるわたしの情報網

ああ、アタマが冴えわたる
ほんとはクスリで多幸感
エンドルフィンも出てるのか
絵が描きたいなと思えば
絵を描くのさ
自由な暮らし向き
誰も指図しないからな
ははーん
意味なし

こんな時間が気持ち良くて
わたしも捨てたものじゃない
絵を描くのさ
ってさっきから打ってる
さっさと描けよ
なあほんと
良い時間は短いよ
でっかい夢にテイクオフ

「しんだら」

死んだらなんにもなくなるわけじゃ
ないから大丈夫だからね
生まれちゃったぼくらは
生きていなくなったら
死んでるってことになる
生きてる人は死んだ人に
会えないけど
死んだ人はそこにいるんだよ
きみの心のすぐそばに

死ぬことをそんなに怖がらなくていい
誰だって死ぬんだし
とても苦しいというわけじゃない
もちろん生きてて死ぬ間際は
苦しいかもしれない
それはあらゆるところで見られるな
病気で死ぬのは
今のところそんなに楽じゃない
なんでかな
あんまり簡単に死なないための
なんだろうね
病気で苦しいなら
安楽死
そんなものの否定的な意見もあり
生きてることが辛いのだと
分からないでいる

人との別れは辛い
いくらその人が安楽になろうと
その人に会えなくなるのは辛い
でもふとした鳥や猫
そんなのになってその人はいます
だから別れを苦しまないで

生きていることが
生きていることが
死んでないことが
つらいのだろうか

確かにつらいんです
生きてる以上
何かをなさなければならない
勉強、仕事
ありとあらゆる苦悩
思い通りにならない悔しさ
比べると劣ってる悔しさ
得られない渇望
寒さ
孤独
愛する人の苦悩という苦悩
愛する苦悩
約束の地
たどり着けず倒れる
生きているのに引き裂かれる運命
すべてが
なぜこんなにも辛いのだろう

だからせめて
死んだら全てが楽になると
思いたいわたしは卑怯ですか?
今すぐではない
だけど明日死にたいかもしれない
今は死にたくない

最後に母さんに会いたい
お世話になった人に感謝を告げたい
死んでからでもいいかな
こうやって残しておけば伝わるかな
ダメダメだな

未練があったりするのよ
こんなさっぱりした生きざまの
わたしでさえもまだしたい事
たくさんあるし努力したことが
結実するのを(しないのも
見届けたい
それは死んでからもできる
といっても確信できずにいる

死ぬの
ちょっと力がいるしな
後片付けも面倒なの残すのも悪いし
とりあえずまだ死にたくないです

でもなんだかんだ言って
死ぬことを考えない日はない
死にたくない、も含むけど
交叉点で
ここでふらっと出たら死ぬな
とか考えてしまう
人が死んだ話とか
テレビやスマホは
毎日のように訃報をいう
わたしや
わたしの大切な人たち
大切でもない人たちも
いつ死ぬか分かんないのに
とりあえず
ここ何日は死んでない
らしい
そっか

時間というのは
一方向に流れてるようで
戻ったり先に飛んだりもしてる
たぶんね
だから毎日は
繰り返す波のような
リズムでしかないのだろう
わたしたちは踊る

死なないように踊る
じっとしていると沈んでいくからさ
ステップしてスキップして
もう大体猛吹雪の中
足跡も姿も
自分の足元すら見えない
冷たい白に囲まれる
それも嫌いじゃなかったな
防寒着をしっかりして
それでも前へ進む
雪を漕いでいく
その後ろをゆく
かすかな青についてったあの頃は
かすかな赤でいた
気がつけばこんなに
南下していたね
三センチが積雪だなんて
笑ってしまうけど

雪で死ぬひと
熱で死ぬひと
いずれしぬひと
みんなです

せめて殺し合わぬよう
願うのみです
死にたくなったら
いつもだけどね
死にたくなったら
温かくして
お腹になにか入れて
おふとんにもぐって
眠りましょう
子守唄を思い浮かべながら
目を閉じて
身体から力を抜いて
ぺたんこに
眠ろう
それが今すぐできる
死だ


「運命」

あなたはわたしの
最後の運命の人だった

あなたのためなら母親も捨てた
苦手な料理も家事もした
あなたとの間に子どもも欲しかった
庭付き一戸建てなんかじゃなくても
賃貸のアパートだって
あなたがいたら
天井の色が何色にだって染まる

あなたは住むところにこだわるけど
わたしがそれを上回る
お部屋のインテリアをこしらえて
きっと気持ちよくなるはず
セミダブルのベッドが狭ければ
わたしは猫みたいに小さくなるよ
って、
いまさら考えるのもかなしい話

あれから二十年経ちました
わたしもおばさんになりました
あなたもおじさんになったのかな
わたしの中では
あの日、美術館まで歩いていって
写真展を一緒に見たあなたの横顔が
そのままに残っています

あの年のお正月
わたしは最悪な実家を捨てて
あなたの部屋に行きました
あなたは目も合わせずに
なぜ実家に帰らないのかと
詰った、とまではない、指摘した
あなただって帰らないじゃないの
仕事があるにしたってさ
そんなの大した言い訳じゃない

あなたは夜のウエイター
まだ19なのにね
わたしは大学生
学校になど行かないけどね
何もかもが音を立てて
バブルは崩壊しました
ばか騒ぎは終わり
沈痛なこの国の温かな正月
あなたはわたしに羽毛のふとんを与え
自分は安い毛布にくるまった
19の正月
仕方ないのでわたしは持ってった
スケッチブックに絵など描いて
あなたは頑なに壁際に向いて
寝ていた
寝たふりかもしれないけど
つけっぱなしのFMが
正月の割にはハードなロック
微かな音量だけどさ

どのくらいの時間がたったのか
三箱持ってった煙草を吸い尽くして
わたしは近くの自販機まで行った
ジュースも買った
二本
あなたも好きなジンジャーエール
備え付けの小さな冷蔵庫に入れて
あなたが起きたら一緒に飲もうって
思ってたんだよ

お昼も過ぎて
あなたは起きない
寝たふりだったらとんだ災厄だね
わたしは羽毛ふとんをあなたにかけ
絵を描いていた
その頃は人物も出てくる
マンガみたいなのと
デッサンみたいなのと
あなたの顔みたいなのと
えんぴつで描いていた
先が丸くなって
描きづらくなってきて
あなたのボールペンを借りた
なめらかなボールペン

昼の3時頃あなたが突然起きて
シャワーを浴びた
わたしのことは全く見えない素振り
長いことシャワーを浴びて
シーブリーズの香りに包まれたあなたは
あのときのあなただったけど
すぐに髪をドライヤーで乾かし
たっぷりの整髪料で固めた
嫌いな髪型

そして昨日のジーンズとTシャツ
革ジャンをはおって
なんも言わず仕事に出てった

さみしい

とはいわないけどとてもつらい
わたしは封筒に入れた
バイト代の数万を
迷いながらローテーブルに置き
「宿泊代」と書いて
迷ったけど置いてくことにした
一月一日
街は静か過ぎた
わたしは悪くした耳鳴りが
雨降りのように鳴るのをただ聴いて
部屋を片付けるかも迷ったけど
もともとそんなにモノがない部屋で
というかほとんどモノがない
こんな暮らしであなたは
大丈夫なのか
心配した

ほんの二ヶ月前は
あなたの休みに合わせて
わたしが行ったことに少しは
喜んでくれたでしょ
コンソメのポテチと
ハイネケン
ろくでもない食事は相変わらず
惣菜のパンは夕方のため

あなたはヘッセを読んでると
言ってたね
すぐに買ったよ同じ本
難しかったけどそれがあなたの
魅力にも思えた
それと
二人で集めてた
銀色夏生
全部買ったよね
好きだった
「そして僕は途方に暮れる」
あなたはハードロックしか
聞かないっていうくせに
銀色夏生だけは認めてた

あなたがわたしに買ってくれた
カフカの短編集
二冊買った、って聞いて
めちゃくちゃ嬉しかった
それも難しかったんだけど
なにせ、わたし何もしていないから
時間だけはたくさんあって
心に染み込ませるように読んだカフカ
「変身」もこんな話だったのか
とかね
今度会ったら
本の感想とか言い合って
なんて楽しみにしてた

一緒に観た
植木等のサラリーマンもの
お調子者のサラリーマンの
昇進してく物語
むちゃくちゃだけど
こういうのって実際あるのかなって
笑いながらもうらやましかった
あなたがお調子者の
サラリーマンなら
好きにはならなかっただろう
けどね

二人の時間は午前5時
暖かくて
ねずみ講で買ったという羽毛ふとんを
二人分け合って
抱きしめて眠る
そうなれば簡単にできるセックスも
めったにしなかった
わたしもあなたも照れるから
お酒がよけいに入って
クイーンをあなたが鳴らすときは
セックスしようという合図
嬉しいような
恥ずかしいような
不器用な二人

別れはわたしから言ったけど
とうのむかしにあなたには
嫌われちゃってたね
好きすぎておかしくなってたかな
わたし
あなたと過ごす時間だけが
生きているって感じがしてた
その頃はわたしの家族もバラバラで
世界に頼れるのはあなただけ
だったんだよ
不幸を言わないわたしだけど
高校生の頃みたいに
順風満帆ではなかったこと
上手く伝えられなかった
わたしの暗い過去や
抑うつ病とか不眠症
何より夢を失って
頼れるのはあなただけって
言いたかった

何もかも遅すぎて
別れ話と称して
最後に一度会った
なんもいえなかったよ
ゴメンとありがとう
精一杯のきもち

あれから、でもなく
転落人生を送ったわたし
宇宙にひとりだけ
みたいにさみしいけど慣れた
あなた以上に
好きになる人はいないだろうな
っていう運命です

「ステキ」

ステキな夜へようこそ
わたしはステキの夜の案内役
星がキレイなそらの旅
荷物は少なくていい
身体は温まっている
冬なのにこんなに暖かい
今日は抜群にいい日だよ

寝てもいいし
遊んでもいい
この際、遊ぶとは心の中の夢
快楽とはちがう
もっと精神的な遊びなのさ
身体は温まっている
夜だから光がキレイだね
ステキな時間をぜひ
あなたと共に

ここには現実がない
味も匂いも見えるものも
聞こえてくるのも触れるのも
全ては幻なのさ
だけどほら、感じられる
それも感じたいように感じられる
自在とはそういうこと
自由とはその心のこと

だいぶん分かってきたことは
つよい人がつよいです
力ではなく意思と
そして賢さでいける
同じ過ちをくり返すのが
最低のひと
学ぶのです
高みにのぼれば見えてくる
のぼるのも努力もつよさ
疲れても休まない
つよさ

ステキな時間を共に
イヤなことは忘れるか
笑ってしまいましょう
笑顔がただの痙攣じゃなく
心から微笑むのなら
それこそが慈悲
温かい
ステキに気づくことばかり
素直な気持ちで受け取ってほしい

たぶんダメなひともいます
かわいそうだけど救えません
わたしのステキは
受け取れるひと限定品
みんなに配れるほどは
つよくない
ここに描いておいたから
もし、わたしを追いたいなら
これを抱きしめて
理解してください
ステキは感じることだけど
理解はできるものでもある
気持ちよくなくなっても
ステキは横で光っています

たった今から
ステキは一生続くでしょう
一生というより永遠
永遠とは瞬間のこと
嘘みたいだけどね
本当のことなのです
ステキな夜へそして眠る
睡眠は誰もが味わえる
最大の夢の実現
忘れてたって覚えてる
ステキな睡眠もあなたと
ここは夢の国

昼間はちょっとあからさますぎて
見えない光が音に消される
スピードのあるものにはねられる
おもたさのあるものに押し潰される
でも大丈夫
もちろん賢く動けばいい
そんな手のひらに握った地図
あなたの行方を知らせてる
見えない星が光っているから
ステキはいつも脈をうつ
感じていればそれでいい
呼吸で吸い込み、吐き出す
リズム
深い幸せ
身体が知っている
心も知っている
アタマが知らないだけなんだ

ステキなうたも歌おう
言葉もメロディーも知っている
あの応援歌
あなたを励ましてくれる
優しい歌声
背中をそっと押してくれる
こわくない
歌ってみて
息を吸って
色のつく風
鳴らしてみよう
のどは大丈夫
ムリはしないで
ひとに合わせなくていい
自分なりの
ステキな旋律
まだいける

どうしてこんなに温かいのだろうね
心が幸せにふやけている
ステキというより、
もっとステキすぎて困る
自分のことがよく分かる

どこが強みで
どこが弱いか
心のピースはかっちりとはまる
はめてしまえば
こわいものなんてない
自分のステキは
自分だけのもの
なくなったりしないから

飛んでみよう
飛んでいこう
このステキな夜へ

「クマ」

気づいたら
ここの場所では
おとなしい人のイメージで
定着
無口なのは
おしゃべりのドレスコードが
わかんなくなった

ろくにテレビも見ないし
流行りの言い回しは苦手
びくびくしちゃう

何にしろおとなしい
わめかないわりにさみしがり
いや、それはそうだけど
あわれみを受けると
ちょっと違和感
今日は全開で話せるスタッフが
いなくてさみしい
けどそっちの場に入るのは
いまいち
だけど
流れ上
その場に吸い込まれ
あわれみを受けてしまいました

かわいいクマのレジン
2個も作った
て、簡単なんだけどね
初めてでした
小指の先ほどの大きさで
透明と青いクマ
かわいい
わたしの作ったレジンのクマ

そういうのって
切ないくらいかわいくて
何だか自分が3個目のクマだな
なんて思った
サイズ感とおとなしさと
役立たずなところとか
クマ
ペンケースに2つ転がした

青いのは誰かにあげるつもり
透明なのは
自分で持っときたいな
なんて思った
帰り
コンビニで
食べるもの買って帰る

せつない一人暮らし
そんなの長くしてるし
なのになんかクマを見ると
せつなかった
そういう、
情がうつる系のものは
たとえばこないだのネックレス
あれは自分で
買っただけで
誰かからもらってもすすめられても
いないから一人の
気持ち
だけどクマは
(クマってだけで泣ける
何回も言うけど
せつない
せつない
せつなかった

なぜだろうね
かわいかったから
そしてとても小さい
はかないいのち(ないけどさ
わたしの弱点

わりと温かい夜

いたみはない
ペンケースのクマたちのこと
あいしてる
かもね

「寒めの時間」

いつだって
なんも言わなくなるのは
わたしのクセだし
なに言えばいいか
考えてる
時間がかかるの
分かって欲しいよ

だけども
君はどこか不器用で
って
これは褒めてるんだけど
気持ちを分かってもらえない
分かろうとしてるのは分かる
んだけどね

どうしょうもなく
すれ違う
こんなにこんなに
機械がスゴイのに
ひと粒のゴメンねが
遠い

あの日
なんか動物とかみたいね
ってわたしが言って
でも動物園というんじゃなく
そしたら君が
馬でも見るか
ってなって行った
近くの競馬場

君がやり方わかってんのかと
思ったから安心して
着いてみたらよくわからない
ことばっかりで
ただ
走ってる馬と
応援する声にのまれた

けっこう前の方で見たし
馬から湯気がたってたり
においもした

一目惚れした名前の長い馬さん
3番で
ぜったいあの馬さんが一等賞だよ
っていったら
どうしてか違う馬さんの馬券
君は買ってしまってて
ああもう、と思ったけど

だーっと出てからずっと
3番の馬さんがトップで
やっぱそうだろな
イェイ
ってなったんだけど
カーブでどんどん抜かれちゃって
見えなくなってしまったの


君の買った馬券は全然ダメ
だったし
まあ
どっちにしても
お金が欲しかったわけじゃなく
だから満足だったよ

馬はね
良かった

そんな日々
君は何してる人か
よくわからないけど
お金は持ってて
時間もあった

わたしは全然
病気っぽかったし
ていうか薬飲むけど
何もしてなかった

クルマの名前はよく知らないけど
みどり色
タクシーみたいなの
ダッサイなって
言ったら怒った当たり前か
混んだ駐車場でも
すごく目立つからいいね

どこで出会ったかはとんと知れず
なわけないけど
いろいろあってな
いつの間にか
君が下で待ってるって
TELしてきて
それは何時でも何曜でも
わたしがさみしいときだった
スゴイね
宇宙人かとおもう

カーラジオでもなく
不思議な音楽が
めちゃくちゃにかかるの
ポップとかテクノとかアジアのとか
だいたいドライブ
ハイウェイじゃないから
信号で止まるし
でも君は全然上機嫌

何したい?
って君はきくけど
だいたい分かって言ってる
泣きたいときは
渋滞にハマる
って泣けないじゃない
分かられてる

ファミレスのステーキを
君はばらんばらんに切り分けて
お箸でつまんだ
わたしはナポリタンを
くるくるしてた

ラーメン屋では
君は備えつけのゆでたまご
二個もむいて漬け込んだ
圧倒
わたしはおしょうゆのラーメン
シナチクが好き

かと思えば
コースになってる
お寿司屋さんで
わたしがイクラばっか
たのんでも平然として
卵ばっか食べる
払いはぜんぶ君
なんだよね

いろんなところ
行ったけどまるで
ダメだった遊園地
わたしが
絶叫系も回転系もダメ
と言ったら
君は高所恐怖症で
ふたりともお化け屋敷は
怖くてダメでした
大人のお子様ランチを食べて
お土産についてた
キーホルダーのクマが
かわいかった

わたしは一人では
絵を描くのが好きで
気分の良いときは
ずっと絵を描いた
スケッチブックに黒のペン
まるっきりの抽象画

君はわたしといない時には
何してるのかな
映画に詳しいから
ネットの映画
とか
まあ
何でもけっこう知ってる
んだけどね

わたしがあまりにも
なんも知らないから
びっくりされちゃうけど
おしえてくれる
税抜価格とか
そういうの
何で98円のチョコレートが
百円玉で買えないのか
わからなかったの

二人でいるとき
なにしてるかな
だいたいドライブだから
君は運転
わたしはぼーっとしたり
「いま」の話しか
しないかな
むかしのことも
先のことも
話さない
桜がもうすぐだねって
そのくらいのこと

クルマの中
がいちばん好きで
動くところとか
すわってられるし
君はいつもとなり
なところもいいな

寒めの日
でもクルマはあたたかくて
まるで君に
あたためてもらってる
みたいで

あの日
すごくなんか落ち込んで
不安だった
君が来るのが
もう少しおそかったら
とおもうとこわいくらい
冬の夜中
寒めの時間に
君が来てくれて

なんも言えなかったけど
言ったらぜんぶ
言わなきゃだから
そんなのムリだから

めったにないけど
君の横で寝たかったから
クスリをのんで
眠った

目覚めたらまだ暗くて
なぜクルマの中なのか
いっしゅんわからなくて
でもそうかって気づいたら
あとは
君に任せてよかった

かなしい思いをしたのは
なんでだったんだろう

いつもありがとう
それだけはいつも思ってます
ミステリアス
というのか
君は不思議で
何も知らないけど
いま
横に
いてくれたら
それでいい
寒い時間の
大きい
ぬくもり



 2023年冬くらいに書いた詩をまとめてみました。虚構か実話なんて話は、実際は意味のないことだと思います。
 確かに一部は実在したことのある話。だけどこの文脈ではないです。
 こんなの、読んでくれる人がいるのか、全くの無駄か分かりません。
 読んでくださったら、光栄に思います。
 まだまだたくさん詩はあるので、続編も書いていこうと思います。
 よろしかったらお付き合いください。
                  作者
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