憂い視線のその先に

雪村こはる

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初恋

03

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 そんなふうにして律は自らの身を守ってきた。もっと普通の容姿に生まれてきたら、こんなに煩いことはなかった。普通に皆と遊んで、普通に笑い合ってそんな生活ができたかもしれない。

 律が相手と折り合いをつけようと望んでいても、それを望まない相手がいることの方が圧倒的に多かった。

 律はこの容姿が嫌いだ。それなのにまどかはなんの悪びれもなく「美人だね」と言う。

「失礼な人」

 そうぼやきながらも、嫌な気分にならなかったのは初めてだった。まどかの存在を知ったのは、3年近く前のこと。
 保険会社の詐欺に遭ったと被害を訴えた60代の女性。斡旋した人物を尋ねれば、税理士である結城ゆうき雅臣まさおみの名が上がった。当事その男の恋人だったのがまどかだ。

 雅臣の身辺調査を行う内にまどかにたどり着いた。それはかねてよりテレビ画面越しに周が恋い焦がれていた女性だった。
 この税理士事務所には脱税や詐欺などよくない噂ばかりが飛び交っていた。そんな男と付き合っていたらこの女性もいつか巻き添えを食うかもしれない。そんなふうに考えた律。

 まどかの働く施設の経営の見直しの元、担当税理士として周を配置した。雅臣がその座を狙っていたのを知っていてあえてだ。
 なにも知らない周は、勝手に雅臣から恨みを買って事務所への嫌がらせに続き、まどかを惚れさせるよう雅臣に脅されていた。

 雅臣には他に婚約者がいたからだ。その婚約者は議員の娘であり、いつか雅臣が市議会議員として出馬するためのコネ作りとして父親から仕組まれた政略婚だった。
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