憂い視線のその先に

雪村こはる

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異性の友情は存在する

04

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 大崎は、普段通りの千愛希の様子に救われた気がした。大崎も他の者に応援を頼みたかったのだが、千愛希ほどの実力者がいなかったのだ。
 千愛希は過去に睦月と共にアプリ制作を行っているため、ペースも流れも把握している。気まずいのは重々承知だが千愛希以上の適任者などいなかった。

 自分の方は、どんなに忙しくても千愛希が秘書としてくるまでは自らスケジュール管理も制作も行っていたのだ。数ヶ月くらいなら千愛希の代行秘書はいる。しかし、千愛希の代わりに睦月をサポートできる人間はいない。
 こればかりは致し方ないと思っていたところだ。睦月は嫌がるかもしれないが、これは仕事として割りきってもらうしかない。

 大崎はそんな思いで千愛希を送り出した。

 千愛希には余計に考えることが増えた。ただでさえ、律の視線の先が気になって仕方がないのに、元婚約者と共に再び仕事をしなければならないなんて、と大崎のいないところで大きなため息をついた。

 昨日は律の家で夕飯をもらい、千愛希は何度も訪れている守屋家にも慣れ始めていた。けれど、律がまどかを暖かい目で見ていることには一向に慣れない。

 律と付き合い始めた頃には気付かなかった。まさか律がまどかを好きでいながら自分と付き合う提案をしたとは思えなかったからだ。

 千愛希は律と再会した時、全く嫌な気持ちにならなかった自分に驚いた。学生時代はあんなに嫌いだった律のことが、社会人となりそれ以上の挫折を味わったら律を敵対視してたこともバカらしく思えた。

 無口で笑わないと思っていた彼は、普通に千愛希と会話をしたし、千愛希の言葉で笑顔を見せてくれた。
 突然誘ったお茶にも付き合ってくれたし、婚約破棄になった愚痴も聞いてくれた。千愛希は嬉しかった。初めて異性の友達ができたと思ったのだ。
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