憂い視線のその先に

雪村こはる

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見据える未来、払拭できない過去

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 それもこれも、田所のせいだ。俺達はなんのために……と全員の視線が再び田所に向けられた。
 千愛希はその視線に気付き、本当に他人を責めることだけには長けた職場だなと思った。

「今回のハッキングの原因は田所さんのパソコンのようですが、皆さん他人事ではありませんよ。鍋田さん、あなたも俺達は寝ずに作業をなんて言っていますが、先月の2日、4日、11日と……計14日間、動画を見ていますね」

「そ、それは仕事で使う資料のためにっ」

「踊ってみた、がですか? そうですか。アプリゲームに活かせるといいですね」

 一瞥した千愛希にぐっと下唇を噛む鍋田。千愛希はキーボードを打ちながら更に続けた。

「他にもありますね。5ちゃんねるを書き込んでいる人に、ネットニュースに誹謗中傷を書き込んでいる人、それからアイドルのライブのチケットを申し込んでいる人。それぞれ誰のことか自覚はあるかと思いますが。言っときますが、全員のパソコン内部が私には見えていますから」

 その発言にその場にいた全員が目を泳がせた。千愛希は呆れたように息をつき、「残業だの徹夜だのを謳っておきながら、結局のところ大した進行もさせず、趣味に没頭しているサークル擬きの事務所ですか」と言った。

「土浦! いくらなんでも言い過ぎだ!」

 憤りを露にした社員達と、その気持ちを汲み取って制止に入る睦月。それでも千愛希は止めない。

「言い過ぎ? よく言いますよ。 ここにいる全員が私のことをなんて言っているかくらい知っていますよ。能力のないくせに社長の愛人になって性能のいいソフトウェアを好きに使わせてもらっている。コネで広告を派手にして売上を伸ばしている。社長と副社長と二股をかけてそれがバレたから婚約破棄された」

 キーボードを叩く手を止めて、社員達をぐるっと見渡した千愛希。その射るような視線に、男達はびくりと肩を震わせた。
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