憂い視線のその先に

雪村こはる

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見据える未来、払拭できない過去

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 着替えを済ませてリビングへ戻ると、スマートフォンが点灯していることに気付く。千愛希からの連絡かと急いで確認すれば【曽根 公彦きみひこ】の文字。

 なんだ、父さんかと折り返す。

「もしもし、父さん?」

「ああ、睦月。悪いな」

「いいけど、なんの用? 俺、今忙しいんだ」

「わかってるさ。来月は帰ってこれるんだろう?」

「わかってるよ、誕生日のことだろ?」

 睦月は、はぁっと盛大にため息をついた。来月、1月21日は睦月の妹の誕生日である。睦月には妹が2人おり、下の妹のことだ。

 東京で活躍している女優として現在働いている。父親にも睦月にも似ていないその美しい顔立ちと抜群のスタイルは完全に母親譲りだった。
 モデルとして仕事をするも、鳴かず飛ばずでもう諦めて結婚しようとしたところ、その婚約者には他にも付き合っている女性が2人もいて大騒ぎになった。
 親の勝手な見合いだったが、妹はその男のことを気に入っていた。睦月はトントン拍子で婚約の話が進む中、相手の男の顔は見たことがないが、後にその男が刑事事件に巻き込まれたことで、名前くらいは知ることになった。

 妹は精神的に不安定になったが、その事件をきっかけに世間から同情の声が集まり、あっという間に無名モデルから人気女優へと成り上がってしまった。

 今では『なりたい顔ランキング1位』なんて肩書きを背負っている。

 月9のドラマになんかでちゃったりして、我が妹ながら出世したもんだ、と睦月は目を細める。仕事を辞めようと思ったところに好転するのだから、人生なにがあるかわからない。

 今ではすっかり元気になった妹。誕生日会を家で開くから絶対に来いと家族に念を押されていた。
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