憂い視線のその先に

雪村こはる

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様々な恋愛事情

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 睦月はほぼ無意識に、千愛希の唇を奪った。律が触れた、そう思ったら無性に悔しくて今更ながら奪い返したくなった。

 距離が近くなると、千愛希の甘い香りが鼻をかすめた。長い睫毛が睦月の頬をくすぐる。

 ……いい匂い。

 睦月は、千愛希の風呂上がりを思い出す。いつも強いほど甘い香りがして、いつまでもその匂いが残る。頭がくらくらするほど魅了される。花に集る蜜蜂のように、その甘い香りを求めたくなった。

 唇を離しても、まだ千愛希は目を閉じたまま。このまま目を覚まさなければ、家に連れ帰ってしまいたいと思った。
 そっと舌先で千愛希の唇の割れ目をなぞった。千愛希の吐息が舌先に触れた。胸の奥が張り裂けそうなほど高揚した。

 チラリと視線を下に移せば、白く細いカモシカのような足。睦月はごくりと喉を鳴らし、「はぁ……」と切ない吐息をついた。

 千愛希に出会う前まで睦月はいわゆる『脚フェチ』だった。フェティシズムとは、そもそもは信仰・崇拝の在り方を意味する「呪物崇拝」とも訳される。
 現在はフェチとして世間的にも容認された言葉ではあるものの、異性の身体的あるいは装飾的なパーツや要素に対して特に性的魅力を感じる傾向・嗜好・趣味・性癖、といった意味で用いられる語である。
 あしフェチと言われるフェチには『脚フェチ』と『足フェチ』があり、脚フェチは太腿から爪先までのフォルムに惹かれることが多く、足フェチは足首から指先、足の裏、踵などより細部にまで拘りを見せる意味でも使用される。
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