憂い視線のその先に

雪村こはる

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様々な恋愛事情

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 千愛希はまだぼやぼやした頭で、また睦月の夢を見た気がする……。と思いながらその場に立ち上がった。
 ここ最近は見なかったんだけどな……最後に見たのはいつだっけ? ……あぁ……律が家に来た日か。
 そう思って小さくあくびをした。

 律に抱かれた後、急激な眠気に襲われた。あれは安心感からくるものだったのかもしれない。ただ、あの家に入れた男性は睦月だけだった。普段と同じベッドの感触。お気に入りのボディークリームの香り。その中に包まれて、体を撫でられたからか睦月の夢を見た。
 まだ付き合いたての、仲が良かった頃の夢。ああでもない、こうでもないと言い合って笑い合った。睦月と過ごした日々は楽しかった。律と過ごす日曜日と同じくらい。
 学べることがたくさんあって、賢いはずの睦月が時々バカげた発言で千愛希を笑わせてくれた。
 仕事で疲れるととことん甘やかしてくれ、時には睦月が料理も作った。

 昼間はからっとした爽やかな時間を過ごし、夜は睦月が激しく千愛希を求めた。彼には変な性癖があったが、「千愛希はどこも全部綺麗だ」そんなふうに褒めてくれたものだから、なぜか嫌な気はしなかった。

 そんな睦月にチラリと視線を移す。不自然な格好で立ち上がる様子のない睦月に首を傾げた。

「どうかしました?」

「い、いや? それより、ちょっと確認してくれるか? 千愛希のゲームエンジンを使って進めたんだ。AIのオートシステムが使い方次第で勤務外の時間でも作業ができるようになりそうだよ」

「……え?」

 驚いた表情の千愛希。一瞬、パソコンがある事務所の方に目を向けた隙に立ち上がった睦月は、千愛希の背後に回ってその背中を押した。
 急かすようにパソコンに向かい、椅子に座らせると「ちょっとトイレに行ってくるから、確認してて」とだけ言った。
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