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変化の理由
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本当に自分が欲しいものって尽く手に入らないんだよなぁ……。律の心も、仕事も。
システムエンジニアになりたいという夢は結局叶わなかった。その代わりに有名クリエイターの肩書きを手にしたが、それだって本当は自分が望んだものじゃない、と千愛希は思う。
人々は千愛希を成功者だと言うが、なんとなく辿り着いたのが今であって、考えてみれば自らの力で手に入れたものはないと気付いた。
背中を押された詩は、よしっと意気込んでいる。そんな若々しい姿に千愛希は反対に励まされるようだった。
「それより千愛希さん、今更ですけど雰囲気変えたんですね」
詩の悩みのネタが落ち着くと、そんなことを言い出した。
「あぁ、うん。そうなの」
「私、そっちの方が好きです」
「あら、ありがとう」
睦月と同じこと言うのね、と千愛希は思いながら微笑む。
「前の千愛希さんももちろん綺麗だったけど、なんか魅力が全部伝わらないというか……」
「なぁに、無理してるって言いたいの?」
「い、いや! そんな!」
詩は慌てて両手を顔の目の前で振った。千愛希はふふっとおかしそうに笑って「まぁ、ちょっと無理してたかな。まどかさんになりたいって思ってたし」と肩をすくめた。
「ちょっと似てましたもんね。って、私まどかさんと喋ったことないけど」
「結婚式でしか会ったことないって言ってたもんね」
「はい。まどかさんも綺麗で可愛いけど、千愛希さんはなんていうか……」
「なによ」
「あの、色気が凄いです」
かあっと顔を赤らめる詩に、千愛希は思わず吹き出し、ゲラゲラと笑ってしまった。
「なにそれ」
「ホントですよ! どうやったらそんなに大人の色気が出るのか教えてほしいです」
「色気ねぇ……あるのかな?」
「ありますって! りっちゃんは気が気じゃないだろうなって思いますよ……私が彼氏なら心配になっちゃう」
「そうだったらいいんだけどね。生憎、律はそんなんじゃないのよ」
なんたって私の体をまどかさんだと思ってるんだから。そんなことなど口が裂けても言えない千愛希は、その可愛い年下の話に暫し付き合った。
システムエンジニアになりたいという夢は結局叶わなかった。その代わりに有名クリエイターの肩書きを手にしたが、それだって本当は自分が望んだものじゃない、と千愛希は思う。
人々は千愛希を成功者だと言うが、なんとなく辿り着いたのが今であって、考えてみれば自らの力で手に入れたものはないと気付いた。
背中を押された詩は、よしっと意気込んでいる。そんな若々しい姿に千愛希は反対に励まされるようだった。
「それより千愛希さん、今更ですけど雰囲気変えたんですね」
詩の悩みのネタが落ち着くと、そんなことを言い出した。
「あぁ、うん。そうなの」
「私、そっちの方が好きです」
「あら、ありがとう」
睦月と同じこと言うのね、と千愛希は思いながら微笑む。
「前の千愛希さんももちろん綺麗だったけど、なんか魅力が全部伝わらないというか……」
「なぁに、無理してるって言いたいの?」
「い、いや! そんな!」
詩は慌てて両手を顔の目の前で振った。千愛希はふふっとおかしそうに笑って「まぁ、ちょっと無理してたかな。まどかさんになりたいって思ってたし」と肩をすくめた。
「ちょっと似てましたもんね。って、私まどかさんと喋ったことないけど」
「結婚式でしか会ったことないって言ってたもんね」
「はい。まどかさんも綺麗で可愛いけど、千愛希さんはなんていうか……」
「なによ」
「あの、色気が凄いです」
かあっと顔を赤らめる詩に、千愛希は思わず吹き出し、ゲラゲラと笑ってしまった。
「なにそれ」
「ホントですよ! どうやったらそんなに大人の色気が出るのか教えてほしいです」
「色気ねぇ……あるのかな?」
「ありますって! りっちゃんは気が気じゃないだろうなって思いますよ……私が彼氏なら心配になっちゃう」
「そうだったらいいんだけどね。生憎、律はそんなんじゃないのよ」
なんたって私の体をまどかさんだと思ってるんだから。そんなことなど口が裂けても言えない千愛希は、その可愛い年下の話に暫し付き合った。
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