憂い視線のその先に

雪村こはる

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勘違いがいっぱい

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「私もっ……もっと早く言おうと思ったの……。でも、律がまどかさんのこと好きだと思って……。私とまどかさんの好きは違うよって面と向かって言われるのが怖くて言えなかった……」

「うん。ごめん……」

「それにっ……猫だってっ」

「……猫?」

 律は突然やってきた猫という言葉にそっと顔を上げて、眉を上げた。

「名前っ……つけていいよって言ったのにっ」

「名前……小茶丸?」

「うんっ……まどかさんが付けたの」

「うん」

「まどかさんのことっ、優先した!」

「あー……」

 律は自分の行動を思い返し、項垂れるようにして額を千愛希の左肩に預けた。

「嬉しかったのにっ……」

「うん。ごめん。千愛希の気持ち全然考えてあげられなかったね」

「ここ何ヶ月間ずっとまどかさんのこと見てたし!」

「それも……うん。思い当たる節がある……」

「ほらっ! だからっ!」

「急にね、なくなったんだ」

「……え?」

 律はゆっくり顔を上げて真っ直ぐ千愛希の目を見つめた。右手で優しく千愛希の頬をなぞって指先で涙を拭う。

「恋愛感情。まどかさんのことが好きだったはずなのに、急にそれがなくなった。ある日突然、好きじゃなくなった」

「なに、それ……」

「だから驚いた。ごめん、千愛希と付き合った時、まどかさんと重ねて見てたことはないし、身代わりにしたつもりもないけど……まどかさんのことはまだ少し好きだったと思う」

 正直な律の言葉が嬉しい反面、聞きたくなかったとも思う千愛希。けれど、黙って律の次の言葉を待った。

「でも、それが急になくなった。朝起きたらなくなってた。まどかさんを見てもなんとも思わなくなった」

「……本当なの?」

「うん。俺もまどかさんが初恋だったから……戸惑って、また感情が欠落したんじゃないかって焦った。目で追ったら、その感情がまた芽生えるのかって気になって……試してた覚えはある」

「でもならなかったってこと?」

「ならなかった。それどころか気付いたら、自分でも驚くくらい千愛希に夢中になって、執着してた」

 律は、情けないなというように眉を下げてそっと目を閉じた。
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