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最恐の男
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そこには鍋田の名前があった。弁護士からの書類のようで、詳しくは読まなかったが千愛希は「あー……でしたらやっぱり社長に直接来てもらえばよかったです」と苦笑した。
睦月は千愛希が隣に立つと、すんっと鼻から空気を吸い込んだ。男ばかりのこの空間に花が添えられたような甘い香りがした。
鍋田との話はとっくに大崎と話し合い済だった。書類も全てが完了したという知らせだったが、睦月は千愛希が全てを読んでしまう前にそれを封筒にしまった。それからふと千愛希の足元に目線を落とす。
スラリと伸びた華奢な脚に、睦月はゴクリと唾を飲む。そのすぐ側にはダンボールが置いてあり、いくつも積み重なった荷物から剥き出しのマジックテープ部分が顔を出していた。
その存在に気付いている睦月は、そこから視線を逸らし、立ち上がった。千愛希がダンボールに近付くように移動すると「三崎くん、頼んでおいたデータできてる?」と少し大きな声で部下に尋ねた。
「あ、はい! 副社長宛にメールを送信してあります!」
「そうか。まだ確認してなかったよ。ありがとう」
簡単なやり取りをして睦月は再び椅子に腰掛けた。
「拓也に確認してもらいたいものがあってさ。できてるって言うから、俺が確認したらデータを共有しておくから目を通しておいてもらうように伝えてくれる? とりあえずそれだけでいいから」
睦月はメールを確認しながら千愛希に視線を送った。千愛希は軽く頷くと「わかりました。書類の件も伝えておきますよ」と眉を下げて微笑む。
「いや、それはいいよ。長話になりそうだから落ち着いたら俺から電話する。データ共有の件だけ伝えておいて」
「そうですか。でしたらそのように致します。では、私は戻りますけどいいですか?」
千愛希は律とのことで少し話をしたいと思っていたが、いかんせんこの場じゃな……と思い日を改めることにした。こんなことなら睦月に事務所の外まで出てきてもらえばよかったと少し後悔する。
睦月は千愛希が隣に立つと、すんっと鼻から空気を吸い込んだ。男ばかりのこの空間に花が添えられたような甘い香りがした。
鍋田との話はとっくに大崎と話し合い済だった。書類も全てが完了したという知らせだったが、睦月は千愛希が全てを読んでしまう前にそれを封筒にしまった。それからふと千愛希の足元に目線を落とす。
スラリと伸びた華奢な脚に、睦月はゴクリと唾を飲む。そのすぐ側にはダンボールが置いてあり、いくつも積み重なった荷物から剥き出しのマジックテープ部分が顔を出していた。
その存在に気付いている睦月は、そこから視線を逸らし、立ち上がった。千愛希がダンボールに近付くように移動すると「三崎くん、頼んでおいたデータできてる?」と少し大きな声で部下に尋ねた。
「あ、はい! 副社長宛にメールを送信してあります!」
「そうか。まだ確認してなかったよ。ありがとう」
簡単なやり取りをして睦月は再び椅子に腰掛けた。
「拓也に確認してもらいたいものがあってさ。できてるって言うから、俺が確認したらデータを共有しておくから目を通しておいてもらうように伝えてくれる? とりあえずそれだけでいいから」
睦月はメールを確認しながら千愛希に視線を送った。千愛希は軽く頷くと「わかりました。書類の件も伝えておきますよ」と眉を下げて微笑む。
「いや、それはいいよ。長話になりそうだから落ち着いたら俺から電話する。データ共有の件だけ伝えておいて」
「そうですか。でしたらそのように致します。では、私は戻りますけどいいですか?」
千愛希は律とのことで少し話をしたいと思っていたが、いかんせんこの場じゃな……と思い日を改めることにした。こんなことなら睦月に事務所の外まで出てきてもらえばよかったと少し後悔する。
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