憂い視線のその先に

雪村こはる

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最恐の男

06

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 暫くして戻ってきた彼女は、手に新品のストッキングを持っていた。
 それを見つけた睦月は「ありがとう」と顔を綻ばす。

「副社長、言っときますけど女性社員にストッキングの余りがないか聞くのはセクハラですからね」

 受け付け員はぐっと眉間に皺を寄せ、そう言った。睦月は胸の前で両手のひらをかざし苦笑する。

 誰がお前にセクハラなんかするかよ、と思いつつ「ごめんって。配慮が足りなかったな」と口に出す。
 受け付け員は奥に入っていき、千愛希の前で止まると「土浦さん、よろしければこれをどうぞ」とストッキングを差し出した。

「え……?」

「まだ余りがありますので。いくら本社が近くても、そのストッキングで外に出るのはよろしくないかと」

「ああ、ありがとうございます。すみません……」

 千愛希はその場で頭を下げた。男ばかりの職場のため、女性社員とこういったやり取りをすることはほとんどない。そのため、千愛希はこの優しさが嬉しく、少しはにかんだ。

「副社長には早くあのダンボールを片付けるように言ってあったんですよ。私も先にお伝えしておけばよかったのですが……こちらこそ気が利かずすみませんでした」

 睦月の代わりに謝罪をする彼女に、千愛希は慌てて手を差し伸べた。

「いえいえ! そんな、私の不注意ですので。むしろ、用意していただいて申し訳ありません」

 お互い気を使いながら、眉を下げる。千愛希は今度何かお礼をしなくちゃと思いながらありがたくストッキングを1枚いただくことにした。
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