憂い視線のその先に

雪村こはる

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糖度150%、スパイス多め

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「私……本当に律との結婚は考えたことがなかったんです。自分だけ片想いだと思ってて……前の人は凄く私のことを好きでいてくれたから結婚の話が出た時も驚いたけど嬉しくて……でも、私はいつも言われるまで結婚とか考えられなくて……」

「そっか。それならやっぱりちゃんと同居の話は断った方がいいね。千愛希ちゃんには仕事もあるしね」

「あっ、いや……全然、律と結婚したくないわけじゃっ」

「わかってるよ。色々不安になるしね。私も結婚決めたのは千愛希ちゃんと同じくらいの年だったから。あまねくんとようやく付き合えてこれからって時だから同じ。でも、今となってはあの時行動しててよかったって思えたの。周りに反対されたりしてスムーズにいかなかったから」

「え……」

 千愛希はまどかの言葉に瞳を揺らし、苦笑するその表情を見つめた。ずっと憧れだったその美しさは、追いかけ始めた10年前となんら変わらないように見えた。あえて言うなら、母親となり自信による凛々しさが加わったくらいだかろうか。
 年齢の衰えを感じさせないまどかにただただ脱帽しながらも、出会った時から順風満帆に見えたまどかの言葉が信じられなかった。

「私とあまねくんが結婚するって言った時の話、あんまりちゃんとしたことなかったよね? プロポーズはあまねくんからでね、私凄く嬉しかったんだけど、戸惑いもあったの。ほら、私達5つ離れてるから。年下の男の子と付き合ったのも初めてだったから、どうしていいかもわからなくてね」

 そっと下唇を噛むまどかは、ばつが悪そうに少し視線を逸らした。あの頃の自分は、全く周の気持ちを理解してあげようとしなかったなと今思い出しても後悔するのだった。
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