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糖度150%、スパイス多め
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その頃、律と周は1階のゲストルームにいた。守屋家には和室の客間と洋風のゲストルームがある。豪華なシャンデリアの下で、ロココ調のソファに向かい合って座る。
まるで絵画の中にでもいるようなその部屋は、来る客、来る客全てに恍惚の息をつかせてきた。
恐ろしいほどの美貌をもつ兄弟がこうして2人きりで向かい合っていることなど、もう何年も見ない光景であった。
「ねぇ、本当に同居しないの?」
周は、自ら淹れたコーヒーに口をつけてから言った。その言葉に先程面白がっていた周の姿を思い出し、律はギロリと下から睨みつける。味方が誰もいなくなった空間で、周はびくりと肩を揺らした。
「しないよ。第一、千愛希が望んでない」
表情は険しくとも、一応答えるつもりのある律に、ほんの少し息を漏らす。
「望んでたらするの?」
「自ら望まないでしょ。実家が近くにあっても一人暮らししてるような千愛希が、うちの家族と同居なんて」
「わかんないじゃん。あの明るさなら、うちでも全然違和感ないし」
「いつでもあのテンションでいるわけないだろ」
顔をしかめる律は、様々な千愛希の表情を思い出す。出会ったばかりの頃は、律も千愛希は自分の母親のように天真爛漫で明るい女性だと思っていた。まどかの前で発狂する姿もいつでも持ち合わせいるものだと思っていた。
しかし、1人のマンションで見せた寂しそうな表情も、まどかを避けたぎこちない微笑みも律は知っている。他人に気を遣わせまいと必死な千愛希が同居なんかしたらストレスで倒れるだろ、と気が気でない。
「ふーん。でも、律は家出るつもりないんでしょ?」
「こんな話は本意じゃないけど、おばあちゃんもそんなに長くはないと思うんだ」
「うん……数値あんまりよくなかったみたいだね。腎臓の」
「そうみたい。まだ透析するまでじゃないみたいだけど、認知症もかなり進行してきてるし、母さんだって今後もっと大変になると思うし。人手はあった方がいいんじゃない。俺も心配だし」
律は前かがみになって膝の上に腕を乗せて手を組むと、じっとコーヒーカップに沈む黒を見つめていた。
まるで絵画の中にでもいるようなその部屋は、来る客、来る客全てに恍惚の息をつかせてきた。
恐ろしいほどの美貌をもつ兄弟がこうして2人きりで向かい合っていることなど、もう何年も見ない光景であった。
「ねぇ、本当に同居しないの?」
周は、自ら淹れたコーヒーに口をつけてから言った。その言葉に先程面白がっていた周の姿を思い出し、律はギロリと下から睨みつける。味方が誰もいなくなった空間で、周はびくりと肩を揺らした。
「しないよ。第一、千愛希が望んでない」
表情は険しくとも、一応答えるつもりのある律に、ほんの少し息を漏らす。
「望んでたらするの?」
「自ら望まないでしょ。実家が近くにあっても一人暮らししてるような千愛希が、うちの家族と同居なんて」
「わかんないじゃん。あの明るさなら、うちでも全然違和感ないし」
「いつでもあのテンションでいるわけないだろ」
顔をしかめる律は、様々な千愛希の表情を思い出す。出会ったばかりの頃は、律も千愛希は自分の母親のように天真爛漫で明るい女性だと思っていた。まどかの前で発狂する姿もいつでも持ち合わせいるものだと思っていた。
しかし、1人のマンションで見せた寂しそうな表情も、まどかを避けたぎこちない微笑みも律は知っている。他人に気を遣わせまいと必死な千愛希が同居なんかしたらストレスで倒れるだろ、と気が気でない。
「ふーん。でも、律は家出るつもりないんでしょ?」
「こんな話は本意じゃないけど、おばあちゃんもそんなに長くはないと思うんだ」
「うん……数値あんまりよくなかったみたいだね。腎臓の」
「そうみたい。まだ透析するまでじゃないみたいだけど、認知症もかなり進行してきてるし、母さんだって今後もっと大変になると思うし。人手はあった方がいいんじゃない。俺も心配だし」
律は前かがみになって膝の上に腕を乗せて手を組むと、じっとコーヒーカップに沈む黒を見つめていた。
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