謀られ妻による綿密な復讐

雪村こはる

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自立と自律

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 朝先に起床した亜月は、想像した通りの状態に息をついた。わかってはいた。ただ、一昨日珍しくシャンプーボトルを戻したりしたから少しくらいやるんじゃないかと期待したのだ。

「期待した私がバカだったわ。自分で片付けなさいよね」

 亜月は、昨日と同じように自分だけ朝食を済ませて家を出た。亜月がドアを閉める音で目を覚ました奏士はのっそり起きてきて、放置されたカップラーメンの容器と、リビングに置かれたゲーム機を見て顔をしかめた。

「ふぁ……帰ってきてからやればいいか」

 そう呟いて、支度をする。昨日の失敗を考えて、買っておいた菓子パンを食べてから家を出た。

 今日はちゃんと寝癖を直してきた。それを見た隣の女性社員が「今日はバッチリですね」と笑う。

「ああ、うん。朝はバタバタするから忘れることもあるよ」

「全部自分でやるんですもんね? 偉いですよね。うちの旦那なんて何もやってくれませんよ」

 女性は不満そうだ。奏士は一瞬ドキリとした。しかし、笑顔を作って会話を続ける。

「俺は煩わしいのが嫌だから、自由にやってるだけだよ。お互いに自分のことは自分でやるって決めてれば好きにできるし」

「えー! 西川さんちっていいですね! お互いに自立してるって感じで! それなら奥さんも心置きなく働けるし、助かると思いますよ」

 褒めることを諦めた亜月に代わり、こちらは奏士をベタ褒めである。

「いやぁ、そんなことないよ。大人なんだからさぁ、自分のことは自分でやるのは当たり前っていうか」

 満更でもない奏士は、だらしのない顔をしてそう言った。昨日の夕食は自分でなんとかしたし、帰ったらゴミも片付けるし嘘ではない。

 妻に面倒みてもらっている男だと思われているのも癪だと思った。

「西川さんみたいな旦那さんっていいなぁ。うちの夫も見習ってほしい」

「はは。なんか照れるな。うちはそんなふうに褒めてくれないからさ」

「きっと奥さんも感謝してると思いますよ。私だったら嬉しいですもん」

 ……そうだよな。亜月の負担が減るんだから感謝してくれてもいいよな。

 奏士は、心の中で彼女の言葉に賛同した。
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