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謀られた妻
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このまま決行するつもりなのかも。そう考えた亜月も、散々証拠を見た後でも、どこかでまだ疑っている自分がいた。これが夢ならいいのにと現実を受け入れたくない自分がいた。
しかし、聞き慣れないホテルの名前だったとしても亜月にはそこがラブホテルであるという確証が持てた。奏士はこのまま自分と遥をホテルに連れ込むつもりなのだと息を飲んだ。
車はゆっくりを動き出し、タイヤが弾む感覚と砂利を踏む音が亜月の耳を刺激する。亜月はこっそり薄目を開けて、外の様子を窺った。あまり走ったことのない道だった。
けれど、暫く走った後にラブホテルのネオンが見える。そこで亜月は「うーん」と言いながら体を起こす。
「奏士? もう着くの?」
助手席に座っている奏士に、亜月は後ろから覗き込むように背もたれを掴んで顔を近づけた。
「あ、亜月⁉ 目ぇ覚めたの⁉」
奏士はぎょっとして勢いよく後部座席を振り返った。遥はぐったりと背もたれに背をあずけて、今にもずり落ちそうなほど足を前に投げ出している。対して亜月とはバッチリ目が合ってしまい、奏士は口から心臓が飛び出そうなほど跳びあがった。
「うん……トイレ行きたい」
「あ、ああ。トイレねっ! コンビニ寄ってもらうか」
奏士が慌てたようにそう言うと、運転手は落ち着いたトーンで「もうすぐそこですよ?」と言った。
ばっかやろ……! ホテルに着いたってバレたらどうすんだよ!
奏士は思わず運転手に怒鳴りそうになる。
「いや……もう1人連れて行かなきゃで時間かかるんで先にコンビニ寄って下さい……」
「コンビニに行く方が遠いですけど……」
「いいですから!」
食い気味の奏士に、さすがの運転手も何か察したようだった。
「もうすぐ着くなら我慢できるよ?」
亜月が何食わぬ顔で言うと、奏士は「青山さん起こすの手伝ってほしいからコンビニで済ませてきて」と引きつった笑顔を見せた。
しかし、聞き慣れないホテルの名前だったとしても亜月にはそこがラブホテルであるという確証が持てた。奏士はこのまま自分と遥をホテルに連れ込むつもりなのだと息を飲んだ。
車はゆっくりを動き出し、タイヤが弾む感覚と砂利を踏む音が亜月の耳を刺激する。亜月はこっそり薄目を開けて、外の様子を窺った。あまり走ったことのない道だった。
けれど、暫く走った後にラブホテルのネオンが見える。そこで亜月は「うーん」と言いながら体を起こす。
「奏士? もう着くの?」
助手席に座っている奏士に、亜月は後ろから覗き込むように背もたれを掴んで顔を近づけた。
「あ、亜月⁉ 目ぇ覚めたの⁉」
奏士はぎょっとして勢いよく後部座席を振り返った。遥はぐったりと背もたれに背をあずけて、今にもずり落ちそうなほど足を前に投げ出している。対して亜月とはバッチリ目が合ってしまい、奏士は口から心臓が飛び出そうなほど跳びあがった。
「うん……トイレ行きたい」
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ばっかやろ……! ホテルに着いたってバレたらどうすんだよ!
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