【完結:R15】蒼色の一振り

雪村こはる

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赤髪の少女【31】

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 障子の手前から声をかけた澪は、すぐに開かれた隔たりに目を丸くした。

「澪……。答えは決まったのか?」

 中から顔を出した空穏は、どちらの返事をするのかと不安そうに眉を下げた。

「うん。明日、空穏と一緒に洸烈郷へ行くよ」

「ほ、本当か!?」

「うん。統主様は……」

「ああ、問題ない。俺が管理するなら好きにしろってさ」

「か、管理って……」

 澪が顔を歪めれば、「そりゃ、一応敵郷から来るわけだから警戒しないわけにもいかないだろ」と空穏は肩を竦めた。

「そうだね……。残りの刀、どこにあるかわかる?」

「万浬と葉月と華……って、お前それ」

 空穏は澪の腰元に差された華月の存在を見て、息を飲んだ。

「華月は歩澄様が持ってたの」

「……それで、ここに留まったのか」

「う、うん……」

 詳しい事情は言えないが、空穏が都合よく解釈してくれているため、澪はそのまま頷いた。

「そうか。恐らくだが、やはり高値で取引するなら統主のところだと俺は思う」

「じゃあ……」

「ああ。栄泰郷と翠穣郷の統主が其々持っているだろうな」

「統主かぁ……」

 澪は頭を抱えた。直接統主と会うのは至難の業である。空穏が協力的であっても大きな壁がそこにはあった。

「そんな顔をするな。俺は煌明様の重臣だ。此度のように他郷統主の元へ一緒に訪れることもある。遣いに頼まれることもあるしな」

「そ、それじゃあ……」

「ああ。俺が掛け合ってやる。俺といればいくらでも機会はあるんだ」

「空穏……」

 空穏が頼もしく見えた。今まではどこに散らばってしまったかもわからない刀の行方を探すことを目的にしていた。しかし、空穏と共に行くことで刀の存在はぐっと近付いた気がした。

「明日、黎明にはここを出る。支度をしておいてくれ」

「わかった」

 空穏との会話もそこそこに、澪は自室へと続く廊下を歩いていた。そこへバタバタと足音を立て、瑛梓と梓月が前方から走ってきた。


「澪!」

 梓月が大声で名前を呼ぶが、澪は平然とした様子で「お勤めお疲れ様です」と言った。
 息を切らしている二人はいったいどこから走ってきたのやらと、遠くの方へ目を向けた。

「洸烈郷に行くと言うのは本当なのか!?」

 梓月は澪の両肩を掴んで軽く揺さぶった。

「わっ。ほ、本当だよ。明日の黎明にはここを出ていく。お二人には本当にお世話になりました」

 澪はその場で深く頭を下げた。

「刀を取り返しに行くのか?」

 瑛梓も声は落ち着いてはいるが、額に汗を滲ませ急いで澪の元へ来た様子が伺えた。
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