237 / 275
楽しいお茶会……?【9】
しおりを挟む
澪が木箱を開ける。すると、すぐにキラキラと輝く首飾りが顔を出した。紬や朱々が持つどんな装飾品よりも高価で良質なものである。
鮮やかな碧と八方に光を放つ透明の石。眩しい程の光は、角度を変えるだけで零れ落ちるかのように煌めく。まるで真冬の夜空に散らばる星のようだった。
紬と朱々は思わず唾を飲み込む。食い入るように前のめりになってそれを見つめた。
「これと同じものを隣国の王妃様が着けておられます」
澪がそう言うと、皆がはっと顔を上げる。
「王妃様にこそ相応しい、潤銘郷で最も高価な装飾品です」
「こここここれを……王妃が……」
装飾品には目がない朱々は、固唾を飲んで更に前に出た。紬は恍惚の表情を浮かべ、すっかり首飾りの虜である。
「はい。これ一つで多くの村を復興させることができます。然れど、民よりも側室よりも、普段心の支えとなって下さっている奥方樣にどうしても贈りたいとおっしゃっていたのです」
とうとう首飾りの目の前にまで顔を寄せた紬と朱々の後ろで、皇成と煌明はぶんぶんと首を左右に振っている。
「美しいとは思いませんか? 潤銘郷一、いや遡雅ノ國一高価な首飾りです。このように華美な装飾は、麗しい正室のお二人にこそ相応しいと私も思うのです」
「た、確かに美しいです……。このように大きな碧空石は初めて見ました」
紬は口を開けっ放しにし、首飾りから目を逸らせずにそう言った。
「せ、正室にだけ特別な……」
先程までの憤りなど忘れてしまったかのように、興味は首飾りに移行した朱々。
「此度の側室の件、八雲様も甲斐様も正室のお二人には寂しい思いをさせて申し訳ないとお心を痛めておいでです。ならばせめて、正室として特別であるという証を贈ろうとのことでした。
統主としては、本来民の幸せを願う立場。しかし、そんな民よりも側室よりもお二人への愛情の方が深いのです」
澪の言葉に、二人は大きく瞳を揺らした。
「紬様、朱々様いかがでしょうか。お二人の旦那様はこんなにもお二人を想っていらっしゃるのですよ。いくら側室を娶ろうとも、正室として揺るぎない愛情を得られるのはお二人だけなのです。羨ましいです。よろしければもっとお近くでどうぞ。と言ってもすぐにお二人の元へ行くことになりますが」
澪が木箱をすっと前に出すと、直ぐ様それを手前に引き寄せる紬。朱々と二人並んで、自然に零れ落ちる吐息。
二人の瞳に反射する首飾りを見て澪は続けた。
「私が聞いたことは事実だと思っておりました。しかし実際のところ、お二人が側室の存在をお許しになれないということでしたらこちらはお譲りすることはできません。
だってこれは偉大なる王妃様と同じ首飾り。寛大で聡明で麗しい正室のみが相応しいと私も思うのです。御統主様方よりこのお話をいただいた時、素晴らしいお二人にはとてもお似合いだと思ったのですが……本当のところはどうなのでしょう」
澪は確信に迫る。皇成と煌明は止めろと目で訴える。しかし、二人には紬と朱々をこの場で納得させる言い訳など見つかる筈がなかった。
鮮やかな碧と八方に光を放つ透明の石。眩しい程の光は、角度を変えるだけで零れ落ちるかのように煌めく。まるで真冬の夜空に散らばる星のようだった。
紬と朱々は思わず唾を飲み込む。食い入るように前のめりになってそれを見つめた。
「これと同じものを隣国の王妃様が着けておられます」
澪がそう言うと、皆がはっと顔を上げる。
「王妃様にこそ相応しい、潤銘郷で最も高価な装飾品です」
「こここここれを……王妃が……」
装飾品には目がない朱々は、固唾を飲んで更に前に出た。紬は恍惚の表情を浮かべ、すっかり首飾りの虜である。
「はい。これ一つで多くの村を復興させることができます。然れど、民よりも側室よりも、普段心の支えとなって下さっている奥方樣にどうしても贈りたいとおっしゃっていたのです」
とうとう首飾りの目の前にまで顔を寄せた紬と朱々の後ろで、皇成と煌明はぶんぶんと首を左右に振っている。
「美しいとは思いませんか? 潤銘郷一、いや遡雅ノ國一高価な首飾りです。このように華美な装飾は、麗しい正室のお二人にこそ相応しいと私も思うのです」
「た、確かに美しいです……。このように大きな碧空石は初めて見ました」
紬は口を開けっ放しにし、首飾りから目を逸らせずにそう言った。
「せ、正室にだけ特別な……」
先程までの憤りなど忘れてしまったかのように、興味は首飾りに移行した朱々。
「此度の側室の件、八雲様も甲斐様も正室のお二人には寂しい思いをさせて申し訳ないとお心を痛めておいでです。ならばせめて、正室として特別であるという証を贈ろうとのことでした。
統主としては、本来民の幸せを願う立場。しかし、そんな民よりも側室よりもお二人への愛情の方が深いのです」
澪の言葉に、二人は大きく瞳を揺らした。
「紬様、朱々様いかがでしょうか。お二人の旦那様はこんなにもお二人を想っていらっしゃるのですよ。いくら側室を娶ろうとも、正室として揺るぎない愛情を得られるのはお二人だけなのです。羨ましいです。よろしければもっとお近くでどうぞ。と言ってもすぐにお二人の元へ行くことになりますが」
澪が木箱をすっと前に出すと、直ぐ様それを手前に引き寄せる紬。朱々と二人並んで、自然に零れ落ちる吐息。
二人の瞳に反射する首飾りを見て澪は続けた。
「私が聞いたことは事実だと思っておりました。しかし実際のところ、お二人が側室の存在をお許しになれないということでしたらこちらはお譲りすることはできません。
だってこれは偉大なる王妃様と同じ首飾り。寛大で聡明で麗しい正室のみが相応しいと私も思うのです。御統主様方よりこのお話をいただいた時、素晴らしいお二人にはとてもお似合いだと思ったのですが……本当のところはどうなのでしょう」
澪は確信に迫る。皇成と煌明は止めろと目で訴える。しかし、二人には紬と朱々をこの場で納得させる言い訳など見つかる筈がなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる