したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

文字の大きさ
5 / 243
将来の夢

04

しおりを挟む
「依なら千景の夢を応援してくれると思うけどな」

 この頃はまだ依と付き合っていたわけではなかったが、たまたま席が隣になって仲良くなったことから依とはよく会話をしていた。赤点を取った依に亜純が勉強を教えてやったこともあった。
 そんなことがきっかけで、亜純も自然と千景と仲良くなったのだ。

「まあ……最終的にはね。でも、絶対に余計な一言があると思うんだ」

「それはあるだろうね」

「ほらね」

「でも、私は応援するよ。私、絶対保育士になるからさ、いつか園児たちに千景の書いた絵本を読んであげたい」

「うわ……壮大な夢を」

 千景はとても嫌そうに顔を歪めた。本来、誰にも言うつもりのなかったことだ。物語だっていくつか考えてみたが、とても人様に見せられるものではないと思った。

「やってみなくちゃわからないじゃない。それに、絵本作家になりたいってことは、千景も子供が好きなんでしょ?」

「まあ、うん。俺、10個離れた姉さんがいてさ。姪っ子が可愛くて。休みの日は俺が絵本読んだりするの」

「そうなんだ! 私も妹と9個離れてるの。おむつは小学生だった私が変えたわ」

 自慢気に言う亜純に、千景はクスクスと笑った。境遇が似た2人は同志のようで、将来の夢について熱く語ったものだ。そんな2人がお互いに夢を叶え、今では千景の作った絵本を亜純が園児たちに読み聞かせている。
 亜純は、千景の声を聞くたびに感慨深いものを感じた。

「懐かしいね。あの時亜純に絵を見られてなかったら、多分絵本作家にはなってなかったかな」

「えー、結局依にバレちゃって皆に応援されてたじゃん」

「思い出したくない……」

 千景は、大声で絵本作家への夢をどうして俺に言わなかったのかと詰め寄る依の顔を思い出して声のトーンを下げた。教室で盛り上がっている亜純と千景をたまたま見つけたクラスメイトが、2人が付き合ってのではないかと噂を立てたことで依の耳に入ったのだ。

「昔からちょっと無神経なところあったからね」

「ね。でもまあ、あの時はもう依が亜純のことを好きだったから勝手に嫉妬して責めてきたんだけどね」

「え⁉ そうだったの⁉」

 イラストのやり取りをしたのは高校2年の夏のこと。そして依が亜純に告白をしたのは3年の冬だ。それも卒業間近になって。だからそんなに前から自分に好意を抱いていたとは思わないし、亜純自身も初耳だった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...