したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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将来の夢

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 よく聞けば毎日の朝食も弁当も自分で作っているという。遅くまで遊び歩いて、時には母親が作った食事に手をつけないこともある自分とは大違いだと思った。

「へぇ。苦労人なんだな」

「苦労? なんで? 別に家族と自分のためにしてることだから苦労でもないけど」

 平然とそう言ってのける亜純は逞しくて眩しく見えた。クラスの人気者でもないし、男子たちから人気があるわけでもない。優れた能力があって表彰されるわけでもないし、学年トップを誇るほどの学力があるわけでもない。

 地味ではないが、決して目立ちはしない。クラスにいても「いたんだ」と言われるくらいの存在だ。容姿も普通。
 普通の人間なんてつまらない。そう依は思っていたはずなのに、依に関心もなければ他人にも興味がなさそうな亜純に興味がわいた。

「うわー……。隣久保かぁ」

 そう言って落ち込んでいるクラスの男子を見つけた。その日は席替えの日で、依の隣を狙った女子たちが担任教師に席替えを訴えかけてようやく決行された日だったのだ。

「久保嫌なの?」

 依に話しかけられた男子生徒は残念そうな顔をした。

「別に。可もなく不可もなくって感じかな。別に嫌いじゃないけど嬉しくはない」

「じゃあ、俺のと交換する?」

 そう言って依が差し出した場所は、学年1可愛いと評判だった真白の隣だった。それを見た途端、男子生徒の目の色が変わった。

「え!? いいの!?」

「いいよ。俺、久保好きだし」

「……へ?」

「授業中話しかけられると怒られるの俺なんだもん」

 おどけてみせた依に納得した男子生徒は苦笑したが、依は亜純の隣を奪い取った優越感に浸った。

 単なる興味本位だったのだ。別に好きだとか嫌いだとかじゃない。性欲の対象でもなかった。それなのに、なぜか授業中はチラリと亜純を盗み見した。
 今までは隣から痛いほどの視線を感じることが多かったのに、今はそれがない。快適な反面気になった。

 だから授業には集中できず、成績が伸びることはなかった。しかし、依の成績がよくないのは昔からだ。両隣の女子に妨害されて、授業どころじゃない。家で勉強など当然するわけもなく、テスト前日になんとか頭に叩き込んでギリギリ赤点を免れるレベルだった。
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