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将来の夢

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 千景は寡黙な王子様だと思われがちだが、依と一緒にいればよく笑うし部活がなければスポーツへの参加もしてくれる。
 自分の意思をしっかりと持っていて、昔から妙に大人ぽく見えた。

 そんな千景と亜純が楽しそうにしている姿を見て嫉妬をした。思えばそれが初めての嫉妬だったかもしれない。
 自分には見せない笑顔を千景には見せる。2人は穏やかで柔らかい雰囲気だ。なんとなくお似合いに見えて、依は腹の底で黒い何かが蠢くほど悔しかった。

「なぁ……千景って久保のこと好きなの?」

 よく3人で話すようになった頃、依はそう尋ねた。

「久保? いいや? 好きになるほど関わりないし」

 不思議そうな顔で首を傾げたから、依はなんとか憤りを抑えられた。

「俺、ちょっと久保のこと気になってる。だから絶対手ぇ出すなよ」

 先にそう釘を刺しておいた。恋愛の相談を誰かにしたことなどなかった。誰を好きで誰と付き合ってだなんて興味もなかった。
 ただ、千景だけは脅威に感じてまだ自分自身もちゃんと亜純のことを好きだと認識する前から牽制をした。

「依が? 意外だ……。今までの子とタイプが違う」

「い、今までとはちょっと違うんだよ!」

「ふーん。ようやく本気になったってこと?」

「本気とか……わかんねぇけど、とりあえず今は気になるっつーか。だからっ! 久保からもし告られたりしてもっ」

「断れってことね。ないと思うけどなぁ。彼女、忙しそうだし。恋愛どころじゃないって感じがする」

 千景は分析力に長けていて、いつでも冷静だった。千景が言ったとおり、亜純は妹と自分の将来の夢のために必死で恋愛になどまるで興味がない様子だった。
 依にとってはそんなところも好印象だった。恋愛で頭がいっぱいの女子たちとは違って、真面目だったから。

 依は散々自分が遊んできたにも関わらず、簡単に付き合える女性にも、複数の男性を視野に入れている女性にも興味がなくなってしまった。
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