したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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将来の夢

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 亜純と付き合って結婚までできた依は幸せだった。亜純は変わらず自分だけを恋愛対象の異性として接してくれる。
 休みの日はどこかへ出かけたり、家でのんびり過ごしたり。その間も手を繋いでショッピングをしたり、ベッタリと亜純にくっついていたり。

 亜純といると安心した。依にとって癒しであり、回復剤でもあった。仕事で嫌なことがあったり人間関係でトラブルがあっても、亜純と話していれば元気になれた。
 優しくて穏やかで、子供のように甘えても全て受け入れてくれる亜純が大好きだったのだ。

「私、そろそろ子供が欲しい」

 亜純がそう言った時、依はいよいよ自分も父親になるのか……と考えた。亜純にとって愛を確かめ合い、子供を作る為のセックスだったが、依にとっては亜純と愛し合う為だけのセックスだった。
 それが依にとっても子供を作るための行為に変わる。そう思った時、依は少しだけモヤモヤとした。

 依の周りには先に彼女が妊娠して結婚した友人もチラホラといた。母親になったら女としての魅力がなくなるだの、邪魔者扱いされるなどと散々聞かされた。
 遂には母から「妊娠したら10月10日もお腹の中にいるんだから亜純ちゃんを労わってあげなさいよ」なんて言われた。

 高校時代から付き合い始め、その頃から母には亜純を紹介していた。それも結婚を固める、つまりは外堀を埋める行為にすぎなかったが。
 だからか依の母は本当の娘のように亜純を可愛がっていた。

 2人の結婚を喜んでくれたし、早く孫の顔が見たいと言った。しかし依は、母が言った言葉がずっと引っかかっていた。

『妊娠したら10月10日もお腹の中にいる』その言葉が。

 自分だってずっと亜純と一緒にいたいのに、子供は夫である自分よりも長い時間亜純と過ごすのだ。それも亜純の胎内で。
 亜純と初めて繋がれた時は幸福感でいっぱいで、このまま常に1つになったままならいいのにと思った。
 苗字も家も戸籍も同じになっても用紙1枚で他人に戻れる関係だなんて辛かった。

 子供ができたら亜純はきっと子供ばかりに関心がいく。今まで独り占めしてきたのに、子供に取られてしまうような気がした。

「……え? それなら子供なんかいらないくない?」

 依は1人ポツリと呟いた。
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