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夫婦のかたち

02

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 電話を切って暫くしてから沸々と依への怒りが込み上げた。亜純のことをこんなに好きなのは俺だけだ。幸せにしてやれるも俺だけだと散々豪語していにもかかわらず、5年間も亜純を騙していたのだ。
 高校時代から亜純の子供好きを知っていながら。

 依が子供を欲しがらない理由は亜純と2人でいたいからだと聞いたが、千景にはとても理解できなかった。
 亜純が嬉しそうにしていたら自分のことのように嬉しいし、亜純が困っていたら手を差し伸べてあげたいと思う。千景はそう思っていても、その役目は俺じゃないしといつも素知らぬ顔をしてきた。
 依がその全てを叶えてきたからだ。それで亜純も満足そうだったからだ。けれど、亜純の1番の夢だった自分の子供を授かることだけ依は叶えてやらなかった。それも自分の欲のためにだ。

 更に子供はいらないが避妊してセックスはしたいと亜純に言ったと言う。よくもそんなことが言えたものだと胸焼けすらした。
 依にパイプカットを勧めたら喜んでしそうだと千景は思った。依が亜純に相談もなしにパイプカットをしなかったのは、まだ子作りはできるという保険を残すためだろう。

 子供ができない体だと知った時、亜純から別れを切り出される可能性もあるからだ。パイプカットの事実は伏せ、生まれつきの不妊を偽っても理解して寄り添ってくれる確証はない。
 だから1年間セックスレスで誤魔化し続けた。そんな保身のために亜純を不安にさせ、苦しめたのだ。表面上ではいい夫を演じながら。

 同じように正社員として労働しているのだから、家事を半分ずつにすることなど当然だ。それなのに亜純は、ありがたいことだと言う。
 一人暮らしの男は全ての家事を自分でこなすのだ。千景だってそうだった。それなのに結婚した途端妻だけの負担になるのはそもそもおかしい。
 亜純はそんな当然のことにも気付いていない。いや、世の中がそんな風潮だから悪いのだ。

 このままでは亜純ばかりが我慢を強いられ、依の思うがままの人生になってしまうのではないかと千景は震えた亜純の声を思い出していた。
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