したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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それぞれの生活

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 今日は悠生の運転だから、亜純もアルコールは遠慮した。悠生は飲んでも構わないと言ったが、飲めないと残念だと思うほど酒好きなわけでもなく、同じテンションで楽しみたかったから断ったのだ。

 食事のあとはやっぱり亜純が想像していた通り、車で高い山まで登って一望できる夜景を眺めた。
 空気が澄んだ山の上は肌寒く、2人で外へ出たもののすぐに車内に戻ってきた。

「寒い寒い」

 そう言いながら亜純がきゃきゃっと笑うと、運転席に戻った悠生が「体冷えてない?」と尋ねて亜純の手を握った。

 あ……。
 亜純は心の中でポロッと声を出しながら、ほわっと熱に包まれた右手の感触に集中した。

「もう冷たくなっちゃったね」

 ギュッと握られて、亜純の心臓は口から飛び出そうなほど大きく脈打った。依と手を繋いでデートすることだって当たり前だったのに、依以外の男性に触れるのは初めてでこんな感覚は久しくなかったと顔を赤らめる。

「そっちの手も貸して」

 亜純は言われるがまま左手を差し出す。既に握られていた右手はホカホカと温かくなり、左手には熱いくらいの熱を感じた。
 そうして悠生に温められた手はジンジンするほど。激しい鼓動が悠生に聞こえてしまわないかと心配しつつ、亜純はその余韻に浸った。

「ちっちゃい手だね。可愛い」

 そんなことを言われたら急に恥ずかしくなる。依以外の男性に可愛いだなんて言われたことがない。
 男の人に褒めてもらえるって嬉しいんだ……。と胸の中がキュンと疼いた。

「急に手握ってごめんね。嫌じゃなかった?」

 そう聞かれて必死に首を左右に振った。むしろその心遣いが嬉しかった。この人は私の嫌がることはしない人だ。そう頭の中で認識した。

 暫く車内から夜景を見つめ、静かな空間を過ごす。月明かりで照らされる中、悠生はじっと亜純を見つめた。
 熱い視線を感じた亜純は、その視線を捕らえることができずにあからさまに逸らす。それでもまだ視線を感じてチラリと見れば、真剣な表情の悠生にドキリとした。

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