したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

文字の大きさ
190 / 243
愛情は感じるもの

15

しおりを挟む
「脅したってなんだよ。単なる痴話喧嘩だろ? そんなの警察は相手にしないよ」

 悠生は大きなため息をつく。正直、被害届を出されたら困る。警察で事情聴取をされるだろうし、亜純に優位に立たれるのも胸糞悪い。
 何とか亜純の気を鎮めてさっさと関係を絶った方がいい気がした。

「それでも行くよ」

「……悪かったよ。俺だって自分が疑われて気分が悪かったんだ。顔の治療費も払うし」

「そういう問題じゃない」

「じゃあ、別れてもう二度と近づかないって約束するよ。付き合ってる間の喧嘩じゃん」

「喧嘩……」

 亜純はふむ……っと考えた。それから「じゃあ、被害届は出さないから帰りは送ってってくれる?」と言った。
 悠生は一瞬驚いたがすぐにふっと頬を緩めて「まあ、いいよ。今日は最初から送り届けるつもりだったし」と返す。

 悠生はやけにすんなり言うことを聞いたなと思ったが、考えてみればここから亜純の家まで距離がある。タクシーも夜間料金となるだろう。亜純の財布の中に1万円札は1枚しかなかった。先程会計を済ませたため、金が足りないんじゃないかと思った。

 亜純は軽く頷き、悠生の車に乗り込んだ。今度はまた刺激しないように、攻撃的な言葉を避ける。

「さっきの、信じていいんだよね? 別れてもう二度と近付かないって」

「うん。その代わり、亜純ちゃんも被害届出すとかやめてよ」

「……わかった」

 軽く会話をしながら車は進む。15分程走ったところで亜純が口を開いた。

「喉乾いたからコンビニ寄って欲しい」

 悠生は顔を顰める。「は? 家まで我慢すれば?」そう言いかけたが、音声が亜純の手元にある以上、下手なこともできない。
 どうせその音声を持っていったとこで、悠生のことなどほとんど知らない亜純が訴えることは困難だ。
 この場をやり過ごせば面倒事からは逃れられる。そう思いながら、苛立ちを抑えてコンビニへ向かった。

「はい。着いたよ」

 エンジンを止めた悠生が亜純の方を向く。亜純は悠生の顔をじっと見つめて「この顔じゃコンビニに入れないからお水とティッシュを買ってきて。そのくらいいいでしょ」と冷静に訴えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

継承される情熱 還暦蜜の符合

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...