したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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愛情は感じるもの

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 亜純は周りの音に警戒しながら早足で歩いた。それからすぐ傍のアパートへ入り、階段を登った。
 当然そこに自分の部屋はない。3階建てのアパートの3階まで上がりそっと身を屈めた。建物へ入ったところを見られたのなら、どこの部屋か特定するために窓が見える裏側まで回るだろう。
 見失ったのなら、暫く近所をうろつくはずだ。どちらにせよ、少しの間じっとしているのが得策だと思えた。

 亜純は隅っこにちょこんと座って15分ほど時間を潰した。タイミングを誤ればバッタリ遭遇してしまう危険もある。
 ここは慎重に。そう思いながらメッセージを確認する。悠生からのメッセージは数件届いていたが、しつこいほどの着信などはなかった。

 このまま亜純が被害届も出さずにもう関わりたくないからと離れてくれるのならば、それはそれで悠生にとっても都合がいい。
 最初からなんの関係もなかったかのように終わりを告げられれば、そのまま逃げることもできる。

 悠生もそれが可能ならばそれ以上深追いする方が不安と恐怖を煽り、警察へ行こうとするだろうと考えるはず。
 亜純はそう思い、あえてメッセージは開かずにそのままにしておいた。そしてこっそり建物から抜け出してまた歩き始めた。

 亜純は、スマホを点灯させることもしなかった。光が目印になって自分の姿を捕えられてしまうのもまずい。
 なるべく闇に溶け込んだまま家路を急ごう。そう思ったところに車のヘッドライトを見た。

 亜純は動きを止めて、唇を震わせた。もしも悠生だったら終わりだ。このまま攫われてもっと酷い目に遭わされたらどうしよう。
 家の場所を特定されなくても、監禁でもされたらもっと状況は悪化する。

 そう怯えながらまた歩き出す。

 止まったらダメだ。怪しまれちゃう。普通の通行人の振りをして何気ない顔で歩いていれば、気付かれないかもしれない。
 髪型や服装で亜純だと容易に特定できるが、亜純は暗闇のメリットを信じたかった。
 
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