29 / 52
第四章 予想外の使者。
我が道を遮ることなかれ。
しおりを挟む
オサカの街の一番奥にある城の城門。そこで槍を持った兵士二名が門番として立っていたが談笑していた。
どちらも昨日どこの風俗店でどんな女を楽しんだかで語り合っていたが一人が気づく。
まだ遠くだが二人の人間がこちらへと歩いてきていることに。
「なあ、今日来客の予定あったか?」
「いや、夜会はあると聞いたがこの時間に予定はないぞ。」
予定の確認をしてから兵士は目を細めて近づいてくる相手を注視する。片方は黒い甲冑の男でもう片方は黒髪が似合う騎士っぽい女性、しかも顔も身体も美人だ。
格好からしてもしかしたらどこかの使者かもしれないと判断した門番は先ほどの談笑からキリッと直立して待つ。
オークション会場を迂回して真っ直ぐ城を目指して進んでみたがどうやら検問もなく城門まで来れた。
門の前に兵士が二人しかいないので難なく突破出来そうだ。
だが普通に突破するつもりはない。
この町が人間にとって近づきたくないようにしっかりと恐怖の色に染めてやるとしよう。
「ゾドラよ。スキルでこの城から人間を出さないように出来るか?」
「お任せを。鼠一匹逃がさないようにしてみせましょう。」
返事をしてからゾドラの姿が消える。門番にはそう見えただろうが実際は城の頂点まで飛び上がったのである。
さて我もド派手に決めてやるとしよう。それが開戦の合図としてゾドラに伝わることになるからな。さらには敵に与える印象も決まることになろう。
向こうからすいませーんと声を掛けながら歩いてくる兵士を前に大きく深呼吸をしてから盾を元の大盾に戻せば左足を軽く引いて盾を前にした半身の態勢を取ると魔力を高める。足元から黒い雷光が走るのを見てまさかと思った兵士が停止を呼び掛けるのを無視して我は前に出た。
「【漆黒の突撃】!」
ダンッ!と地面にくっきりと足形を残してから我は門に向かって突っ込んだ。
それはまさにロケットの如く直撃すれば木と鉄を組み合わせた門は丸々内側へとぶっ飛んでいった。
さらに勢いは止まらず先にあった噴水を粉砕し城の玄関である扉も破壊して中に入ってみせた。
当然我の直線上にいた兵士二名はもうこの世から消えているので警笛すら鳴らされずに我はあっという間に城内に入ってみせた。
「…黒き炎よ、触れれば灰塵と帰す炎よ。我が敵を囲め!【黒炎陣】!」
開戦の合図を聞いて空にゾドラが唱えて両手を前に出せば赤黒い魔方陣が生まれ城壁全体へと拡大すれば魔方陣の外周に沿って地面に向けて赤黒い炎が雨のように降って地面に落ちれば燃え上がり炎の壁を作ってみせるのを感知した。
これで空でも飛ばない限り城にいる者は逃げられなくなったことになる。
「な、何事だ!?」
「侵入者だ!扉を破ってきたぞぉ!」
突然の襲撃に従者達が逃げ惑う中を我は上に続く階段を探して顔を動かす、という余裕を見せてやればすぐにガシャガシャと鎧が動く音が聞こえて数十名の兵士が姿を見せる。
「貴様何者だ!ここは太陽の街オサカの支配者ドックヤー様の城だぞ!」
兵士達の最後尾で隊長らしい男が聞いてきたので腰に手を当てて言ってやった。
「ならばそのドックヤーとやらに伝えよ。今日からお前に代わって我が支配者となる、とな。」
堂々と宣戦布告してやれば隊長の号令で兵士達が一斉にこちらへ向かって突っ込んできた。
雑兵ごときに時間を取られたくないので我は速攻で終わらせよう右手に魔力を集める。再び黒い雷を纏わせ魔力が充填されたのを確認すれば右手を振り上げて使った。
「【漆黒の地走雷】!」
スキルを口に出して右手で床を殴れば前方に扇状へと亀裂と黒い雷が走り突っ込んでくる兵士達をまとめて感電させ倒していく。【漆黒の地走雷】は対地用に作ったスキルでものの一分経つか経たない時間で今突っ込んできた四十名ほどの兵士を討ち取ってみせる。向こうにとっては一人に負けたことが信じられないという表情になっているのを前に我は階段に向けて歩き出しながら元の姿に戻って言ってやった。
「我が道を遮るならば、誰であろうと虚無の死を与えよう。」
威圧の意味で闇属性の気を視認させてやるも今度は後からきた魔法部隊による攻撃が始まる。
階段の上からチマチマと初級から中級までの魔法を降らせてくるが我が【漆黒の障壁】の前には霧雨程度に過ぎない。というより恐らくだが連中は先に知った簡易魔法装備で攻撃しているようだ。
魔法とは使う者の魔力によって威力が変わるというのが半世紀前の一説ではあったがあの道具のせいで忘れられているのかもしれないほど飛んでくる魔法はまさに必要最低限の威力しかない。
しかしこうも飛ばされては五月蝿く思えてきた。
(面倒だ。階段ごと倒そう。)
そう思って両手を握り拳を作れば後ろに引いて魔力を集める。すると後ろに大量の風属性の魔方陣が展開されれば一息に拳を突き出した。
「【漆黒の空拳】!」
スキルを発動させれば魔方陣から空気の弾もとい我が使うと空気の拳が発射されて階段ごと兵隊を倒してみせた。
そこでゾドラから通信が入る。包囲網を敷いたので次の指示を求めてのことであった。
(ならばゾドラよ。庭にいる兵士を倒した後で一階と地下室へ向かえ。)
(地下室に?)
(うむ、ここまで立派なら牢屋ぐらいあるだろう。捕まっている者がいるならば解放して武器を持たせよ。そいつらにも街の制圧に付き合わせてやる。我はこのまま上に向かう。)
指示を出して通信を切れば宙に浮いて崩れた階段の瓦礫に挟まって動けなくなっている隊長格に近づく。圧倒的な力に恐怖している相手にドックヤーは何処にいるか尋ねると最上階の四階にある部屋にいると正直に言ってくれた。
「感謝する。ではさらばだ。」
情報を得たのでそのまま四階に向けて上昇を始めようとした時に相手が小声で悪魔かと呟いたのが聞こえた。
残念だが悪魔族ではないし最後の悪態に対してここは悪役として言い返してやろう。
「いいや、我は大魔将軍である。」
一言そう告げてから指を鳴らして風属性魔方陣を一つ下に展開させればすぐに爆発音が聞こえ我は上昇気流に乗って上を目指した。
二階と三階からの攻撃をスキルで無視して通り過ぎ最上階へと降り立てば少し立派な装備の盾持ち兵士と魔法使いが最奥の扉を守るように陣を作っていた。
「なっ!?あれだけの防衛を全て突破したというのか!?しかも一人だと!」
しっかりした甲冑を身につけた男が我を見て驚く。場所と身なりからして大将なのかもしれないが内心ほくそ笑んでしまう。昔もこうやって軍人共の予想外という顔を散々見てきたからな。
ともあれドックヤーが我の目的なのでここは勧告してやるとしよう。
「先に言っておく。全員降伏するのであれば命は取らない。大人しく道を開けよ!」
最後を強めに言って闇属性の気を発してみせれば何人かが気圧されそうになったのが確認できた。
「怯むな!敵は一人だ!一斉に攻撃しろぉ!」
大将の掛け声で盾持ちは横一列に固め後ろから魔法使い部隊が先ほどやり合った者達よりもちゃんとした魔法を放ってきた。
と言っても全て中の上な魔法ばかりでは結局我が【漆黒の障壁】に阻まれて届きはしない中で我はわざと歩いて前に進む。
向こうにとっては全く当たってないことがさぞ恐怖となっていることだろう。しかし半分ほど距離を詰めてみた時に向こうが奥の手を出してきた。
どうやら奥の方で合属魔法を用意していたらしく魔法部隊が左右に分かれた時に雷と風の合属魔法が見えた。
放たれた魔法は【ボルトストーム】と言って屋内で使うのには向いてない魔法なのだが雷を纏った竜巻が我に向かって飛んでくるのでここは盾を変形させて対抗するとしよう。
盾が変形し筒型になれば持ち手にあるボタンの一つを押す。起動音が聞こえてから内部で回転する音がすればものすごい吸引力で【ボルトストーム】を吸い込んでいった。
魔法が吸い込まれていく様子に唖然となる連中を前に筒をくるりと反転させてから我は持ち手の引き金に指を掛けた。
「返すから対処してみよ。」
一言伝えてから引き金を引けば筒から向こうが放ってきた【ボルトストーム】が打ち出される。まさか自分達が出した合属魔法を返された敵方は盾持ちごと全員巻き込んでぶっ飛んでいった。
その際最奥の扉も破壊されたので盾を戻しながら我は入ってドックヤーの顔を拝もうとしたのだが、部屋に入った直後に左右から打撃音が聞こえてきた。
しかもこれは光属性が付与されている攻撃だった。
顔を動かして見ればこの世界では珍しい白銀の髪の少年少女であった。
(ほお、その歳でこれ程の光属性を使うとはな。)
障壁越しに伝わってくる光属性の強さに我が感心していれば二人は当てていた細剣とナックルを離して距離を取る。
二人とも同じ色合いの軍服っぽい服装を身に纏っているのでドックヤーの親衛隊かと思っていたが
「な、何者だ貴様!言っておくが勇王直属の騎士に勝てると思うなよ!」
壁に背中をつけてこちらを指差して言う身なりの良い、いや良すぎる初老の男。こいつがドックヤーで間違いないだろうが気になることを口に出してくれた。
勇王直属、つまり勇者の近衛兵のような存在がこの少年少女だと言ってきたことだ。
確かに戦闘で光属性を使える者は少ないがまだ若い者がそんな地位にまで上り詰められるだろうかと言えばとても難しいと思えた。
(となれば、いわゆる天才という者か。)
面白い!と悪役としてすぐに出てきた言葉はそれであった。
光の魔剣と魔拳を使う少年少女とは是非ともお手合わせして実力を計ってやるとしよう。
「ほお、ならば半世紀ぶりにいい訓練相手になってくれそうだな。」
いつでも手に掛けられるドックヤーのことは放置して我は少年少女にかかってこいと手招きの挑発をしてやった。
それに対して表情は変えずとも少年は前に出て少女は魔剣を前に出して光属性の魔方陣を展開する。
少年が光属性を纏った拳で乱打してくるのを我は敢えて盾も障壁も使わず右の掌を動かして受け止めてみせる。掌にチリチリとした感覚を受けたのでしっかり光属性が出せているとまた感心していれば少女の魔方陣が輝いて五本の光の矢が発射された。
飛んできた矢の内四本は回避して最後の一本はかっこよく人差し指と中指の間に挟んで止めてみせすぐに握り潰してやった。
しかし見ていたドックヤーの方は信じられないという顔をしていたが少年少女は未だに無表情のままなことに少し疑問を覚えた。
以前にも、というか勇者一行と冒険していた時にもあったような気がする。そこで距離を取って間合いを見計らってくれている間に我は【情報開示】を少年少女に使ってみた。
すると表示されたステータスに感情抑制と狂信いう状態異常が付いていた。
それを見て我はピンときた。
勇者一行と共にとある国で怪しげな宗教団体を調査した時、襲ってきた信者が同じ状態異常であった。
そして仕組みも同じならばと調べれば二人がの剣とナックルそして軍服の胸に全く一緒の赤い石が付いていた。
「な、何を手こずっている!最大魔法で倒すのだ!」
さらにドックヤーの手首にあるリングが言葉の後で光ったことで確定した。
少年少女は盲目的に戦わされていると。
しかし次の二人の行動に我は予想外だと驚く。横に並んだ少年少女は剣とナックルを後ろに引けば二人の足元になんと白とは違う白銀の輝きを放つ魔方陣が展開される。
(あれは!聖属性だと!?)
半世紀前に聖女が何度か唱えていた時に見ていたのでまず間違いなく聖属性の魔方陣を少年少女が出してきたことにふと我に傷を与えたかの聖騎士を思い出した。
勇者の剣の師匠だったというあの男が使ったまさに全身全霊を使った大技【光聖邪擊破】。
その初動が少年少女の動きと重なったからだ。
あれを受けたらさすがにダメージは覚悟しなければならないがそれよりも出てきたのは怒りの感情だった。
あの大技は油断していたとはいえ我の身体しっかりとしたダメージを与えるほどであったが使った聖騎士団長はまだ四十代だったというのに命の炎を燃やし尽くして亡くなった言うなれば自決確定の特攻技。
それを無理矢理戦わせている少年少女に使わせようとすることに怒りを感じた。
(ええい仕方ない!もう終わりにしてやるとしよう!)
調査の為もう少しお相手したかったが子どもの命が関わることは止めなくてはならない。我は魔力を高め盾の一部を変形させて手に取る。それはこの世界にはまだ存在しないマイクの形をしており充填が完了した我は少年少女がスキルを発動させる前に使った。
「受けよ!対敵集団無力化スキル(エイム命名)!【戦恐のバラード】!」
スキル名を言ってから我はマイクに頭を寄せて声を出した。
その瞬間、目に見えるほどの闇属性の波長が部屋にいる全員に当たる中で我は歌った。
【戦恐のバラード】とはその名前の通り我が歌うスキルである。本当はただ歌っているだけなのだが、何故かアンデッド系と対策アイテムを所持した場合を除いて低レベルの生物は波長を受けた途端に気絶させることが出来る。
ただこのスキルには致命的なデメリットがあって敵味方関係ない無差別攻撃になっているのである。半世紀前にも大軍で押し寄せてきたヒト族に使って撤退させたのだが後続の一部にも被害が起きていたので緊急性のある場面でしか使わないようにしていた。
ちなみに曲は転生前の我が好きだった宇宙を旅する戦艦のテーマ曲である。
歌い終わってから一息ついて周りを見れば部屋にあった家具は全て壁際に追いやられる形になり、ドックヤーはその中に埋もれ少年少女も偶然か横倒しのベッドを背に気絶していた。
どうやら自爆技を使わせる前に片がついたことにほっと一安心していればゾドラから連絡がきた。
(…だ、旦那様。もしかして【戦恐のバラード】を使いましたか?)
(うむ、ちと使わねばならない状況が起きてしまったのでな。)
(そう、でしたか。しかしおかげで兵士だけでなく解放させた者達も気絶してしまいましたよ。)
ゾドラの報告に何?と思って少し焦り気味に我は返す。
(いやいやそれはおかしいだろう?【戦恐のバラード】の有効範囲は半径百メートルのはずであろう?)
(それは旦那様が最小限の魔力で使用した時です。先ほどのならおそらく余波を含めたら半径十キロメートルくらいは出ていたと思います。)
半径十キロメートルということはここから金の区画まで届く。という事実に気づいた我は手にあるマイクを顔に当てて上を向くと思った。
ああ、やり過ぎちゃった……と。
***
(ーー…これでよしと。)
無事(?)に城を制圧できたので我は倉庫から出した縄で家具の山から出したドックヤーを縛って拘束してから少年少女の元に向かう。
まずは再び【情報開示】で調べナックルと剣を二人から引き剥がしても問題ないかを確認する。調査の結果、ナックルと剣に付いた赤い石は魔法石だが光属性を増幅させる性能だけで引き剥がしても問題ないが軍服に付いた方が厄介であった。
おそらく呪術の一種で石と心臓を魔法の鎖で繋いでおり無理に石を外そうとする又は石だけを破壊すれば心臓が潰され死に至るようになっている。
しかし、今ここにいるのは誰だ?
そう、闇属性のプロフェッショナル的存在の大魔将軍である。
この程度の呪術ならば解くことなど余裕なのだ。
通常こういう呪術的なものは神官などが光属性魔法にある解呪のスキルを使うのだが我は当然使えないので別の手を使う。
この魔法には闇属性が指示書の役割として使われているものが多い。
ならばより強力な闇属性でその指示をなかったものに上書きすればいい。まず少女の方の赤い石に人差し指を触れさせ闇属性を流し込む。属性に反応して赤い石は淡く光れば呪術の証である文字が浮かび上がったのでそこに手を加えた。
(えーっと、ここをこうして、これを価格設定、ではなくて危険度を失くしてやれば……。)
久しぶりに細かく指先を動かしていくことについつい前世の本部から突然導入が決まった新しい販促システムに悪戦苦闘していた日々を思い出してしまう。
あれに比べたらこの程度の作業は楽勝である。歳を取ってから食べなくなったカップ蕎麦が出来上がるよりも前に上書きを完了させれば人差し指と親指で赤い石を挟むとぐっと力を入れて割ってやった。
直後に闇属性の雷光が立ち上ぼって消えると同時に少女から状態異常が消え失せた。
同じことを少年の方にもしてから咄嗟とはいえ子どもに手傷を負わせたからと倉庫からこの世界の回復薬エリクサーを振り掛けて癒してあげた。
作業を一つ終えたのでゾドラに通信して現在の外の状況を尋ねてみた。
(現在金の区画の異変を察知して兵士達が城へと向かっております。数は約五十人ほどです。)
(五十人か。よしゾドラよ、ここは貴様の黒龍人としての力を使う時であろう。我と似たスキルがあると聞いたし期待しているぞ。)
そう我が言ってやればゾドラはすごく元気よく返事してから通信を切った。
*
旦那様に期待していると言われた。
ならばご期待に応えなくては夜伽役、もとい眷属として名乗れません!
なので早速行動に移させていただきます。
まずは城に戻って気絶又は死亡している人間の兵士を外の一ヵ所に集めます。
「…いでよ風竜。その手を我が命によって動かせ。」
この黒龍人の力とスキルは素晴らしいものです。単純に言葉にするならば龍魔法の図書館と言ったところでしょうか。
古くから魔界に存在する私達ドラゴン族には独自の魔法が存在する。炎や雷、水や冷凍などのブレスや翼を動かしただけで風の刃を出したり何もないところから岩を生み出して飛ばす、前の私が使っていた疫病を一定の範囲にのみ流行らせるなどのドラゴン族しか出来ないスキルの総称として呼ばれるようになったのが龍魔法。
そして今の私、黒龍人はほぼ全ての龍魔法が使える。今は風龍のスキルの一つで一度に大量の人間を運んでいる。前の私なら自分の手でやれたが身体が縮んだ今ではそうはいかないのとスキルの練習も兼ねてです。
(さて大分集まりましたし、駒にしてやりましょう。)
城の中から外の旦那様が破った城門近くまで人間をある程度集めたので次に移行する。
使うのは闇龍のスキル、まずは【魂霊喰いの吐息】を使う。口か黒いモヤのブレスを吐いて人間に当てればまだ生きていた者の身体から魂である光の玉が抜け出てから私の元に集まる。
(どれも小さい魔力。これではお菓子にもなりませんね。)
目の前の魂達を前に深呼吸するように息を吸えば全てを喰らい尽くしてやった。
もう目の前にあるのは死体しかいないので今度は【死霊の吐息】を使う。今度は灰色の煙を口から出して死体に浴びせれば徐々に髪は灰色に肌は青白くなってゾンビ化して立ち上がっていく。
集めた死体全員がゾンビ化すれば手を叩いて命令し街へと向きを変えさせ次に指を鳴らして黒い炎を城門前から消してみせる。総勢百五十近いゾンビを前に街にいる人間がどんな顔をするのかが想像できますね。
ここから先は高見の見物。だからここは旦那様のお言葉をお借りして言いましょう。
「さあ死霊どもよ。この街から人間だけ追い出してやりなさい。全体!行進開始です!」
どちらも昨日どこの風俗店でどんな女を楽しんだかで語り合っていたが一人が気づく。
まだ遠くだが二人の人間がこちらへと歩いてきていることに。
「なあ、今日来客の予定あったか?」
「いや、夜会はあると聞いたがこの時間に予定はないぞ。」
予定の確認をしてから兵士は目を細めて近づいてくる相手を注視する。片方は黒い甲冑の男でもう片方は黒髪が似合う騎士っぽい女性、しかも顔も身体も美人だ。
格好からしてもしかしたらどこかの使者かもしれないと判断した門番は先ほどの談笑からキリッと直立して待つ。
オークション会場を迂回して真っ直ぐ城を目指して進んでみたがどうやら検問もなく城門まで来れた。
門の前に兵士が二人しかいないので難なく突破出来そうだ。
だが普通に突破するつもりはない。
この町が人間にとって近づきたくないようにしっかりと恐怖の色に染めてやるとしよう。
「ゾドラよ。スキルでこの城から人間を出さないように出来るか?」
「お任せを。鼠一匹逃がさないようにしてみせましょう。」
返事をしてからゾドラの姿が消える。門番にはそう見えただろうが実際は城の頂点まで飛び上がったのである。
さて我もド派手に決めてやるとしよう。それが開戦の合図としてゾドラに伝わることになるからな。さらには敵に与える印象も決まることになろう。
向こうからすいませーんと声を掛けながら歩いてくる兵士を前に大きく深呼吸をしてから盾を元の大盾に戻せば左足を軽く引いて盾を前にした半身の態勢を取ると魔力を高める。足元から黒い雷光が走るのを見てまさかと思った兵士が停止を呼び掛けるのを無視して我は前に出た。
「【漆黒の突撃】!」
ダンッ!と地面にくっきりと足形を残してから我は門に向かって突っ込んだ。
それはまさにロケットの如く直撃すれば木と鉄を組み合わせた門は丸々内側へとぶっ飛んでいった。
さらに勢いは止まらず先にあった噴水を粉砕し城の玄関である扉も破壊して中に入ってみせた。
当然我の直線上にいた兵士二名はもうこの世から消えているので警笛すら鳴らされずに我はあっという間に城内に入ってみせた。
「…黒き炎よ、触れれば灰塵と帰す炎よ。我が敵を囲め!【黒炎陣】!」
開戦の合図を聞いて空にゾドラが唱えて両手を前に出せば赤黒い魔方陣が生まれ城壁全体へと拡大すれば魔方陣の外周に沿って地面に向けて赤黒い炎が雨のように降って地面に落ちれば燃え上がり炎の壁を作ってみせるのを感知した。
これで空でも飛ばない限り城にいる者は逃げられなくなったことになる。
「な、何事だ!?」
「侵入者だ!扉を破ってきたぞぉ!」
突然の襲撃に従者達が逃げ惑う中を我は上に続く階段を探して顔を動かす、という余裕を見せてやればすぐにガシャガシャと鎧が動く音が聞こえて数十名の兵士が姿を見せる。
「貴様何者だ!ここは太陽の街オサカの支配者ドックヤー様の城だぞ!」
兵士達の最後尾で隊長らしい男が聞いてきたので腰に手を当てて言ってやった。
「ならばそのドックヤーとやらに伝えよ。今日からお前に代わって我が支配者となる、とな。」
堂々と宣戦布告してやれば隊長の号令で兵士達が一斉にこちらへ向かって突っ込んできた。
雑兵ごときに時間を取られたくないので我は速攻で終わらせよう右手に魔力を集める。再び黒い雷を纏わせ魔力が充填されたのを確認すれば右手を振り上げて使った。
「【漆黒の地走雷】!」
スキルを口に出して右手で床を殴れば前方に扇状へと亀裂と黒い雷が走り突っ込んでくる兵士達をまとめて感電させ倒していく。【漆黒の地走雷】は対地用に作ったスキルでものの一分経つか経たない時間で今突っ込んできた四十名ほどの兵士を討ち取ってみせる。向こうにとっては一人に負けたことが信じられないという表情になっているのを前に我は階段に向けて歩き出しながら元の姿に戻って言ってやった。
「我が道を遮るならば、誰であろうと虚無の死を与えよう。」
威圧の意味で闇属性の気を視認させてやるも今度は後からきた魔法部隊による攻撃が始まる。
階段の上からチマチマと初級から中級までの魔法を降らせてくるが我が【漆黒の障壁】の前には霧雨程度に過ぎない。というより恐らくだが連中は先に知った簡易魔法装備で攻撃しているようだ。
魔法とは使う者の魔力によって威力が変わるというのが半世紀前の一説ではあったがあの道具のせいで忘れられているのかもしれないほど飛んでくる魔法はまさに必要最低限の威力しかない。
しかしこうも飛ばされては五月蝿く思えてきた。
(面倒だ。階段ごと倒そう。)
そう思って両手を握り拳を作れば後ろに引いて魔力を集める。すると後ろに大量の風属性の魔方陣が展開されれば一息に拳を突き出した。
「【漆黒の空拳】!」
スキルを発動させれば魔方陣から空気の弾もとい我が使うと空気の拳が発射されて階段ごと兵隊を倒してみせた。
そこでゾドラから通信が入る。包囲網を敷いたので次の指示を求めてのことであった。
(ならばゾドラよ。庭にいる兵士を倒した後で一階と地下室へ向かえ。)
(地下室に?)
(うむ、ここまで立派なら牢屋ぐらいあるだろう。捕まっている者がいるならば解放して武器を持たせよ。そいつらにも街の制圧に付き合わせてやる。我はこのまま上に向かう。)
指示を出して通信を切れば宙に浮いて崩れた階段の瓦礫に挟まって動けなくなっている隊長格に近づく。圧倒的な力に恐怖している相手にドックヤーは何処にいるか尋ねると最上階の四階にある部屋にいると正直に言ってくれた。
「感謝する。ではさらばだ。」
情報を得たのでそのまま四階に向けて上昇を始めようとした時に相手が小声で悪魔かと呟いたのが聞こえた。
残念だが悪魔族ではないし最後の悪態に対してここは悪役として言い返してやろう。
「いいや、我は大魔将軍である。」
一言そう告げてから指を鳴らして風属性魔方陣を一つ下に展開させればすぐに爆発音が聞こえ我は上昇気流に乗って上を目指した。
二階と三階からの攻撃をスキルで無視して通り過ぎ最上階へと降り立てば少し立派な装備の盾持ち兵士と魔法使いが最奥の扉を守るように陣を作っていた。
「なっ!?あれだけの防衛を全て突破したというのか!?しかも一人だと!」
しっかりした甲冑を身につけた男が我を見て驚く。場所と身なりからして大将なのかもしれないが内心ほくそ笑んでしまう。昔もこうやって軍人共の予想外という顔を散々見てきたからな。
ともあれドックヤーが我の目的なのでここは勧告してやるとしよう。
「先に言っておく。全員降伏するのであれば命は取らない。大人しく道を開けよ!」
最後を強めに言って闇属性の気を発してみせれば何人かが気圧されそうになったのが確認できた。
「怯むな!敵は一人だ!一斉に攻撃しろぉ!」
大将の掛け声で盾持ちは横一列に固め後ろから魔法使い部隊が先ほどやり合った者達よりもちゃんとした魔法を放ってきた。
と言っても全て中の上な魔法ばかりでは結局我が【漆黒の障壁】に阻まれて届きはしない中で我はわざと歩いて前に進む。
向こうにとっては全く当たってないことがさぞ恐怖となっていることだろう。しかし半分ほど距離を詰めてみた時に向こうが奥の手を出してきた。
どうやら奥の方で合属魔法を用意していたらしく魔法部隊が左右に分かれた時に雷と風の合属魔法が見えた。
放たれた魔法は【ボルトストーム】と言って屋内で使うのには向いてない魔法なのだが雷を纏った竜巻が我に向かって飛んでくるのでここは盾を変形させて対抗するとしよう。
盾が変形し筒型になれば持ち手にあるボタンの一つを押す。起動音が聞こえてから内部で回転する音がすればものすごい吸引力で【ボルトストーム】を吸い込んでいった。
魔法が吸い込まれていく様子に唖然となる連中を前に筒をくるりと反転させてから我は持ち手の引き金に指を掛けた。
「返すから対処してみよ。」
一言伝えてから引き金を引けば筒から向こうが放ってきた【ボルトストーム】が打ち出される。まさか自分達が出した合属魔法を返された敵方は盾持ちごと全員巻き込んでぶっ飛んでいった。
その際最奥の扉も破壊されたので盾を戻しながら我は入ってドックヤーの顔を拝もうとしたのだが、部屋に入った直後に左右から打撃音が聞こえてきた。
しかもこれは光属性が付与されている攻撃だった。
顔を動かして見ればこの世界では珍しい白銀の髪の少年少女であった。
(ほお、その歳でこれ程の光属性を使うとはな。)
障壁越しに伝わってくる光属性の強さに我が感心していれば二人は当てていた細剣とナックルを離して距離を取る。
二人とも同じ色合いの軍服っぽい服装を身に纏っているのでドックヤーの親衛隊かと思っていたが
「な、何者だ貴様!言っておくが勇王直属の騎士に勝てると思うなよ!」
壁に背中をつけてこちらを指差して言う身なりの良い、いや良すぎる初老の男。こいつがドックヤーで間違いないだろうが気になることを口に出してくれた。
勇王直属、つまり勇者の近衛兵のような存在がこの少年少女だと言ってきたことだ。
確かに戦闘で光属性を使える者は少ないがまだ若い者がそんな地位にまで上り詰められるだろうかと言えばとても難しいと思えた。
(となれば、いわゆる天才という者か。)
面白い!と悪役としてすぐに出てきた言葉はそれであった。
光の魔剣と魔拳を使う少年少女とは是非ともお手合わせして実力を計ってやるとしよう。
「ほお、ならば半世紀ぶりにいい訓練相手になってくれそうだな。」
いつでも手に掛けられるドックヤーのことは放置して我は少年少女にかかってこいと手招きの挑発をしてやった。
それに対して表情は変えずとも少年は前に出て少女は魔剣を前に出して光属性の魔方陣を展開する。
少年が光属性を纏った拳で乱打してくるのを我は敢えて盾も障壁も使わず右の掌を動かして受け止めてみせる。掌にチリチリとした感覚を受けたのでしっかり光属性が出せているとまた感心していれば少女の魔方陣が輝いて五本の光の矢が発射された。
飛んできた矢の内四本は回避して最後の一本はかっこよく人差し指と中指の間に挟んで止めてみせすぐに握り潰してやった。
しかし見ていたドックヤーの方は信じられないという顔をしていたが少年少女は未だに無表情のままなことに少し疑問を覚えた。
以前にも、というか勇者一行と冒険していた時にもあったような気がする。そこで距離を取って間合いを見計らってくれている間に我は【情報開示】を少年少女に使ってみた。
すると表示されたステータスに感情抑制と狂信いう状態異常が付いていた。
それを見て我はピンときた。
勇者一行と共にとある国で怪しげな宗教団体を調査した時、襲ってきた信者が同じ状態異常であった。
そして仕組みも同じならばと調べれば二人がの剣とナックルそして軍服の胸に全く一緒の赤い石が付いていた。
「な、何を手こずっている!最大魔法で倒すのだ!」
さらにドックヤーの手首にあるリングが言葉の後で光ったことで確定した。
少年少女は盲目的に戦わされていると。
しかし次の二人の行動に我は予想外だと驚く。横に並んだ少年少女は剣とナックルを後ろに引けば二人の足元になんと白とは違う白銀の輝きを放つ魔方陣が展開される。
(あれは!聖属性だと!?)
半世紀前に聖女が何度か唱えていた時に見ていたのでまず間違いなく聖属性の魔方陣を少年少女が出してきたことにふと我に傷を与えたかの聖騎士を思い出した。
勇者の剣の師匠だったというあの男が使ったまさに全身全霊を使った大技【光聖邪擊破】。
その初動が少年少女の動きと重なったからだ。
あれを受けたらさすがにダメージは覚悟しなければならないがそれよりも出てきたのは怒りの感情だった。
あの大技は油断していたとはいえ我の身体しっかりとしたダメージを与えるほどであったが使った聖騎士団長はまだ四十代だったというのに命の炎を燃やし尽くして亡くなった言うなれば自決確定の特攻技。
それを無理矢理戦わせている少年少女に使わせようとすることに怒りを感じた。
(ええい仕方ない!もう終わりにしてやるとしよう!)
調査の為もう少しお相手したかったが子どもの命が関わることは止めなくてはならない。我は魔力を高め盾の一部を変形させて手に取る。それはこの世界にはまだ存在しないマイクの形をしており充填が完了した我は少年少女がスキルを発動させる前に使った。
「受けよ!対敵集団無力化スキル(エイム命名)!【戦恐のバラード】!」
スキル名を言ってから我はマイクに頭を寄せて声を出した。
その瞬間、目に見えるほどの闇属性の波長が部屋にいる全員に当たる中で我は歌った。
【戦恐のバラード】とはその名前の通り我が歌うスキルである。本当はただ歌っているだけなのだが、何故かアンデッド系と対策アイテムを所持した場合を除いて低レベルの生物は波長を受けた途端に気絶させることが出来る。
ただこのスキルには致命的なデメリットがあって敵味方関係ない無差別攻撃になっているのである。半世紀前にも大軍で押し寄せてきたヒト族に使って撤退させたのだが後続の一部にも被害が起きていたので緊急性のある場面でしか使わないようにしていた。
ちなみに曲は転生前の我が好きだった宇宙を旅する戦艦のテーマ曲である。
歌い終わってから一息ついて周りを見れば部屋にあった家具は全て壁際に追いやられる形になり、ドックヤーはその中に埋もれ少年少女も偶然か横倒しのベッドを背に気絶していた。
どうやら自爆技を使わせる前に片がついたことにほっと一安心していればゾドラから連絡がきた。
(…だ、旦那様。もしかして【戦恐のバラード】を使いましたか?)
(うむ、ちと使わねばならない状況が起きてしまったのでな。)
(そう、でしたか。しかしおかげで兵士だけでなく解放させた者達も気絶してしまいましたよ。)
ゾドラの報告に何?と思って少し焦り気味に我は返す。
(いやいやそれはおかしいだろう?【戦恐のバラード】の有効範囲は半径百メートルのはずであろう?)
(それは旦那様が最小限の魔力で使用した時です。先ほどのならおそらく余波を含めたら半径十キロメートルくらいは出ていたと思います。)
半径十キロメートルということはここから金の区画まで届く。という事実に気づいた我は手にあるマイクを顔に当てて上を向くと思った。
ああ、やり過ぎちゃった……と。
***
(ーー…これでよしと。)
無事(?)に城を制圧できたので我は倉庫から出した縄で家具の山から出したドックヤーを縛って拘束してから少年少女の元に向かう。
まずは再び【情報開示】で調べナックルと剣を二人から引き剥がしても問題ないかを確認する。調査の結果、ナックルと剣に付いた赤い石は魔法石だが光属性を増幅させる性能だけで引き剥がしても問題ないが軍服に付いた方が厄介であった。
おそらく呪術の一種で石と心臓を魔法の鎖で繋いでおり無理に石を外そうとする又は石だけを破壊すれば心臓が潰され死に至るようになっている。
しかし、今ここにいるのは誰だ?
そう、闇属性のプロフェッショナル的存在の大魔将軍である。
この程度の呪術ならば解くことなど余裕なのだ。
通常こういう呪術的なものは神官などが光属性魔法にある解呪のスキルを使うのだが我は当然使えないので別の手を使う。
この魔法には闇属性が指示書の役割として使われているものが多い。
ならばより強力な闇属性でその指示をなかったものに上書きすればいい。まず少女の方の赤い石に人差し指を触れさせ闇属性を流し込む。属性に反応して赤い石は淡く光れば呪術の証である文字が浮かび上がったのでそこに手を加えた。
(えーっと、ここをこうして、これを価格設定、ではなくて危険度を失くしてやれば……。)
久しぶりに細かく指先を動かしていくことについつい前世の本部から突然導入が決まった新しい販促システムに悪戦苦闘していた日々を思い出してしまう。
あれに比べたらこの程度の作業は楽勝である。歳を取ってから食べなくなったカップ蕎麦が出来上がるよりも前に上書きを完了させれば人差し指と親指で赤い石を挟むとぐっと力を入れて割ってやった。
直後に闇属性の雷光が立ち上ぼって消えると同時に少女から状態異常が消え失せた。
同じことを少年の方にもしてから咄嗟とはいえ子どもに手傷を負わせたからと倉庫からこの世界の回復薬エリクサーを振り掛けて癒してあげた。
作業を一つ終えたのでゾドラに通信して現在の外の状況を尋ねてみた。
(現在金の区画の異変を察知して兵士達が城へと向かっております。数は約五十人ほどです。)
(五十人か。よしゾドラよ、ここは貴様の黒龍人としての力を使う時であろう。我と似たスキルがあると聞いたし期待しているぞ。)
そう我が言ってやればゾドラはすごく元気よく返事してから通信を切った。
*
旦那様に期待していると言われた。
ならばご期待に応えなくては夜伽役、もとい眷属として名乗れません!
なので早速行動に移させていただきます。
まずは城に戻って気絶又は死亡している人間の兵士を外の一ヵ所に集めます。
「…いでよ風竜。その手を我が命によって動かせ。」
この黒龍人の力とスキルは素晴らしいものです。単純に言葉にするならば龍魔法の図書館と言ったところでしょうか。
古くから魔界に存在する私達ドラゴン族には独自の魔法が存在する。炎や雷、水や冷凍などのブレスや翼を動かしただけで風の刃を出したり何もないところから岩を生み出して飛ばす、前の私が使っていた疫病を一定の範囲にのみ流行らせるなどのドラゴン族しか出来ないスキルの総称として呼ばれるようになったのが龍魔法。
そして今の私、黒龍人はほぼ全ての龍魔法が使える。今は風龍のスキルの一つで一度に大量の人間を運んでいる。前の私なら自分の手でやれたが身体が縮んだ今ではそうはいかないのとスキルの練習も兼ねてです。
(さて大分集まりましたし、駒にしてやりましょう。)
城の中から外の旦那様が破った城門近くまで人間をある程度集めたので次に移行する。
使うのは闇龍のスキル、まずは【魂霊喰いの吐息】を使う。口か黒いモヤのブレスを吐いて人間に当てればまだ生きていた者の身体から魂である光の玉が抜け出てから私の元に集まる。
(どれも小さい魔力。これではお菓子にもなりませんね。)
目の前の魂達を前に深呼吸するように息を吸えば全てを喰らい尽くしてやった。
もう目の前にあるのは死体しかいないので今度は【死霊の吐息】を使う。今度は灰色の煙を口から出して死体に浴びせれば徐々に髪は灰色に肌は青白くなってゾンビ化して立ち上がっていく。
集めた死体全員がゾンビ化すれば手を叩いて命令し街へと向きを変えさせ次に指を鳴らして黒い炎を城門前から消してみせる。総勢百五十近いゾンビを前に街にいる人間がどんな顔をするのかが想像できますね。
ここから先は高見の見物。だからここは旦那様のお言葉をお借りして言いましょう。
「さあ死霊どもよ。この街から人間だけ追い出してやりなさい。全体!行進開始です!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる