GATEKEEPERS  四神奇譚

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第三部

第四幕 都市下・西部竹林

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夕方から降り始めた雨は止む気配もなくアスファルトを強く叩いている。香苗を送る悌順の決意したような顔に、あれは何かしらする気だなと考えながら忠志はそれもありだよなぁと一人考えながら帰途についていた。日付はあと数時間で七月になろうとしていて、梅雨も明けてもいいのにその気配はまだない。

雨降りってあんまなぁ。

火気だからとは言いたくはないが、雨降りは気が滅入る。しかも最近知ったことが少し脳裏をチラチラしていて、忠志は溜め息混じりの吐息を溢した。
四神になると一人になるのはわかっていたが、それがなった後も付きまとうとまでは考えていなかったのだ。勿論最初に説明はして貰っていたのだろうが、幾ら忠志だって両親や妹を亡くして直ぐにお前は四神になったなんて話を鵜呑みにできるほど単純ではない。信哉は忠志の前が義人だったことで、自分と悌順が認識が甘かったと頭を下げた。

信哉のせいじゃないんだけどな

結局は話を聞かなかった自分の問題なだけなのだが、身内でもある義人が余りにも受容が早くて忠志も同じように受容していると思い込んでしまったと言うことらしい。
それにしても四神になった後も恋も結婚も、子供もなしなんて有り得ない。人間だったら好きな人が出来たら結婚したいし、子供だって欲しくなって当然だ。そんなことを考えると忠志の脳裏には、首元に巻いたマフラーに顔を埋めるようにした女性の姿が過る。

かおる

寒い冬の夜の街に不釣り合いな服装で、何時も独りでいた彼女。人によっては悪女だと言う人間もいるが、忠志の前では彼女は何処か幼くて頼りなげで儚い。まるで雪の結晶のような、火気の自分が近寄ったら溶けて消えてしまいそうだった。真冬の寒さに缶のココアを買って渡してやると、嬉しそうにホンノリと微笑むかおる。
あの時、傷口から溢れ出る血を二人がかりで抑えられながら揺れる悲しい瞳が、救急車を呼ぶ忠志の事を見つめていた。

忠志…。ねぇ…、ホンとはね、忠志に……一緒に…いて欲し…。

弱々しく彼女が呟くのが聞こえて必死に電話を掛ける忠志が振り返ると、彼女は純粋な子供のような視線で彼だけをみて天使のようにフワリと微笑んだ。

また、あたしにココア買って…くれる?

その言葉に忠志が頷きながら電話に向かって早くと叫ぶのを、満足そうに穏やかに彼女は微笑みやがて灯火が消えるように力を失っていった。あの時電話をかけるのはどうしても必要なことだったのは分かっている。一緒にいた信哉達が応急処置をしていて手が離せないのもわかっているけれど、あの時せめて手を握ってやればよかったと思う。ただ手を握ってやっていたら、忠志は幼馴染みを助けることは出来なかった。

……かおるの手を握って…………和希を助けない方が良かったのかもな……。

幼馴染みの三浦和希はかおると関係したことで、友人を含めて殺人を犯していた。襲われたのは恐らく既に十人を越えていて、生き残った方が少ない。そんな近年では稀にみる殺人鬼になってしまっている。しかも、病院で隔離されていた筈の和希はそこから逃亡して、今では自由に世の中を歩き回っているのだ。

あの時和希を助けなかったら…………遠坂はきっと生きてた……。

信哉が話していた刑事の遠坂は、三浦和希を捜索していたのは知っていた。遠坂は外崎の幼馴染みで、最初の事件の被害者でもある外崎宏太と協力して逃げ出した和希を捕まえようとしていたのだ。それに気がついてしまうと、あの時に握るべき手は和希の手ではなく、かおるの手だったんだと右手に深く刻まれた傷痕を見下ろし溜め息を溢す。

そうしたら、逃亡の後に和希が何人も殺すこともなかった……

精神遅滞に陥った和希が病院から逃げ出した時に警察官が二人が殺されて、それ以外にも何人か噂は流れたがそこら辺の真偽はわからない。その結果に繋がる和希を助けたのは、他でもない自分だった。誰からも指摘されないが自分自身それは良くわかっていて、時々この傷痕をみると胸が締め付けられるような気がする。思わず傘の下で手を握りこみ、傷痕から目をそらしてしまう。

和希……。

子供の頃から大概は一緒にいて、双子の妹の利津とも仲の良かった男。何時かは利津と付き合うのかと忠志はずっと思っていたのに、付き合うどころか告白もない内に利津は死んだ。その犯人はつい四月頃逮捕されたが、遠坂と同じ日に遠坂に殺されたと聞いた。まるで連鎖して悪意が感染していくように身の回りで死が飛び交う。これが和希のせいなのか、それとも自分に宿った力のせいなのかまるで分からない。もし後者なのだとしたら、それをこの後もずっと堪えて生きていくしかないのなら。
そんな不毛な思考を巡らせた瞬間、チリと何かを神経の端で捉えた気がした。思わず弾かれたようにそちらを振り返る。
雨の中で何か微かな感覚が神経のほんの先端を撫でたのだ。

なんだ?

自分が他の仲間に比べて気の感知に関しては劣っているという自覚は、正直ずっと以前からあった。しかも、今は雨の中なので火気の自分にはかなり部が悪い。それでもそれは酷く近く、まるで一瞬で何かが爆発してその後溢れ出した気がする。咄嗟にその気配が漂った方向にむかって、忠志は駆け出していた。
忠志は自宅にむかっていた途中で、既に悌順は自宅に戻っていて他の三人はここから南東の自宅マンションにいる筈。そうなると感知出来ても三人がこちらに向かう前に、この気配は消えてしまうかもしれない。だったら確認するのと同時に自分が先に向かって引き留めておいた方が早いと考えたのだ。
人目に付く事は避けなければいけないと思いながらも気がせく感覚に心が満たされていく。咄嗟に傘を閉じると人気のない曇天の夜空に飛び上がると、その瞳が一瞬で緋色に輝き辺りを見下ろす。もし、誰からが見たら目が光るお化けでも見たと思うだろうが、忠志は肌に触るような気配に向かって一直線に空を切る。雨を振り払いザザッと音を立てて街並みを飛び越し、西側の山並みに近い住宅街の外れの竹林の端に舞い降りた忠志はその闇の姿に眼をむけた。
チリチリと肌に触る気配はどう考えても木気。
何時も傍にいる義人のモノとは違って、か弱く、それでも確かに木気だ。人気のない場所に何でと戸惑いながら、太い孟宗竹に手をつくと足場を確かめながらその気配に歩み寄る。

「……やめて!!」

その声は雨脚に掻き消されてしまいそうに、怯えて震えを帯びていた。ハッとしたようにその声に向かって視線を向け、忠志が目を凝らすと闇の中で揉み合うような影が見える。

「いやっ!!」

脳裏に大分前に似たような光景を見たことが過る。それは三浦和希が女性に乱暴をしているのを通りかかった公園でみつけ、しかも乱暴されそうになっている女性は忠志の住んでいるマンションの顔見知り・瀬戸遥だった。一瞬またかと思ったが、瀬戸遥は既に結婚して子供もいる。
それに目の前の組み伏せられているのは黒髪の女性で、覆い被さろうとしているのはどう見ても中年の男だ。しかも二人が密着しているせいか、そのどちらから木気が放たれているのか判別できない。

「やめて!!」

布の裂ける音に我に返った忠志は、咄嗟に撓る孟宗竹を折れるほどの勢いで掻き分けるようにして駆け出す。

「何やってんだ!!」

鋭い叱責の声と同時にその男の襟首を掴み引き剥がし傘で殴り付けて突き飛ばすと、勢い良く太い孟宗竹に叩きつけられる。鬱蒼とした孟宗竹の葉が激しい雨と振動に降り落ちてくる中で、男はギラギラと光を反射する瞳で忠志を睨み付けた。

「なんだ?お前……。」

何処かでその男の顔に見覚えがある。忠志はその中年の姿に眉を潜めるが、相手の方は全く忠志には気がついていない様子でギリギリと奥歯を軋らせた。まるで歯を剥き出して嗤っているようにも見えるその男の顔に、忠志の中に不快感が沸き上がる。

「それは……俺の女だ……!邪魔するな!!」

その言葉に忠志は相手が、以前に出会ったことのある男だと気がつく。一年前に悌順の想い人の須藤香苗の彼氏だった男・女性相手に非道な行動をとる変態で、その後一度公園で須藤香苗に絡んでいたのを助けたことがあ。それ以外にも三月ぐらいに何故か三浦和希の自宅でもある廃墟の地下室に落ちているのを見つけられた男。たしか矢根尾とかいう

「どけぇ!!」

男は不快な臭気を口から放ちながら、ノソリと身を揺らす。こんなに大柄でズングリとした男だっただろうかと、忠志は戸惑いすら感じながら相手を見据えた。須藤香苗に絡んでいた姿は小者感が強くて、間が抜けているとすら感じた。だが今の目の前の男は、スッカリ狂気に染まった別人のように見える。それに臭気はまるで腐臭のようにその口から、全身から放たれていて、正直顔を背けたくなる程だ。背後の女性は怯えているのか身動きも出来ずに、ただ雨の中で荒い息を吐いているのがわかる。

「退けっていってんだろぉ!!」

悪意が吹き出すような腐臭が風になって男から吹き付けてくるのに、忠志は眉を潜めて思わず腕で口許を覆う。その姿に目の前の男はまるで憤怒の鬼のように顔を染めて、ギジギジと奥歯を噛みしめて怒号をあげた。

「そんなに臭いか!腐った臭いでもするか?!ああ?!」

その声と同時に男は、まるで両の手を鉤爪のようにして忠志に向かって掴みかかってくる。異様な臭気を放っていても一見すればただの人間にしか見えない男に、忠志は一瞬戸惑いながらも合気道で腕をとると足を払った。

「うあああっ!!」

揉んどりうって仰向けに倒れこむ姿に、忠志は背後の女性を振り返り咄嗟にその腕をとると立ち上がらせる。雨に濡れた細い腕は冷えきって氷のようで意識はあるが失神しかけてもいるのに、やむを得ず真っ青なままの女性を立ち上がらせ抱きかかえた。

「逃げるぞ!」
「だめ、あれ……が。」

震えるような彼女の声がそう告げたのに、女性を抱きかえた忠志は弾かれたように背後の男を見た。ノソリと起き上がった男はまた腐臭を漂わせながらこちらに飛びかかろうとしているが、見下ろした腕の中の彼女の瞳は全く男を見ていない。その瞬間忠志はこの二人のどちらもが微かな木気を宿しているが、女性の方が義人に近いと本能的に感じとる。その瞳が男ではなく、もっと背後の暗闇に何か別なものを見透かしているのだ。

「くる……。」

そう震える声が呟いくのと殆ど同時に腐臭が強まり、愚鈍に立ち上がった男の背後に巨大な闇を浮かび上がらせた。男はまだ何も背後の異変に気がついていないのは男の木気がほんの微かな閃き程度だからなのか、それとも激しすぎる雨の音のせいなのかは理解できない。
ズズズと地面が盛り上がってくるような巨大な闇。
それが自分の背後にせり上がってきているのに、男は全く気がつきもせず忠志と女性を憤怒に染まった眼で睨み付けている。

「それは、俺の奴隷だ……俺だけの雌犬だ!俺の所有物だ!!」

ゾッとするような言葉を何度も繰り返しているのに、背後の異形にはまるで気がつかない男の瞳は完全に狂気に呑まれているとしか思えない。目の前の二人の目が自分自身ではなく、背後に立ち上がった闇を見ているのにも全く気がつかないで男は奥歯を軋らせながら歪に笑う。

「よこせ。アキは俺のもの…………。」

その瞬間雷鳴と共に世界が真っ白に染まる。その時始めて男は、自分の背後に何か巨大なモノが迫っているのを知った。目の前の二人は落雷に真っ白に変わったのに、自分は完全な闇の中に立っていて、それが直ぐ背後にいる何かの影に自分がスッポリと入っていたからだと気がついたのだ。初めて自分のものではない腐臭を感じ取ったのに、男の顔が強張りユルユルと背後を振り返る。

「よせ!!見るな!」

目の前の見ず知らずの若い金髪の男に叫ばれても、男は振り向くのを止めなかった。闇の中に自分が嗤ったのと同じような半円の口が現れ、クハァと生臭い腐臭を男の顔に向かって放つ。耳障りなギジギジと歯を軋らせる音をたてて、自分の頭なんか一飲みにしてしまうほどの巨大な獣の口が男の目の前に開く。激しい雨音の中に何かが囁くような声が聞こえたかと思うと、そのモノの口から吹き上がった黒い靄に男は悲鳴もあげずに一瞬で飲み込まれた。

ヤバいっ!

靄の中から男を助け出すには遅すぎるし、腕に抱えた女性は目の前の光景のせいか強い腐臭のせいであっという間に失神した。咄嗟に紅玉に眼を光らせた忠志が一瞬で異装を纏い中空に飛び上がった瞬間、目の前の闇は男を踏み越えて寸前に二人がいた場所に飛びかかってくる。巨大な虎はハリネズミのような鋭い体毛を逆立てて、闇の中から這い出すと前足の付け根の翼を震わせた。

「窮奇っ…………。」

こんな都市の近くで、しかも人間一人抱えた状況で人外と鉢合わせるなんて。グッタリした女性を抱えながら炎を放つわけにもいかない上に、雨足が強く気を抑えながらでは思ったように飛んでいられない。それを知っているように飛び上がった窮奇の巨大な口がガチンッと噛み合わされ、寸でのところで避けた朱雀は舌打ちする。

《ぉまえゴト》

男の方は一瞬で喰われたのか。緋色の異装を翻して飛ぶ朱雀には、遥か眼下の足元の状況まで見る余裕がない。それを知っているように何度も何度も窮奇の口が音を立てて噛み合わされて、朱雀の体スレスレを腐臭撒き散らして掠める。

《おまぇゴト、喰いつくして、ヤル》
「くそっ!」

激しい雨脚と抑え込むしかない状況で、放つ火球の威力が半分にもならない。このままじゃヤバいと分かっているが、能力を少しでも解き放って腕に抱えた女性を燃やしてしまうわけにもいかないのだ。バチバチと腕の中で何かが弾ける様な感覚を覚えながらも、力を押さえ込もうとする意識と全力で開放したいという本能がせめぎあうのを感じながら朱雀は息を詰めた。

守らなきゃ…絶対に………あいつからも…炎からも………っ!!

延ばした左腕の先で弾ける炎の渦が空気を震わせながら、対峙していた巨大で闇色に染まった虎のような姿をしたものに向かって襲い掛かった。予想以上に激しい炎の渦に鋭い金属を思わせる悲鳴を上げて窮奇が、地表を抉りつけながら仰け反り風の刃を音を立てて放つ。何とかギリギリで飛び退きながらも掠めた風に朱雀の右足に焼けるような痛みが走った。

「ぅっ!!くそ…っ!!」

腕の中の体は完全に気を失って手に重い、薄く線を引いただけのような右足の傷口から驚くほど大量に溢れ出す血の臭いが鉄サビのように宙に散り辺りに漂う。やむを得ず竹林に飛び降りると、ジャリとざらつく様な足音を立てて立ち塞がったものは邪悪に嘲るような嘲笑を零した。

≪五代でぁれば、ワレを滅ぼセただろぅになぁ………未熟だナ…。≫

ハハァと口から何人もの声が重なるような嗤い声が溢れ落ち、窮奇は巨大な体を揺すってジリジリと距離を詰め始める。

「黙れ………。」

目の前の窮奇の顔が、一層大きく真一文字に横に裂けていく。顔の殆どが口になってその眼窩が何処にあるのかも分からないおぞましい姿を眼前にして、朱雀は鋭くきつい視線でそのモノを見据えた。

≪怯えロ、何も出来なぃ無力さト無念さに。……怯ェながら、餌二なるがぃい。≫

口からではない声に向かって、それでも朱雀は迷う事無く視線をぶつけながら自分ができる最善の方法が何かを必死に考えていた。雷鳴が再び周囲を光で染め、微かな空気の振動のような感覚に朱雀の何かが気がつく。そしてその瞬間朱雀は意味ありげにその唇に笑みを敷いた。

≪?≫

目の前の人外は人間の姿ではなく本体のまま。つまり、あの時の戦闘の傷が完全に癒えている訳ではないし、あの時程の能力があるわけではない。そして自分はあの時と同じではないと、目の前のモノはしらないのだ。

「策を弄するものは策に溺れるか、いいこと言うよな?青龍……。」

呟くようなその声を零した瞬間、朱雀を抱き上げた女性ごと引き裂くつもりなのか背後から激しい一陣の風の刃が迫っていた。何本もの自分の腕より太い孟宗竹を寸断する風に薙ぎ払われる直前に、待ち構えていたように朱雀は矢のように女性を抱えて飛び上がりながら風に乗せるように炎を放った。

≪―?!っがあぁぁあぁっ!!≫

まるでガスに触れたように爆発的に燃え上がる焔が、窮奇の開かれた巨大な口に向かって襲いかかる。予想もしていなかった真正面から口の中に炎を突きこまれる衝撃に、そのモノはは大きく体を仰け反らせた。

「朱雀!!」

黒衣を翻し駆け寄った長身の青年が、朱雀の右足の傷を押さえ込むと、直ぐ水気でうっすらとではあるが傷を塞がれるのを自覚する。青龍の風の刃に寸断された何本もの孟宗竹が、雨音のような音を立て葉を散らしながら倒れていく。

「ヤス、この人頼む。俺押さえながら力使うの…っ…………限界だっ!」

ハッとしたように腕の中の女性を抱きうけた瞬間玄武の表情が僅かに険しくなったのを感じながらも、フワリと朱雀はまるで鳥が羽ばたくように緋色の気配を纏い体を宙に浮かせた。激しい雨が朱雀の体から吹き出す熱気で体に触れる前に蒸発して、靄に変わっていく。

「朱雀!」

背後で女性を抱えた玄武が自分の放つ熱気を、その身から放たれる冷たい気で中和するのを感じ朱雀は内心安堵の息を漏らしながら今まで抑えていた全てを開放した。

≪?!!!≫

口の中を焼かれたそのモノは今までより遥かに強いその火気の気配に、音にならない悲鳴のような呻きを上げてジリジリと後退る。全身から放たれる火気に水滴が一度に蒸発して竹林の足元を覆い隠すような靄に変わっていく。

「俺が劣ってるって言ったこと…後悔させてやるよ。」

痛みと怒りで高揚するかのような鋭く激しい声音に、その周囲の全てが熱を持ったようにチリチリと音を立てて炙られる様な熱を持ち始める。そしてその体は身一つになった事で、まるで滑るように空を切って矢のような速度で目の前のモノに襲い掛かっていた。

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