聖少女暴君

うお座の運命に忠実な男

文字の大きさ
28 / 41
第四章 対抗試合! 茶道部に勝て

4-4 青春の一ページ

しおりを挟む
「おれだ。入るぞ」
「護国寺先生、遅いよ」

 護国寺先生と呼ばれた男性は天文部の顧問。護国寺先生は見上げるほどの長身である。

「もうミーティング終わっちゃったよ」
「すまーん。職員会議が長引いてな」

「ひかりちゃんと話してたんじゃないの?」折笠さんが意地悪そうな顔をする。

 ひかりちゃんとは護国寺先生が片思いしているスクールカウンセラーの小山ひかり先生のこと。

 姫川さんも口元を抑えて笑っている。

「おまえら―‼」
 護国寺先生は怒りだした。

「じゃあ嫌いなの?」姫川さんが問う。

「小山先生のことは好ましい女性だと思っている。だが特別な感情はない」

「ひかりちゃん、彼氏いるらしいですよ」

 折笠さんが護国寺先生の純愛を袈裟斬りする。折笠さんてナチュラル・ボーン・毒舌だ。

「ええっ! 本当か! そ、そうか。ふーん……」

 護国寺先生はまず衝撃を受け、つぎに狼狽し、最後に意気消沈した。かわいそうなくらい元気がない。わかりやすいな。
 
 でもわたしは、護国寺先生のことを良い人だと思う。年齢を重ねると思考が老いていくものだが彼にはそれがない。一〇歳以上年が離れているわたしたちとも気さくに接してくれる。なにより純粋だ。

「元気だしてよ。うっしー」
 姫川さんが年上の先生を慰める。

「誰のせいで元気がなくなったと思ってるんだ」

「わたくしがいるではありませんか。あの告白は遊びだったのですか」

 村雨さんはまだ護国寺先生のこと諦めていないのか。

「いやいやいや。それは誤解です」
 護国寺先生は全力で否定している。教師と生徒の恋愛って、ドラマやコミックでは多いけど実際はどうなんだろう。リスクが高そうだ。

「今日はみんなで飲もう」
「だめに決まっているだろう! 姫川、なにを言ってるんだ」

「お酒飲むとはいってないじゃん。『濃~い、緑茶!』を稀釈して飲もう!」

『濃~い、緑茶!』とは市販されているペットボトル飲料である。

「濃いから美味しいんだろう!」
「だって、眠れなくなるんだもん」

「おまえには付き合いきれん」
 まるで漫才師のようなやり取りに部室が笑いに包まれた。
 護国寺先生、元気だしてくれるといいな。

 先生も合宿には同行する予定だ。だが格闘ゲームで他校試合することは先生には秘密。

「じゃあ、みんなで帰りましょうか」姫川さんが解散の合図をする。
 帰宅ルートに合わせ、わたしは以前のように折笠さんと。村雨さんは姫川さんと一緒に下校した。



 いつものようにわたしこと鳴海千尋は折笠さんと下校した。わたしは1DKのアパートに住んでいるけど折笠さんは9LDKマンションに住んでいる。

 だが彼女が、両親が資産家であることを鼻にかけたことは一度もない。以前見た私服も、必要以上に着飾っていなかった。口は毒舌だが一本筋の通った清々しさを持っている彼女のことが好きになりかけていた。

 七月。初夏の夕闇は絵の具をぶちまけたようで心を揺さぶる。
 通りすがりの親子連れのお子様が泣きだした。

 夕闇にはそれだけの力がある。
 逢魔が刻は魑魅魍魎が跋扈する時間帯なのだ。

「姫川さんて、面白い人ですね」
 わたしは夕闇を瞳に映しながら折笠さんの横顔を見る。

「うん。ヒメはわたしのパートナーだからね」
 彼女の面影が、夕闇に照らされた髪が、必要以上に印象的で忘れられなくなりそう。

「でも、姫川さんて中学時代になにがあったんでしょう。生徒会長をしていた噂は本当なのでしょうか」

「わたしもヒメの中学以前のことは知らない。わたしならヒメの過去を調べられる。でもしない」

「…………」

「どうしてって聞かないの?」

「はい。仲間の過去をえぐるような真似はしたくありません。姫川さんが話してくれるのを待ちます」

「………あなた、良い子ね。ヒメがあなたを選んだ理由、わかった気がする」

 このときの夕日に照らされた折笠さんの笑顔を切り取ることができれば、額縁に飾っておきたい。折笠詩乃という一七歳の少女の青春の一ページとして。それくらい良い顔だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

処理中です...