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欲望のままに
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部屋の扉が開く。講義が全て終わって栄治が帰ってきたのだろうと思い掛け布団を頭の上まで引っ張り上げたが、それはあっさりと引き剥がされた。
「…………秋夜君、おはよう。お寝坊さんだね」
部屋に入ってきたのは雪大だ。落ち着いていた鼓動が激しくなり、股間に血が送られる。
「秋夜君、君は大学を卒業しても僕の友達で居てくれると言ったよね? そう言った次の日に僕を避け始めたよね……君は嘘つきなのかい?」
何も言えないまま綺麗な顔を眺める。
「僕には君しか居ないんだよ? 唯一で最高の友人なんだ。なのに……君が僕から離れたら、僕は、また独りだ。嫌だよ秋夜君、僕はもう誰かと過ごす心地好さを知ってしまったんだ。もう孤独には耐えられないよ……お願い、僕にいけないところがあったのなら直すから、君ともう一度仲良くする方法を教えてくれないかい?」
泣き顔も綺麗だ。泣かせているのは俺だと思うと胸が更に締め付けられる。
「…………なんでもする」
寝転がったままの俺に雪大はとうとう抱き着いてきた。
「なんでもするっ……僕に出来ることならなんでも、お金もいくらでもあげる。だからお願い……僕をひとりにしないで、僕を捨てないで、僕に生きていてもいいって教えていてよ……しゅうや、くん。しゅうやぁっ……お願い、君まで僕を見捨てないで……」
震える背にそっと腕を回すと雪大は真っ赤な瞳を見開いて俺を見つめた。
「…………本当に、なんでもするんだな」
戸惑いを混ぜた表情になりながらも何度も頷いた。
「……今日、雪大の部屋に泊まってもいいか?」
「うん! うんっ……もちろんだよ秋夜君!」
涙を煌めかせて満面の笑みを浮かべた雪大はとても綺麗で、僅かな傷も穢れも許されないと俺に教えているようだった。
「さぁ入って。何をしよう。君の好きなお酒を買っておいたよ、もちろんツマミもある。君が好きだと言っていた作家の本も集めたし、君が気になると言っていたレコードも買った。秋夜君、どれから楽しみたい?」
なんて健気なんだろう。どうして俺なんかに依存してしまったんだろう。
「……雪大」
「なんだい? 秋夜君」
酒を飲める男がどうしてこんなにも無邪気に笑うのだろう。
「雪大だ」
「うん……? 僕は雪大だよ」
なんて可哀想なんだ。産まれた時からの孤独に、常に味わっているだろう疎外感、そしてこれからの暴行……あぁ、本当に可哀想な子。
「雪大を楽しみたい」
「……ふふ、嬉しいなぁ。うん、もちろんだよ、僕も君と楽しみたい。それで何の話を…………え?」
家紋入りの色無地の衿を掴み、胸を露出させた。
「ま、またこんな……もう、この遊びは僕はあまり好きではないよ」
彼が服を整える前に突き飛ばして転ばせ、裾を捲って細長い足を露出させる。
「痛いよ…………え? な、なに……めくらないでよ、秋夜君……こういう、遊びが……あるんだよね……?」
無邪気な笑顔はとっくに消えていて、今はもう藁よりも微かな希望にしがみつく怯えた作り笑顔があった。ずっと触れたかった太腿に手を這わせるとそれすらも消えて、赤い瞳から涙を零した。
「しゅ、ぅ……や…………? あ、あの……何をするつもりなのかな。違う……よね、僕を、なんて……違う…………君は、秋夜君はこんなことしないっ! 秋夜君! ねぇ秋夜君っ! 嘘だよね? 冗談なんだよね……?」
俺の手首を掴んだ雪大の力は弱い。太腿から手を離すと雪大は希望を掴んで笑顔を浮かべたが、膝の裏に手を当てて無理矢理開脚させると再び絶望に落ちた。くるくると変わる表情は子供っぽさを感じさせ、愛おしさを加速させる。
「……履いてないんだな。誘ってたんだろ。前に来た時も……四つん這いになって俺に臀を突き出してさ…………俺に犯して欲しかったんだろ? ごめんな遅くなって。今、してやるから……暴れんなよっ!」
「ちが、うっ……違うっ、違うぅっ! 嫌だっ、嫌だよ秋夜君! やめてよぉっ……!」
雪大は色無地の下に何も着ていない。下着をつけていない。色の薄い男性器も、ほんのりと色付いた後孔も、何もかも丸見えだ。
栄治には男色の趣味はないと何度も断言していた。今だって雪大以外の男のこんな姿を見ても吐き気を覚えるだろう。けれど雪大だったなら生唾を呑み込む光景だ。
こんなことなら男同士の性交についてちゃんと調べておけばよかった。排泄のための場所だが男には穴はここしかないし、多分ここに入れるのだろう。
「こんなとこまで綺麗なんだな……」
とても入りそうにないけれど拡がったりするのだろうか。両手を後孔を調べるのに使おうとすると顔を蹴られた。雪大は俺が怯んだ隙に服を整えることもなく扉に向かう。
まずい、俺が雪大を強姦しようとしたことが周囲に知られたら今度こそ私刑で殺される。退学になるかもしれないし、親兄弟に知らされるかもしれない。
「ま、待てっ!」
帯が解けていないから腹に引っかかったままの色無地を掴み、引き寄せて転ばせ、上に乗って押さえつけた。
「だっ、誰か! 誰か来て! 助けっ……ん、うっ、んぅうーっ! んーっ!」
人を呼ばれないように口を押さえたはいいが、これからどうすればいい。
幸い雪大の力は弱く、片手で彼の両手を彼の頭の上に押さえられているし、しっかり顔を掴んでいるから口を塞いだ手が剥がされることもない、腹の上に乗っているから蹴られることもない。
「お、大人しくしろよ……なぁっ、頼むから、大人しくしてくれよ……」
美しい身体を撫で回したいのに両手が塞がってしまって何も出来ない。キメ細やかな肌に舌を這わせたいのに暴れる彼に口を近付けられない。早く挿入したいのに腹の上に乗っているから性器はどこにも触れない。
彼を押さえつけた体勢のまま、俺はどうすればいいのか分からなくなって固まってしまった。
「…………秋夜君、おはよう。お寝坊さんだね」
部屋に入ってきたのは雪大だ。落ち着いていた鼓動が激しくなり、股間に血が送られる。
「秋夜君、君は大学を卒業しても僕の友達で居てくれると言ったよね? そう言った次の日に僕を避け始めたよね……君は嘘つきなのかい?」
何も言えないまま綺麗な顔を眺める。
「僕には君しか居ないんだよ? 唯一で最高の友人なんだ。なのに……君が僕から離れたら、僕は、また独りだ。嫌だよ秋夜君、僕はもう誰かと過ごす心地好さを知ってしまったんだ。もう孤独には耐えられないよ……お願い、僕にいけないところがあったのなら直すから、君ともう一度仲良くする方法を教えてくれないかい?」
泣き顔も綺麗だ。泣かせているのは俺だと思うと胸が更に締め付けられる。
「…………なんでもする」
寝転がったままの俺に雪大はとうとう抱き着いてきた。
「なんでもするっ……僕に出来ることならなんでも、お金もいくらでもあげる。だからお願い……僕をひとりにしないで、僕を捨てないで、僕に生きていてもいいって教えていてよ……しゅうや、くん。しゅうやぁっ……お願い、君まで僕を見捨てないで……」
震える背にそっと腕を回すと雪大は真っ赤な瞳を見開いて俺を見つめた。
「…………本当に、なんでもするんだな」
戸惑いを混ぜた表情になりながらも何度も頷いた。
「……今日、雪大の部屋に泊まってもいいか?」
「うん! うんっ……もちろんだよ秋夜君!」
涙を煌めかせて満面の笑みを浮かべた雪大はとても綺麗で、僅かな傷も穢れも許されないと俺に教えているようだった。
「さぁ入って。何をしよう。君の好きなお酒を買っておいたよ、もちろんツマミもある。君が好きだと言っていた作家の本も集めたし、君が気になると言っていたレコードも買った。秋夜君、どれから楽しみたい?」
なんて健気なんだろう。どうして俺なんかに依存してしまったんだろう。
「……雪大」
「なんだい? 秋夜君」
酒を飲める男がどうしてこんなにも無邪気に笑うのだろう。
「雪大だ」
「うん……? 僕は雪大だよ」
なんて可哀想なんだ。産まれた時からの孤独に、常に味わっているだろう疎外感、そしてこれからの暴行……あぁ、本当に可哀想な子。
「雪大を楽しみたい」
「……ふふ、嬉しいなぁ。うん、もちろんだよ、僕も君と楽しみたい。それで何の話を…………え?」
家紋入りの色無地の衿を掴み、胸を露出させた。
「ま、またこんな……もう、この遊びは僕はあまり好きではないよ」
彼が服を整える前に突き飛ばして転ばせ、裾を捲って細長い足を露出させる。
「痛いよ…………え? な、なに……めくらないでよ、秋夜君……こういう、遊びが……あるんだよね……?」
無邪気な笑顔はとっくに消えていて、今はもう藁よりも微かな希望にしがみつく怯えた作り笑顔があった。ずっと触れたかった太腿に手を這わせるとそれすらも消えて、赤い瞳から涙を零した。
「しゅ、ぅ……や…………? あ、あの……何をするつもりなのかな。違う……よね、僕を、なんて……違う…………君は、秋夜君はこんなことしないっ! 秋夜君! ねぇ秋夜君っ! 嘘だよね? 冗談なんだよね……?」
俺の手首を掴んだ雪大の力は弱い。太腿から手を離すと雪大は希望を掴んで笑顔を浮かべたが、膝の裏に手を当てて無理矢理開脚させると再び絶望に落ちた。くるくると変わる表情は子供っぽさを感じさせ、愛おしさを加速させる。
「……履いてないんだな。誘ってたんだろ。前に来た時も……四つん這いになって俺に臀を突き出してさ…………俺に犯して欲しかったんだろ? ごめんな遅くなって。今、してやるから……暴れんなよっ!」
「ちが、うっ……違うっ、違うぅっ! 嫌だっ、嫌だよ秋夜君! やめてよぉっ……!」
雪大は色無地の下に何も着ていない。下着をつけていない。色の薄い男性器も、ほんのりと色付いた後孔も、何もかも丸見えだ。
栄治には男色の趣味はないと何度も断言していた。今だって雪大以外の男のこんな姿を見ても吐き気を覚えるだろう。けれど雪大だったなら生唾を呑み込む光景だ。
こんなことなら男同士の性交についてちゃんと調べておけばよかった。排泄のための場所だが男には穴はここしかないし、多分ここに入れるのだろう。
「こんなとこまで綺麗なんだな……」
とても入りそうにないけれど拡がったりするのだろうか。両手を後孔を調べるのに使おうとすると顔を蹴られた。雪大は俺が怯んだ隙に服を整えることもなく扉に向かう。
まずい、俺が雪大を強姦しようとしたことが周囲に知られたら今度こそ私刑で殺される。退学になるかもしれないし、親兄弟に知らされるかもしれない。
「ま、待てっ!」
帯が解けていないから腹に引っかかったままの色無地を掴み、引き寄せて転ばせ、上に乗って押さえつけた。
「だっ、誰か! 誰か来て! 助けっ……ん、うっ、んぅうーっ! んーっ!」
人を呼ばれないように口を押さえたはいいが、これからどうすればいい。
幸い雪大の力は弱く、片手で彼の両手を彼の頭の上に押さえられているし、しっかり顔を掴んでいるから口を塞いだ手が剥がされることもない、腹の上に乗っているから蹴られることもない。
「お、大人しくしろよ……なぁっ、頼むから、大人しくしてくれよ……」
美しい身体を撫で回したいのに両手が塞がってしまって何も出来ない。キメ細やかな肌に舌を這わせたいのに暴れる彼に口を近付けられない。早く挿入したいのに腹の上に乗っているから性器はどこにも触れない。
彼を押さえつけた体勢のまま、俺はどうすればいいのか分からなくなって固まってしまった。
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