過労死で異世界転生したのですがサキュバス好きを神様に勘違いされ総受けインキュバスにされてしまいました

ムーン

文字の大きさ
343 / 604

魔王VS勇者……?

しおりを挟む
俺を抱えて逃げ出したネメスィは簡単に魔神王に追いつかれてしまった。

「ねぇ、ねめしぃ。なんで逃げるの?」

「叔父上様……お願いします、サクを殺さないでください」

俺を腕で抱き締め、ネメスィは珍しく怯えている。

「うん? だから後で作ってあげるってば」

「この子じゃなきゃダメなんだ!」

ネメスィは背に生やした翼を大きく広げ、帯電させる。

「……水」

魔神王の頭上の光輪が輝いたかと思えば彼を包むように水球が現れ、ネメスィが打ち出した電撃はその水に散らされた。

『ねぇねぇサッくん、魔神王は昔山ほどいた天使を全員食って、取り込んで、全属性を手に入れてるんだけど……せいぜい雷属性だけのスライムもどきが殺されるには何秒かかると思う? ボクが助けてあげようか?』

『…………ネメスィは甥っ子なんだ、殺されるわけない』

二度と邪神に懇願なんてしない。

「どうしたのねめしぃ、反抗期? それは邪神なんだよ、力をつける前に消さないと」

「邪神に乗っ取られているが、サクなんだ。俺の愛しい人なんだ……頼む、叔父上様」

「…………火」

魔神王の手に真っ赤な炎が宿る。

「城にあるねめしーの脳のコピー、何年前のだったかな……まぁ、仕方ないか。出来るだけ一瞬で燃やしてあげるから避けないでね。ねめしぃ」

俺の予想はまた外れた。魔神王はネメスィごと俺を燃やしてしまうつもりだ。

「叔父上様……?」

「ちょっと熱いだけだからねー」

「……仕方ないな。防護結界展開、属性付与、水」

女神は俺の体を操ってネメスィの前に魔法陣を描き、火球を防いだ。

「…………やぁ、ニャルラトホテプ。なかなか動かないから心配してたんだよ。随分可愛い見た目だね」

「ネメスィだっけ、地上に降りなよ。空中じゃ上手く動けないだろ」

「……あぁ」

翼を畳んだネメスィは王都の屋敷の屋根に着地し、空を見上げて魔神王の居場所を探った。

「来ない……? いや……」

ネメスィは翼を触手に変えて先端に目玉を作り、全方位を警戒し始める。

「……おい、邪神。お前さっき防御したな」

「感謝してよ。彼、キミごとやるつもりだよ。ひどい叔父さんだねぇ」

「…………どうすればサクを返してくれるんだ? 分かるだろう、叔父上を倒すなんて不可能だ」

「んー、まぁ、とりあえず守ってよ。ほら、来るよ」

ネメスィの目玉がみな一点を見つめる。そこにはいつの間にか真っ白な少年が立っていた。

「ネメスィ、彼も無闇に住人を殺したり出来ないだろう。遠慮なく人混みに逃げ込むんだよ」

「……邪神らしい助言だ」

何をするでもなく立っている魔神王は非常に不気味だ。

「僕の言うこと聞かないなんて……もう、仕方ないこだなぁ」

魔神王の背にまた翼が生える。その翼が逆立ち、バチバチと空気が弾ける音が響き渡る。

「ねめしぃ、雷の使い方を教えてあげるよ」

魔神王は両手を使って金属片を弾いている。翼で生まれた電気がそこに貯められていくようにも見えた。

「荷電粒子って分かる? それをどんどん加速させてねぇ……ま、溜めが長すぎて使いにくいけど破壊力は抜群だよ」

ネメスィは屋根を蹴って空中に飛び上がる、直後に魔神王の攻撃が行われ、王都の三分の一が消滅した。

「ねぇ、ねめしぃ。こういうこと言うの嫌なんだけどさぁ……僕に勝てると思うなんてバカだよ」

魔神王は無闇に住人を殺したり出来ないと言ったのはどこの誰だ。今、何万人もの人間が一瞬で死んだぞ。

「叔父上様っ……俺はあなたに言われた通り魔物から人間を守ってきました。その人間をあなたが殺戮するとは何事ですか!」

「僕はこの島の平和を守れと言ったんだよ。魔物と共生できない人間ばかりが住んでいるなら一度殺して魔物に転生させた方が早い、もっと早くそうするべきだったね」

「そんな……叔父上様、俺は、俺は今まで……」

「ネメスィ、早く逃げなよ。魔力の流れが変わってる、大技が来るよ」

「今の以上があるのか!? クソっ……!」

俺の身体を勝手に使った女神の助言により、ネメスィは王城の方角へ走り出す。みんなが居た方角だ、逃げるよう言うつもりなのだろう。

『……大技はボクにも防げないね、直撃したらまずい』

『お、お前魔力奪うんじゃなかったのかよ、何してんだよっ……』

『魔神王が魔力使い続けてるから接続難しくて~、っていうか……あれあれ? キミはボクに勝って欲しいのかな?』

『……みんなに死んで欲しくないだけだ』

王城横の広場で立ち止まり、周囲を見回す。みんなを探している様子のネメスィの腕の力は少しずつ強くなっていき、抱えられている俺の腕が痛む。

「カタラ……? どこに……おい、邪神。他の連中の居場所を探知するような術は使えるか?」

「出来るけど……」

「けど? なんだ」

「先に逃げた方がいいんじゃないかな?」

俺を乗っ取った女神が指したのは空、王都を包むように広がっていく黒雲だ。ネメスィの頭上はまだ青空だが、すぐ目の前に滝のような豪雨が迫っている。

「まさか雨から逃げることになるとはな」

黒雲は王都全体を飲み込んで増幅をやめ、ネメスィが逃げ切ったのを確認したかのように雨は止んだ。ネメスィの目の前にまた魔神王が降り立ち、虹色の瞳を輝かせて指を鳴らした。

「……氷」

魔神王の指先から冷気がほとばしる。冷気はネメスィを避けて王都へと到達し、雨に濡れた王都を完全に凍結させた。あの氷の下で生きられるモノは居ないだろう。

「え……? お、叔父上様……何を、何をっ……そんな、これでは、王都の者達は!」

「言ったろ、一度殺して魔物に変えるって」

神聖な雰囲気こそあるものの、やはり奴は魔王だ。

「ネメスィ……ネメスィならできる! 勝てるよ! 勇者は魔王を倒すものなんだから!」

「……サク? サクなのか?」

「え? あっ……今、俺…………あははっ、ちょっと交代してあげちゃった。やる気出た? サッくんは応援してるみたいだよー?」

違う、俺は今何も言っていない。全部女神の演技だ。これは俺が親しんだRPGなどではない、ネメスィに勝算がないのは分かりきっているのにあんな無責任な言葉俺が使うものか。

「……ねめしぃ、本当にサクなんて居るの? 最初から全部そいつの演技じゃないって言い切れる?」

「な、何を……サクはサクだ、俺の……俺の大切な……」

ネメスィの指が俺のチョーカーに触れる。

「…………どちらの魂が出ているかも分からないで、大切なんてよく言える」

魔神王は俺が話したのではないと分かっているようだ。

「……黙れ」

「ねめしー?」

「黙れっ! 俺はネメスィだ、甥の名前も呼べずによくも叔父などと……! 俺の親友を殺した貴様をもはや叔父とは思わない! 人間を虐殺する貴様を魔神王とは認めない! 今ここで討つ! サク……見ていてくれ、信じていてくれ、勇者は邪悪の王を倒す者だ」

違う、それは俺の言葉じゃない。いくら叫んでもネメスィには届かない、止めたくても身体は動かない、女神の下卑た笑いを聞いていることしか出来ないのだ。
しおりを挟む
感想 156

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

処理中です...