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証拠隠滅と交渉の失敗
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今日は晴天だ、雲ひとつない。どこまでも広がる憂鬱な青から目を逸らすように俯いて歩いた。
「やっぱ曇りの日が好きだな……」
父は筋金入りのパチンコ狂いだ。十時に開店するパチンコ屋に一時間程度前から並ぶ。俺と住んでいた頃からその生活リズムは変わっておらず、父は物陰に潜んだ俺に気付くことなく家を出てパチンコ屋へと向かった。
「……鍵の隠し場所も変わってない」
鍵をポケットに入れたまま上着を質に入れたり、酔って鍵を落とすことの多い父は鍵をメーターボックスに隠している。
「……開いた」
酒とタバコの匂いで鼻が曲がりそうだ。
「カメラ、あった! これだ、これで撮られた、これ覚えてる……!」
ビデオカメラを見つけた。幼い頃これを構えた父に犯された経験を思い出し、通学用の鞄にビデオカメラを押し込む。
「パソコンとかにもデータ入ってるかな……」
あっという間に大負けでもしない限りパチンコの閉店時間まで父が帰ってくることはないだろうから、ゆっくり調べても大丈夫だろうと父のパソコンを立ち上げる。パソコンが置かれた机に財布を見つけた。
「えっ……財布?」
どうしてパチンコに行くのに財布を持って行っていないんだ? ヤツは生活費とパチンコ費で財布を分けるような知能を持っていないはずだ。つまりここに財布があるということは──
「あークソ、財布忘れた……ぁん?」
──単に父が財布を忘れただけというクソみたいな現実。どうして今日に限って忘れるんだ、どうして俺はこんなに運が悪いんだ。
「…………何してんだお前、どうやって入った」
「ぁ……」
合鍵を渡されてすらいない俺がここに居る正当な理由が思い付かない。
「金取り返しに来たのか?」
父の目は父の財布を握っている俺の手に向く。
「ち、違うよ……財布持ってってないなんて思わなかったし」
「……それもそうだな。じゃあ留守中の家に用事があったって訳か、何の用事だ? ぁ?」
財布を俺の手から奪い取り、俺の頬に平手打ちを食らわせ、流れるように俺の鞄を奪った。鞄に押し込んでいたビデオカメラを見つけた父は下卑た笑みを浮かべた。
「ハメ撮り消しに来たのか、そうだろ? ん?」
「…………お願いします」
ハメ撮り写真や動画を消すという当初の目的はもう達成出来ない。許しを乞うて殴られて、上納金の値上げなんかを条件に今回は見逃してもらえるかもしれない。だが、それでは今まで通りだ。俺は一か八か勝負に出た。
「ハメ撮り、消してください。俺と縁を切ってくださいっ……!」
埃やゴミだらけの床で土下座をする。
「お金は百万ほど払います。お願いします、縁を切ってください!」
「……二ヶ月ちょいの金でお前を手放すと思ってんのか? 売れっ子オナホちゃんよぉ。なんでまたそんなこと言い出したんだお前」
父は俺の下げた頭を当然のように踏み付けながら好奇心だけで尋ねてきた。
「…………好きな人が出来たんです。その人と一緒に暮らしたい……ちゃんと生きたいんです、お願っ、痛っ……!」
ダンッと強く頭を踏まれ、床で額を打つ。痛みに怯むと父は俺の髪を掴んで頭を持ち上げた。
「そうか、好きな人が出来たか」
「……はい」
「そうかそうか……お父様に紹介してくれよ、連れてこい、お前がどういう人間がしっかり知ってもらうためにハメ撮り上映会しないとな」
「やだっ……嫌、絶対に知られたくないっ、だからお願いハメ撮り消してっ、俺と縁切ってくださっ……!」
髪を左手で掴まれたまま右手で強く頬を殴られ、ブチブチと毛の抜ける音と共に汚い床に倒れ込む。
「……お前のせいでっ! お前が産まれたせいで! めぐみが死んだんだ、俺のめぐみが! 何が好きな人が出来ただ、何がちゃんと生きたいだ! 俺のめぐみを殺しておいて!」
蹴られて慌てて身体を丸める。こんなふうにガッツリ暴力を振るわれるのは久しぶりだ。
「はぁっ……はぁっ……クソっ! いいか、お前は一生! 俺のために稼ぐんだよ、絶対に離さねぇからな」
「…………父さん」
「……あぁ?」
「流れますようにって意味で名前付けたって言ってたよな。アレってさ……流産すればよかったって、そういう意味だったの?」
父は深いため息をついて俺の傍に屈んだ。
「……そんな意味のはずないだろう、我が子に死ねばいいなんて意味で名前を付ける親が居ると思うか? ちゃんと願いを込めているよ……とでも言えばお前は縁を切りたいなんて言わずに金を稼いでくるのか?」
俺の目をじっと見つめ、鼻で笑う。
「妊娠が分かってから、めぐみはお前の話ばかりするようになった。お前の名前を考えろだの、お前のために酒とタバコをやめろだの、お前のためにもっと広い家に引っ越したいだの……いつも膨れた腹ばかり撫でて俺のことを見なくなった」
母は俺が産まれるのを望んでくれていたのか。母が生きていれば誕生日にケーキを買ってくれただろうか。
「売春婦のくせに聖母ヅラして、男に媚びないと生きていけないくせに俺を蔑ろにして……めぐみの関心を奪ったお前なんかを俺に愛せと要求してきた。俺はお前の存在が分かった瞬間からずっと妬ましくて、憎くて仕方なかった」
「…………」
「俺はめぐみに好かれるために努力したのに、お前はめぐみの腹に居るってだけでめぐみに愛されたんだ、許せるわけないだろ? 流れればいいと思ったさ、めぐみの身体を冷やさせたり努力もした! なのにお前はしぶとく生き残って、めぐみの愛情どころかめぐみの命さえ奪った、俺から全てを奪っておいて何が好きな人だふざけるな! 幸せになんてさせてたまるか……!」
「……そんなに、俺のこと嫌いになるなら……なんで避妊しなかったんだよ」
また顔を殴られた。
「あぁ……クソっ、もう開店時間だ。いい台を取られちまう。お前のハメ撮りはこの家を燃やしたって無駄だ、クラウドに保存してる分もあるからな。ハメ撮りを消す話も、縁を切る話もなし、来月は六十万俺に渡せ、そうすれば許してやる」
父は財布を引っ掴んで慌ただしく家を出ていった。俺は顔と身体の鈍痛に呻きながら起き上がり、目元を拭った。
「………………バカだな、俺」
ハメ撮りのデータが全て目に見える形で置いてあるなんて、父が交渉に応じてくれるなんて、ありえないことだと少し考えれば分かったことだ。
「……うわぁ」
身体が痛くて立ち上がる気になれず、ビデオカメラを操作してみると小学生の頃の俺が映っていた。これを持って警察にでも行けば父は逮捕されるだろうけど、キョウヤに近親相姦が知られてしまう。だから通報はナシだ。
「………………ぁ」
保存されている動画を遡っていくと、最初のいくつかの動画は俺のものではないことに気が付いた。俺によく似た女性が映っている、俺の指は自然と再生ボタンを押していた。
『奮発して買っちゃった。試し撮りしないとね~。ふふ、レイン、あなたのビデオたくさん撮りたいなぁ。早く顔が見たい……ふふふ』
最初の動画は短いものだった。けれど、映っていた妊婦が母であることと、このビデオカメラは母が買ったものであることが分かった。とても価値のあるものだ。
「……次、は」
形見のビデオカメラで俺のハメ撮りなんて撮影した父に怒りを覚えつつ、次の動画を見る。
『……レイン、私あなたに会えないかもしれない。私の身体、出産に耐えられるか微妙なんだって…………あの人には内緒よ、私を優先しろって言っちゃいそうだから。でも遺書にはちゃんと書く、このビデオカメラをあなたに渡してねって……ふふ、お母さんね、いいこと思いついちゃったの』
小さな画面の中の美女はずっと俺に話しかけている。
『誕生日おめでとう! 五歳になったのね、レイン。来年は小学校ね、お兄ちゃんらしくなってきたかな? お父さんとは仲良くしてる? 一緒に居られなくてごめんね、でもお母さんはいつもあなたの味方よ。愛してる、レイン』
『誕生日おめでとう! とうとう二桁、十歳ね。ごめんなさい、本当はちゃんと一歳ごとに撮りたかったんだけど……十歳、十歳かぁ……レイン、どんな子になったのかな、見たかったな…………ふふふっ、私がしぶとく生きてたらこれ消さなきゃ恥ずかしいな……レイン! 愛してる!』
『誕生日おめでとう! とうとう十五歳ね。もうお父さんの背抜かしたかな? 私に似てたら学校でモテるでしょうね、お父さん似だったら……ふふ、ひねくれたところが似てなければ大丈夫よ。あなた、レインのことずっと任せっきりでごめんなさい、あなたのことだから過保護にして鬱陶しがられてるんじゃない? 思春期なんだから程々にね。レイン、愛してる。大好きよ!』
『誕生日おめでとう! もう二十歳なのね──』
慌てて再生を止める。俺はまだその誕生日を迎えていない、迎えた時に見たいからこれはまだ置いておこう。
「…………母さん」
俺が産まれることを望んでくれていた唯一の人、自分の命と引き換えになるかもしれないと分かっていながら俺を産んでくれた人……どうしてあなたがここに居ないの?
「母さん……母さんっ、ごめんなさい、父さんと仲良く出来てないっ、ごめんなさい……でも、でも、俺幸せになるからっ、好きな人見つけたんだ、絶対幸せになるから!」
自分の命の価値がようやく分かった。安易に命を捨てようとした自分に腹が立った、父に穢された程度で幸せを諦めようとした自分が情けなくなった、そして何より母がこんなにも愛してくれた俺を苦しめ続けた父が憎くなった。
「…………俺も大好きだよ、母さん」
ビデオカメラを抱き締め、丁寧に鞄に入れ、全身の鈍痛に似合わない穏やかな気持ちで父の家を去った。空を見上げると爽やかな青がどこまでも広がっていた。
「やっぱ曇りの日が好きだな……」
父は筋金入りのパチンコ狂いだ。十時に開店するパチンコ屋に一時間程度前から並ぶ。俺と住んでいた頃からその生活リズムは変わっておらず、父は物陰に潜んだ俺に気付くことなく家を出てパチンコ屋へと向かった。
「……鍵の隠し場所も変わってない」
鍵をポケットに入れたまま上着を質に入れたり、酔って鍵を落とすことの多い父は鍵をメーターボックスに隠している。
「……開いた」
酒とタバコの匂いで鼻が曲がりそうだ。
「カメラ、あった! これだ、これで撮られた、これ覚えてる……!」
ビデオカメラを見つけた。幼い頃これを構えた父に犯された経験を思い出し、通学用の鞄にビデオカメラを押し込む。
「パソコンとかにもデータ入ってるかな……」
あっという間に大負けでもしない限りパチンコの閉店時間まで父が帰ってくることはないだろうから、ゆっくり調べても大丈夫だろうと父のパソコンを立ち上げる。パソコンが置かれた机に財布を見つけた。
「えっ……財布?」
どうしてパチンコに行くのに財布を持って行っていないんだ? ヤツは生活費とパチンコ費で財布を分けるような知能を持っていないはずだ。つまりここに財布があるということは──
「あークソ、財布忘れた……ぁん?」
──単に父が財布を忘れただけというクソみたいな現実。どうして今日に限って忘れるんだ、どうして俺はこんなに運が悪いんだ。
「…………何してんだお前、どうやって入った」
「ぁ……」
合鍵を渡されてすらいない俺がここに居る正当な理由が思い付かない。
「金取り返しに来たのか?」
父の目は父の財布を握っている俺の手に向く。
「ち、違うよ……財布持ってってないなんて思わなかったし」
「……それもそうだな。じゃあ留守中の家に用事があったって訳か、何の用事だ? ぁ?」
財布を俺の手から奪い取り、俺の頬に平手打ちを食らわせ、流れるように俺の鞄を奪った。鞄に押し込んでいたビデオカメラを見つけた父は下卑た笑みを浮かべた。
「ハメ撮り消しに来たのか、そうだろ? ん?」
「…………お願いします」
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「ハメ撮り、消してください。俺と縁を切ってくださいっ……!」
埃やゴミだらけの床で土下座をする。
「お金は百万ほど払います。お願いします、縁を切ってください!」
「……二ヶ月ちょいの金でお前を手放すと思ってんのか? 売れっ子オナホちゃんよぉ。なんでまたそんなこと言い出したんだお前」
父は俺の下げた頭を当然のように踏み付けながら好奇心だけで尋ねてきた。
「…………好きな人が出来たんです。その人と一緒に暮らしたい……ちゃんと生きたいんです、お願っ、痛っ……!」
ダンッと強く頭を踏まれ、床で額を打つ。痛みに怯むと父は俺の髪を掴んで頭を持ち上げた。
「そうか、好きな人が出来たか」
「……はい」
「そうかそうか……お父様に紹介してくれよ、連れてこい、お前がどういう人間がしっかり知ってもらうためにハメ撮り上映会しないとな」
「やだっ……嫌、絶対に知られたくないっ、だからお願いハメ撮り消してっ、俺と縁切ってくださっ……!」
髪を左手で掴まれたまま右手で強く頬を殴られ、ブチブチと毛の抜ける音と共に汚い床に倒れ込む。
「……お前のせいでっ! お前が産まれたせいで! めぐみが死んだんだ、俺のめぐみが! 何が好きな人が出来ただ、何がちゃんと生きたいだ! 俺のめぐみを殺しておいて!」
蹴られて慌てて身体を丸める。こんなふうにガッツリ暴力を振るわれるのは久しぶりだ。
「はぁっ……はぁっ……クソっ! いいか、お前は一生! 俺のために稼ぐんだよ、絶対に離さねぇからな」
「…………父さん」
「……あぁ?」
「流れますようにって意味で名前付けたって言ってたよな。アレってさ……流産すればよかったって、そういう意味だったの?」
父は深いため息をついて俺の傍に屈んだ。
「……そんな意味のはずないだろう、我が子に死ねばいいなんて意味で名前を付ける親が居ると思うか? ちゃんと願いを込めているよ……とでも言えばお前は縁を切りたいなんて言わずに金を稼いでくるのか?」
俺の目をじっと見つめ、鼻で笑う。
「妊娠が分かってから、めぐみはお前の話ばかりするようになった。お前の名前を考えろだの、お前のために酒とタバコをやめろだの、お前のためにもっと広い家に引っ越したいだの……いつも膨れた腹ばかり撫でて俺のことを見なくなった」
母は俺が産まれるのを望んでくれていたのか。母が生きていれば誕生日にケーキを買ってくれただろうか。
「売春婦のくせに聖母ヅラして、男に媚びないと生きていけないくせに俺を蔑ろにして……めぐみの関心を奪ったお前なんかを俺に愛せと要求してきた。俺はお前の存在が分かった瞬間からずっと妬ましくて、憎くて仕方なかった」
「…………」
「俺はめぐみに好かれるために努力したのに、お前はめぐみの腹に居るってだけでめぐみに愛されたんだ、許せるわけないだろ? 流れればいいと思ったさ、めぐみの身体を冷やさせたり努力もした! なのにお前はしぶとく生き残って、めぐみの愛情どころかめぐみの命さえ奪った、俺から全てを奪っておいて何が好きな人だふざけるな! 幸せになんてさせてたまるか……!」
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父は財布を引っ掴んで慌ただしく家を出ていった。俺は顔と身体の鈍痛に呻きながら起き上がり、目元を拭った。
「………………バカだな、俺」
ハメ撮りのデータが全て目に見える形で置いてあるなんて、父が交渉に応じてくれるなんて、ありえないことだと少し考えれば分かったことだ。
「……うわぁ」
身体が痛くて立ち上がる気になれず、ビデオカメラを操作してみると小学生の頃の俺が映っていた。これを持って警察にでも行けば父は逮捕されるだろうけど、キョウヤに近親相姦が知られてしまう。だから通報はナシだ。
「………………ぁ」
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『誕生日おめでとう! もう二十歳なのね──』
慌てて再生を止める。俺はまだその誕生日を迎えていない、迎えた時に見たいからこれはまだ置いておこう。
「…………母さん」
俺が産まれることを望んでくれていた唯一の人、自分の命と引き換えになるかもしれないと分かっていながら俺を産んでくれた人……どうしてあなたがここに居ないの?
「母さん……母さんっ、ごめんなさい、父さんと仲良く出来てないっ、ごめんなさい……でも、でも、俺幸せになるからっ、好きな人見つけたんだ、絶対幸せになるから!」
自分の命の価値がようやく分かった。安易に命を捨てようとした自分に腹が立った、父に穢された程度で幸せを諦めようとした自分が情けなくなった、そして何より母がこんなにも愛してくれた俺を苦しめ続けた父が憎くなった。
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