英雄たちのその後は?

しゃもん

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第三章

16.再び戦場へ?

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 執務室に入ってきたレリックは、いきなり信じられない告白を始めた。

「ごめんよ、メグ。君の気持ちは、さっきアンジェから聞いたよ。でも……やっぱり僕は……」

 ――いや、それ、思いっきり誤解だから。  
 やめてぇー……!  
 なにを、もじもじしてるんだぁー!

 メグが思わず頭を抱え、叫び出しそうになったその時、  
 レリックの背後にある扉を警護していた近衛兵から、入室を求める声が聞こえた。

 セドリックが許可を出すと、数日前に見知った人物が扉から現れた。

「隊長!」

 まだグダグダと、言い訳めいたことを呟いていたレリックに、  
 副隊長のレイが何かの巻物を突きつけた。

「なんだ?」

「……なんで、いつもいなくちゃならないときに、あなたはいないんですか。」

 小さな声でぶつぶつと文句を言った後、レイは巻物を読むよう促した。

 レリックは黙って巻物を受け取り、開いて読み始めた。

 そこには、国境にある砦からの緊急要請――  
 隣国が攻めてきたため、応援を求めるという、切迫した内容が乱れた文字で綴られていた。

「あらあら。やっぱり始まっちゃったか。」

 横から巻物を覗き込んだメグが、軽い調子で呟いた。

 その言葉に、レリックが顔を上げ、彼女を睨みつけた。

「メグ! 戦争が始まろうって時に、なんでそんな軽いことを言ってるんだ!」

 メグは両肩をすくめて軽く流したが、それがレリックをさらに激昂させた。

「メグ!」

「隊長、気持ちはわかりますが、それより応援要請をどうするんですか。」

 レイの冷静な声に、レリックは後ろにいるセドリックを振り返った。

 セドリックは無言で頷いた。  
 なぜか、アンジェまで頷いていた。

 ――うんざり。

 メグは内心でため息をつきながら、そろそろと執務室の扉に近づいた。

 そこに、アンジェの止めの一言が放たれた。

「メグ、くれぐれも気をつけてね。」

「はあぁ? なんで私が気をつけるの?」

「わかってるわ、メグ。ツンデレね。」

「……ツンデレ?」

「大丈夫よ。あなたはレリックの部下になったんだから、一緒に戦場に行けるから。」

「はあぁー!? 戦場!? なんで私がそんなところに行かなきゃならないのよ!」

「そりゃあ、私のおかげでレリックの部下になれたんだから、一緒に行けるに決まってるでしょ。安心して頂戴♪」

 ――安心もしないし、一緒に行きたくもない!

 メグが憤慨していると、彼女の背後から呟きが聞こえた。

「無事に王宮から出られたということで、すぐに私を男娼担当に変えてください。  
 お約束、くれぐれもお忘れなく。」

 ホソイはそう言い残すと、満足げに執務室を出て行った。

 ――くそっ。  
 王宮から市井に戻るんじゃなくて、なんで戦場に行くことになるのよ!

 背後では、緊急増援部隊の出撃準備のため、  
 レイが王太子とレリックの賛同を得て、執務室を駆け出していった。

 レリックも、王太子とアンジェに礼を言うと、  
 呆然としているメグを引きずって執務室を出た。

 アンジェは、にこやかに手を振って見送っていた。

 メグは、なんとも言えない顔で執務室を退出した。

 ――私は、何をミスったの?  
 どうして王宮から、戦場に配置換えなのよ。  
 何がいけなかったの……?
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