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反撃のチェルシー・ジョンソン
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その夜更け、チェルシーの周りの空気は一層重くなり、深い静寂が訪れた。彼女が寝台に横たわった後、しばらくしてから足音が響いてきた。そのかすかな音にチェルシーはすぐに気づき目を開いた。心の中で覚悟を決め、瞳を閉じて息を整えた。
窓から差し込む月明かりが床に淡い光を落とし、その静けさを破るように扉が音もなく開いた。フォーブスの影がゆっくりと部屋に滑り込み、チェルシーの寝台に近づいていく。
フォーブスがチェルシーの上に覆い被さり、優しく口付けた。チェルシーの瞳は閉じたままだったが、構わずフォーブスは左手でチェルシーの髪を撫でながら、ナイトガウンの裾を右手で捲り上げる。チェルシーのすんなりとした脚を持ち上げると、靴下を止めたリボンを外し、靴下を床に落として、チェルシーの足の指を舐め始めた。
ふくらはぎ、太もも、と艶やかな肌を舐め、キスをし、ナメクジのような執拗さで愛撫を続ける。そうして秘めた場所にたどり着くと、フォーブスはドロワーズのひもを引っ張り、抜き去った。形よく盛り上がった尻をひと撫ですると、チェルシーの両脚を掴んだ。
「ふんっ!」
おもむろにチェルシーの中に挿入したフォーブスは、瞳を閉じたままのチェルシーを激しく揺らす。亀頭がチェルシーの子宮頸部に当たって押し上げる衝撃に、チェルシーの内部がキュッと閉まった。それは生理的に許せぬ侵入者を追い出そうとする仕草であったにもかかわらず、フォーブスはさらに興奮したように動きを早め、チェルシーの亜麻色の髪を掴み夢中になって突き上げ、チェルシーに口付けた。
「んんっ、ん、ん、」
チェルシーの口腔の全てを吸い上げるような激しさにチェルシーは声を抑えるのが精一杯だったが、それでも自分の両手を握りしめてフォーブスを喜ばせるようなことを決してせぬよう最後まで耐え切った。
時間が過ぎ、やがて彼はくつろいだ表情で改めてベッドに腰を下ろした。
「チェルシー、起きているんだろう? 」
チェルシーは冷え切った声で口を開いた。
「満足しましたか?」
フォーブスは彼女の言葉に微笑を浮かべながら、体を倒しチェルシーにキスをする。覆い被さったまま口内を激しく荒らしつつ、同時にチェルシーの乳首をナイトガウン越しに指で優しく愛撫し、胸の柔らかさを堪能するかのように撫で回した。
「いつもながら君は素晴らしいよ。私は世界一の幸せ者だ」
チェルシーから体を起こして言ったその言葉に、チェルシーの瞳は冷たい光を帯びる。彼女は彼の視線を受け止めながら、ゆっくりと姿勢を正した。
「そう、幸せなのね」
彼女はわずかに首をかしげ、冷ややかな笑みを浮かべた。
「ここにいる間、あなた以外にも私に興味を持っている方がいるようよ」
「何の話だ?」
フォーブスの声が低くなり、眉間に深い皺が寄った。
チェルシーはゆっくりと立ち上がり、彼に一歩近づいた。その動きには恐れではなく、むしろ挑発するような余裕があった。
「バクスター氏。彼はあなたの目を盗み、私ともっと親密になろうとしている。私を『秘密の恋人』にしたいんですって」
その言葉に、フォーブスの顔が一瞬凍りついた。だが、すぐに怒りが彼の表情を支配した。彼は拳を握りしめ、低い声で唸った。
「あの男が……お前に手を出そうとしているというのか?」
「ええ。あなたといい、本当に醜いことね」
チェルシーは平然と答えた。その声には侮蔑の色が含まれていた。
フォーブスは壁に拳を叩きつけ、深い息を吐き出した。彼の瞳は怒りに燃えていた。
「私がここにいる間にそんなことを……許せん!」
チェルシーはその様子を静かに見つめていたが、内心では冷ややかな計算を巡らせていた。
「あなたの足元が揺らいでいるのを見抜いて、彼はそれを利用しようとしているのよ」
チェルシーは冷静なまま、毅然とした声で続けた。
「彼にとって、あなたはただの道具に過ぎないわ。あなたの部下たちも、同じかもしれない。忠誠なんて言葉に価値があると思う?」
「黙れ!」
フォーブスの怒号が部屋中に響き、彼は立ち上がり、激しく歩き回った。その拳はまだ震えていた。
チェルシーは彼の動揺を見て、さらに追い打ちをかけるように言葉を放った。
「あなたは自分が全てを支配していると思っているかもしれない。でも、実際には、あなたの周りの人々はそれぞれの利益しか考えていないのよ。バクスターだけじゃない。他の者たちも、あなたが失脚する機会を狙っているかもしれない」
フォーブスは足を止め、冷ややかな視線でチェルシーを睨みつけた。
「それがどうした?やつらを黙らせるのは簡単だ」
「でも、それは力だけでは無理だわ」
チェルシーの言葉は静かだったが、その一言一言が鋭く突き刺さるようだった。
「あなたが本当にリーダーでありたいのなら、力だけでなく信頼を築くべきだったわ。でも、今からでは遅い。あなたの一行は崩壊寸前よ」
フォーブスは一瞬言葉を失い、深い溜息をついた。彼の中で怒りと不安が交錯しているのが見て取れた。
「バクスターの件は私が始末する。それでいいだろう」
彼はようやく冷静さを取り戻し、冷たく言い放った。
チェルシーはそれを聞いても動じず、ただ微笑んだ。
「バクスターを排除することは、一行全体の分裂を加速させるだけよ。それでも構わないのなら、どうぞ」
その言葉にフォーブスは再び拳を握りしめたが、何も言い返すことはできず、チェルシーの髪を乱暴に引っ張り抱き寄せた。
「んぅっ、んん」
抵抗するようなチェルシーの呻き声を押さえつけ、フォーブスはチェルシーに激しく口付けた。
「……お前を満足させるのはこの俺だ! 絶対に、手放さないからな」
フォーブスは怒りに燃えたまま部屋を出ていった。その背中を見送りながら、チェルシーはわずかに息を吐き、心の中で微笑んだ。
フォーブスは部下たちを呼び集め、バクスターの裏切りを告げた。彼の怒りに満ちた演説は熱を帯びていた。
「バクスターは我々の名誉を汚した。奴を排除しなければ、この一行の秩序は守れない!」
しかし周囲の人々の反応は、彼が想像したものとは違って戸惑いに満ちていた。バクスターの協力がなければ、この地で暮らすことさえできないからだ。
さらに、バクスターとフォーブスの双方に不満を抱いていた地元の住民たちは、フォーブスが先に攻撃を仕掛けたことを知り、反発を強めていった。
「どちらも信用できない」
という不満が渦巻く中、次第にフォーブスの孤立が顕著になり始めた。
「フォーブスのような男に、この地を支配させるわけにはいかない」
「バクスターも信用ならないが、少なくともあいつは我々の生活を守ろうとしている」
チェルシーと共に新しい秩序を模索していた地元有力者の一人、トーマス・オブライアン。彼は、地元の混乱を終わらせるには外部の力が必要だと判断し、密かに敵側政府と連絡を取ることを決めていた。
「チェルシー、君の国に援軍を要請するべきだと思う。今の状況を正すには、我々だけでは限界がある」
トーマスの言葉に、チェルシーは少し考え込んだ後、静かに頷いた。
「確かにそうね。でも、秩序を取り戻すためでも、真逆の結果に終わる可能性もある、利用するのは慎重にしなければならないわ。彼らがこの土地を支配する口実にしてはいけないもの」
「君の判断を信じているよ。私は全力で彼の国と交渉する」
トーマスはそう約束すると、地元の混乱を収拾しつつ北部との連絡網を構築するため、動き出した。
さらに、チェルシーに共感を覚える若い兵士たちの間でも、不満が広がっていた。
「フォーブス将軍はやり過ぎているのではないか」
その声は徐々に大きくなり、彼の統制力を蝕んでいった。
地元の有力者たちは密かに話し合い、フォーブスの孤立を促す策を練り始めた。その中には、チェルシーに影響を受けた少年兵たちの親族もいた。彼らはチェルシーの言葉を通じて、彼女の冷静さと強さに心を打たれていたのだ。
少年兵たちの中でも、チェルシーへの尊敬は日増しに高まっていた。彼女の落ち着いた態度や、理性的な言葉は、彼らの未熟な心にとって新鮮な光だった。
「チェルシーさんは、本当にすごい人だよな」
「うん。フォーブス将軍のやり方なんて、ただ怖いだけだ」
少年たちは彼女が与える優しさと強さを通じて、これまで抱いていた「英雄像」に疑問を持つようになった。彼らは次第に、フォーブスに対しても反発の気持ちを抱くようになり、その気持ちは彼の孤立を加速させる要因となっていった。
チェルシーの予想通り、フォーブスは次第に孤立していった。彼の側近だった者たちでさえ、彼の苛烈な行動に耐えきれず、密かに離れていった。バクスターへの弾圧は逆効果となり、地元住民や兵士たちの不満を爆発させる結果となった。
ついに、フォーブスは怒りに任せてバクスターの屋敷を直接襲撃するという決定的な行動に出た。しかし、地元の住民たちが一斉に反発し、彼の計画は失敗に終わった。彼の部下たちも次々と離反し、フォーブスは自ら招いた孤独と失敗の中に取り残された。
フォーブスが町を去ったのは、夜明け前だった。彼の姿は疲れ果て、護衛も数えるほどの兵士しか伴っていなかった。彼は怒りと屈辱に震えながらも、これ以上の戦いは無意味だと悟っていた。
その後に残されたのは、彼の支配から解き放たれた町だった。しかし、真の自由が訪れたわけではない。バクスターがその空白を埋めようと勢いづいていたのだ。
チェルシーはバクスターに対して明確な敵意を示さず、ただ冷ややかに彼の行動を見守るだけだった。それは、バクスター自身を追い詰める最も効果的な方法だった。彼が自滅するのを待つことで、無用な争いを避けるというチェルシーの冷静な戦略がそこにはあった。
街の英雄チェルシーに卑猥な眼差しを向けるバクスター、さらには彼の威圧的な態度や自己中心的な行動は、フォーブス以上に人々の反感を買っていた。さらに、彼の部下たちの中にも、チェルシーに感化された者が現れ始め、彼の支配力は日ごとに弱まっていった。
「なぜだ、なぜ私が……」
バクスターは自室で一人、苛立ちを隠せず拳を固めていた。
他の者の預かり知らぬところでトーマスの交渉は順調に進み、ついに敵側政府から正式な援軍が派遣されることが決まった。彼らはチェルシーの訴えを支持し、この地域の秩序を取り戻すための協力を約束した。
追い詰められたバクスターは屋敷の応接間にチェルシーを呼び寄せた。
チェルシーの手を取ると、バクスターは粘着質な手つきでその肌の若い滑らかさを堪能するように撫で回し、恭しく口付けた。
「あの男の呪縛から君を解放することができたことを誇りに思うよ。君も、少しは感謝してくれているんだろう?」
チェルシーはさっとその魔の手から逃れてから、冷静な声で答えた。
「お忘れですか? あなたが彼を追放できたのは、私が若い兵士や地元有力者、そして使用人たちを説得していたからです。もし、彼らがあなたに協力しなければ、フォーブスに抵抗することすら不可能だったでしょう」
その冷淡な指摘に、バクスターの顔は一瞬歪んだ。だが、すぐに笑顔を取り戻し、言葉を選びながら返した。
「もちろん、君の協力があってのことだ。しかし、これからは私がこの町を導いていく。それに、君のような聡明な女性にはふさわしい地位を与えたいと思っているよ」
そう言うと、バクスターがチェルシーを抱き寄せる。チェルシーが眉をひそめるのにも構わず、チェルシーの首筋をべろりと舐めた。
「結婚しよう。お前は私のものだ、チェルシー」
「……私はあなたの野心を満たすための駒になるつもりはありません」
バクスターの顔は再び硬直し、彼は苛立ちを隠しきれない様子でチェルシーのドレスのボタンを乱暴に引きちぎった。
無惨な姿となったチェルシーのコルセットの中に手をやり、その乳首をぎゅっと摘んだ。
「君がどう言おうと、君の立場は私が決める!」
チェルシーが叫んだ。
「助けて、誰か!!」
その声に応じるかのように、応接間の扉が開き、若い兵士たちや地元有力者たちが続々と入ってきた。
その場にいた地元のリーダー格の一人、トーマス・オブライアンの従兄弟であるイーサン・グリフィスが前に進み出た。彼はバクスターを鋭く睨みつけ、低い声で語り始めた。
「バクスター。君がこの町を支配しようとしているのは誰の目にも明らかだ。しかし、私たちは君のような独裁者を受け入れるつもりはない」
バクスターは苛立ちを隠せず、声を荒らげた。
「私はこの町を守るために動いている! お前たちに感謝されこそすれ、批判される筋合いはない!」
だが、イーサンは揺るがなかった。
「守るためではない。自分の欲望のために動いているのだ。そして、そんな君にこの町の未来を託すわけにはいかない」
バクスターは完全に追い詰められた。チェルシーとトーマス・オブライアンが密かに敵国と連絡を取っていたことが決定打となったのだ。敵軍が町に迫る中、バクスターは自分の立場が危ういことを悟り、降伏を余儀なくされた。
そうして、トーマスが密かに手配した敵軍がついに到着した。その先頭には、堂々とした姿で馬に乗る彼らの英雄、そしてチェルシーの恋人でもあった男性の姿があった。彼の顔が視界に入った瞬間、チェルシーは息を呑み、胸の高鳴りを抑えきれなかった。
チェルシーは気が狂わんばかりに手を振りながら、彼の元へ駆け寄った。戦場の緊張感などどこか遠い世界のものに思えるほど、彼女の心は彼一色に染まっていた。
彼女が彼の前にたどり着くと、彼はすぐに馬から飛び降り、チェルシーを抱きしめた。その力強い腕の中で、チェルシーはようやく安心感を覚え、涙が頬を伝った。
「チェルシー、生きていてくれてありがとう」
彼の声には深い愛情と安堵がこもっていた。チェルシーはその言葉を聞き、震える声で答えた。
「お願い、この地を守ってくれた人たちに優しく接してあげて。彼らは私をフォーブスから救ってくれたの」
チェルシーの言葉に彼は固まった。それでもチェルシーの言葉を受け止めた彼は、その深い漆黒の瞳で彼女を見つめた。戦場で鍛えられた厳しさの中に、彼女への計り知れない愛情が滲み出ていた。
「この土地のことやフォーブスの手先たちについてはどうしても整理が必要だ。彼らが本当に君を守ったというのなら、その背景を教えてほしい」
チェルシーは震える手でその手を握りしめた。彼の手は暖かく、その感触が彼女に言葉を紡ぐ勇気を与えた。
「彼らが私を守ったのは、彼らなりの誇りと正義があったからよ。この地はフォーブスや逃亡したバクスターという男の暴挙に苦しんでいたけれど、それでも彼らは自分たちの方法で秩序を守ろうとしていた。トーマスは、私をフォーブスたちから隠すためにどんな危険も顧みなかったわ」
チェルシーの声は途中で詰まり、涙が瞳に浮かんだ。彼は彼女の肩に手を置き、静かに話を聞き続けた。
「だから、どうか彼らに罰を与えるだけの決断をしないで。彼らと話し合って、共にこの土地を再建する道を模索してほしいの」
彼はしばらく考え込んだが、やがて真剣な眼差しでチェルシーに応えた。
「分かった、チェルシー。君がそう望むのなら、僕もその意志を尊重する。君が信じた人々を、僕も信じよう」
彼の言葉に、チェルシーの胸は希望で満たされた。自分をこんなにも尊重してくれる、愛する男性に、改めて深い感謝の念を覚えた。彼女は頷きながら微笑み、震える手で彼の頬に触れた。その温もりが彼女を支え、これまでの苦難を忘れさせてくれる。
彼女が最も恐れていたことは、彼らの到来がこの地にさらなる混乱や報復をもたらすことだった。再建時代の渦中、敗戦国としてのこの地はすでに多くの困難を抱えており、チェルシーの救出が公にされれば、その影響は計り知れない。しかし、彼女はトーマスの助力を受けて慎重に行動し、この状況を平和的に解決しようと決意していた。
チェルシーと彼の再会の余韻がまだ空気に漂う中、敵軍の兵士たちは迅速に周囲の状況を整理し始めた。フォーブスの部隊はすでに大半が撤退しており、彼らの残党も戦意を失っているように見えた。
「フォーブスの部隊の残党は捕縛し、速やかに戦争犯罪の調査を行え。ただし、チェルシーが言うように、この地の民間人には手を触れないように。彼らが彼女を救ってくれたなら、恩義を忘れるわけにはいかない」
その言葉は兵士たちにもすぐに伝わり、彼らの態勢は迅速かつ秩序だった。彼の冷静な指揮と責任感ある対応に、チェルシーは改めて彼の偉大さを感じずにはいられなかった。
それでも。フォーブスによって傷つけられた自分の心と体が、彼にとって許容できる存在なのか、不安が頭をもたげる。
「一つだけ、聞かせて」
その問いに彼はチェルシーの方に振り返った。
「私が、以前の私じゃなくなったら……あなたはどうする?」
震える声で問いかけると、彼は眉をひそめた。
「君は君だ。何があろうとも」
チェルシーは思わず涙を流した。その深い眼差しを見つめるだけで、チェルシーは自分がどれだけ愛されているのかを感じた。彼が手の甲でそっと彼女の頬を撫でると、チェルシーの心に重くのしかかっていた影が少しずつ薄れていくのを感じた。
「あなただけがずっと、心の支えだった。あなたに会うことだけを望んで、生き続けたの。愛しているの、本当に」
二人の関係にどんな結末が訪れても、この瞬間だけで十分だと思えるほど、彼女は幸福に満たされていた。
その後、チェルシーは彼と共にトーマスや地元有力者たちと対話を重ねた。指導者である彼は、チェルシーの要望を受け入れ、地元の人々に対する措置を寛大なものとするよう指示を出した。これにより、この地は報復の嵐を免れ、西部の誇りを守ることができた。
チェルシーは立ち去る前にトーマスに感謝の言葉を述べ、何度も手紙を書くよう頼んだ。
「トーマス、あなたの助けがなければ、私はここに立っていられなかった。本当にありがとう。これからも手紙で近況を教えてね」
トーマスはその言葉に微笑みながら頷いた。
「もちろんだ、チェルシー。君が幸せでいることが何よりだよ」
こうしてチェルシーはこの地を後にした。彼女はその目に希望を宿し、新たな未来に向けて歩み始めた。トーマスや地元の人々、そして傷ついた彼女を最後には救う決意をした人々への思いを胸に、チェルシーは再建時代の激動を乗り越える決意を新たにしたのだった。
この後彼らがどのような運命を辿るのか、そしてチェルシーと愛する男性が再び完全に結ばれる日は来るのか。それは読者の想像に委ねられる。
戦乱による数々の傷跡は、彼女の心にも体にも深く刻まれ、未来への道のりが平坦なものでないことは明白だ。
が、一つだけ確かなのは、彼女が愛する彼の眼差しの中で、救いと幸福を見つけたことだった。彼女は愛を再び信じる勇気を取り戻したのだ。それは、痛みや苦しみを超えた先に見つけた、彼女だけの真実の愛の形だった。
窓から差し込む月明かりが床に淡い光を落とし、その静けさを破るように扉が音もなく開いた。フォーブスの影がゆっくりと部屋に滑り込み、チェルシーの寝台に近づいていく。
フォーブスがチェルシーの上に覆い被さり、優しく口付けた。チェルシーの瞳は閉じたままだったが、構わずフォーブスは左手でチェルシーの髪を撫でながら、ナイトガウンの裾を右手で捲り上げる。チェルシーのすんなりとした脚を持ち上げると、靴下を止めたリボンを外し、靴下を床に落として、チェルシーの足の指を舐め始めた。
ふくらはぎ、太もも、と艶やかな肌を舐め、キスをし、ナメクジのような執拗さで愛撫を続ける。そうして秘めた場所にたどり着くと、フォーブスはドロワーズのひもを引っ張り、抜き去った。形よく盛り上がった尻をひと撫ですると、チェルシーの両脚を掴んだ。
「ふんっ!」
おもむろにチェルシーの中に挿入したフォーブスは、瞳を閉じたままのチェルシーを激しく揺らす。亀頭がチェルシーの子宮頸部に当たって押し上げる衝撃に、チェルシーの内部がキュッと閉まった。それは生理的に許せぬ侵入者を追い出そうとする仕草であったにもかかわらず、フォーブスはさらに興奮したように動きを早め、チェルシーの亜麻色の髪を掴み夢中になって突き上げ、チェルシーに口付けた。
「んんっ、ん、ん、」
チェルシーの口腔の全てを吸い上げるような激しさにチェルシーは声を抑えるのが精一杯だったが、それでも自分の両手を握りしめてフォーブスを喜ばせるようなことを決してせぬよう最後まで耐え切った。
時間が過ぎ、やがて彼はくつろいだ表情で改めてベッドに腰を下ろした。
「チェルシー、起きているんだろう? 」
チェルシーは冷え切った声で口を開いた。
「満足しましたか?」
フォーブスは彼女の言葉に微笑を浮かべながら、体を倒しチェルシーにキスをする。覆い被さったまま口内を激しく荒らしつつ、同時にチェルシーの乳首をナイトガウン越しに指で優しく愛撫し、胸の柔らかさを堪能するかのように撫で回した。
「いつもながら君は素晴らしいよ。私は世界一の幸せ者だ」
チェルシーから体を起こして言ったその言葉に、チェルシーの瞳は冷たい光を帯びる。彼女は彼の視線を受け止めながら、ゆっくりと姿勢を正した。
「そう、幸せなのね」
彼女はわずかに首をかしげ、冷ややかな笑みを浮かべた。
「ここにいる間、あなた以外にも私に興味を持っている方がいるようよ」
「何の話だ?」
フォーブスの声が低くなり、眉間に深い皺が寄った。
チェルシーはゆっくりと立ち上がり、彼に一歩近づいた。その動きには恐れではなく、むしろ挑発するような余裕があった。
「バクスター氏。彼はあなたの目を盗み、私ともっと親密になろうとしている。私を『秘密の恋人』にしたいんですって」
その言葉に、フォーブスの顔が一瞬凍りついた。だが、すぐに怒りが彼の表情を支配した。彼は拳を握りしめ、低い声で唸った。
「あの男が……お前に手を出そうとしているというのか?」
「ええ。あなたといい、本当に醜いことね」
チェルシーは平然と答えた。その声には侮蔑の色が含まれていた。
フォーブスは壁に拳を叩きつけ、深い息を吐き出した。彼の瞳は怒りに燃えていた。
「私がここにいる間にそんなことを……許せん!」
チェルシーはその様子を静かに見つめていたが、内心では冷ややかな計算を巡らせていた。
「あなたの足元が揺らいでいるのを見抜いて、彼はそれを利用しようとしているのよ」
チェルシーは冷静なまま、毅然とした声で続けた。
「彼にとって、あなたはただの道具に過ぎないわ。あなたの部下たちも、同じかもしれない。忠誠なんて言葉に価値があると思う?」
「黙れ!」
フォーブスの怒号が部屋中に響き、彼は立ち上がり、激しく歩き回った。その拳はまだ震えていた。
チェルシーは彼の動揺を見て、さらに追い打ちをかけるように言葉を放った。
「あなたは自分が全てを支配していると思っているかもしれない。でも、実際には、あなたの周りの人々はそれぞれの利益しか考えていないのよ。バクスターだけじゃない。他の者たちも、あなたが失脚する機会を狙っているかもしれない」
フォーブスは足を止め、冷ややかな視線でチェルシーを睨みつけた。
「それがどうした?やつらを黙らせるのは簡単だ」
「でも、それは力だけでは無理だわ」
チェルシーの言葉は静かだったが、その一言一言が鋭く突き刺さるようだった。
「あなたが本当にリーダーでありたいのなら、力だけでなく信頼を築くべきだったわ。でも、今からでは遅い。あなたの一行は崩壊寸前よ」
フォーブスは一瞬言葉を失い、深い溜息をついた。彼の中で怒りと不安が交錯しているのが見て取れた。
「バクスターの件は私が始末する。それでいいだろう」
彼はようやく冷静さを取り戻し、冷たく言い放った。
チェルシーはそれを聞いても動じず、ただ微笑んだ。
「バクスターを排除することは、一行全体の分裂を加速させるだけよ。それでも構わないのなら、どうぞ」
その言葉にフォーブスは再び拳を握りしめたが、何も言い返すことはできず、チェルシーの髪を乱暴に引っ張り抱き寄せた。
「んぅっ、んん」
抵抗するようなチェルシーの呻き声を押さえつけ、フォーブスはチェルシーに激しく口付けた。
「……お前を満足させるのはこの俺だ! 絶対に、手放さないからな」
フォーブスは怒りに燃えたまま部屋を出ていった。その背中を見送りながら、チェルシーはわずかに息を吐き、心の中で微笑んだ。
フォーブスは部下たちを呼び集め、バクスターの裏切りを告げた。彼の怒りに満ちた演説は熱を帯びていた。
「バクスターは我々の名誉を汚した。奴を排除しなければ、この一行の秩序は守れない!」
しかし周囲の人々の反応は、彼が想像したものとは違って戸惑いに満ちていた。バクスターの協力がなければ、この地で暮らすことさえできないからだ。
さらに、バクスターとフォーブスの双方に不満を抱いていた地元の住民たちは、フォーブスが先に攻撃を仕掛けたことを知り、反発を強めていった。
「どちらも信用できない」
という不満が渦巻く中、次第にフォーブスの孤立が顕著になり始めた。
「フォーブスのような男に、この地を支配させるわけにはいかない」
「バクスターも信用ならないが、少なくともあいつは我々の生活を守ろうとしている」
チェルシーと共に新しい秩序を模索していた地元有力者の一人、トーマス・オブライアン。彼は、地元の混乱を終わらせるには外部の力が必要だと判断し、密かに敵側政府と連絡を取ることを決めていた。
「チェルシー、君の国に援軍を要請するべきだと思う。今の状況を正すには、我々だけでは限界がある」
トーマスの言葉に、チェルシーは少し考え込んだ後、静かに頷いた。
「確かにそうね。でも、秩序を取り戻すためでも、真逆の結果に終わる可能性もある、利用するのは慎重にしなければならないわ。彼らがこの土地を支配する口実にしてはいけないもの」
「君の判断を信じているよ。私は全力で彼の国と交渉する」
トーマスはそう約束すると、地元の混乱を収拾しつつ北部との連絡網を構築するため、動き出した。
さらに、チェルシーに共感を覚える若い兵士たちの間でも、不満が広がっていた。
「フォーブス将軍はやり過ぎているのではないか」
その声は徐々に大きくなり、彼の統制力を蝕んでいった。
地元の有力者たちは密かに話し合い、フォーブスの孤立を促す策を練り始めた。その中には、チェルシーに影響を受けた少年兵たちの親族もいた。彼らはチェルシーの言葉を通じて、彼女の冷静さと強さに心を打たれていたのだ。
少年兵たちの中でも、チェルシーへの尊敬は日増しに高まっていた。彼女の落ち着いた態度や、理性的な言葉は、彼らの未熟な心にとって新鮮な光だった。
「チェルシーさんは、本当にすごい人だよな」
「うん。フォーブス将軍のやり方なんて、ただ怖いだけだ」
少年たちは彼女が与える優しさと強さを通じて、これまで抱いていた「英雄像」に疑問を持つようになった。彼らは次第に、フォーブスに対しても反発の気持ちを抱くようになり、その気持ちは彼の孤立を加速させる要因となっていった。
チェルシーの予想通り、フォーブスは次第に孤立していった。彼の側近だった者たちでさえ、彼の苛烈な行動に耐えきれず、密かに離れていった。バクスターへの弾圧は逆効果となり、地元住民や兵士たちの不満を爆発させる結果となった。
ついに、フォーブスは怒りに任せてバクスターの屋敷を直接襲撃するという決定的な行動に出た。しかし、地元の住民たちが一斉に反発し、彼の計画は失敗に終わった。彼の部下たちも次々と離反し、フォーブスは自ら招いた孤独と失敗の中に取り残された。
フォーブスが町を去ったのは、夜明け前だった。彼の姿は疲れ果て、護衛も数えるほどの兵士しか伴っていなかった。彼は怒りと屈辱に震えながらも、これ以上の戦いは無意味だと悟っていた。
その後に残されたのは、彼の支配から解き放たれた町だった。しかし、真の自由が訪れたわけではない。バクスターがその空白を埋めようと勢いづいていたのだ。
チェルシーはバクスターに対して明確な敵意を示さず、ただ冷ややかに彼の行動を見守るだけだった。それは、バクスター自身を追い詰める最も効果的な方法だった。彼が自滅するのを待つことで、無用な争いを避けるというチェルシーの冷静な戦略がそこにはあった。
街の英雄チェルシーに卑猥な眼差しを向けるバクスター、さらには彼の威圧的な態度や自己中心的な行動は、フォーブス以上に人々の反感を買っていた。さらに、彼の部下たちの中にも、チェルシーに感化された者が現れ始め、彼の支配力は日ごとに弱まっていった。
「なぜだ、なぜ私が……」
バクスターは自室で一人、苛立ちを隠せず拳を固めていた。
他の者の預かり知らぬところでトーマスの交渉は順調に進み、ついに敵側政府から正式な援軍が派遣されることが決まった。彼らはチェルシーの訴えを支持し、この地域の秩序を取り戻すための協力を約束した。
追い詰められたバクスターは屋敷の応接間にチェルシーを呼び寄せた。
チェルシーの手を取ると、バクスターは粘着質な手つきでその肌の若い滑らかさを堪能するように撫で回し、恭しく口付けた。
「あの男の呪縛から君を解放することができたことを誇りに思うよ。君も、少しは感謝してくれているんだろう?」
チェルシーはさっとその魔の手から逃れてから、冷静な声で答えた。
「お忘れですか? あなたが彼を追放できたのは、私が若い兵士や地元有力者、そして使用人たちを説得していたからです。もし、彼らがあなたに協力しなければ、フォーブスに抵抗することすら不可能だったでしょう」
その冷淡な指摘に、バクスターの顔は一瞬歪んだ。だが、すぐに笑顔を取り戻し、言葉を選びながら返した。
「もちろん、君の協力があってのことだ。しかし、これからは私がこの町を導いていく。それに、君のような聡明な女性にはふさわしい地位を与えたいと思っているよ」
そう言うと、バクスターがチェルシーを抱き寄せる。チェルシーが眉をひそめるのにも構わず、チェルシーの首筋をべろりと舐めた。
「結婚しよう。お前は私のものだ、チェルシー」
「……私はあなたの野心を満たすための駒になるつもりはありません」
バクスターの顔は再び硬直し、彼は苛立ちを隠しきれない様子でチェルシーのドレスのボタンを乱暴に引きちぎった。
無惨な姿となったチェルシーのコルセットの中に手をやり、その乳首をぎゅっと摘んだ。
「君がどう言おうと、君の立場は私が決める!」
チェルシーが叫んだ。
「助けて、誰か!!」
その声に応じるかのように、応接間の扉が開き、若い兵士たちや地元有力者たちが続々と入ってきた。
その場にいた地元のリーダー格の一人、トーマス・オブライアンの従兄弟であるイーサン・グリフィスが前に進み出た。彼はバクスターを鋭く睨みつけ、低い声で語り始めた。
「バクスター。君がこの町を支配しようとしているのは誰の目にも明らかだ。しかし、私たちは君のような独裁者を受け入れるつもりはない」
バクスターは苛立ちを隠せず、声を荒らげた。
「私はこの町を守るために動いている! お前たちに感謝されこそすれ、批判される筋合いはない!」
だが、イーサンは揺るがなかった。
「守るためではない。自分の欲望のために動いているのだ。そして、そんな君にこの町の未来を託すわけにはいかない」
バクスターは完全に追い詰められた。チェルシーとトーマス・オブライアンが密かに敵国と連絡を取っていたことが決定打となったのだ。敵軍が町に迫る中、バクスターは自分の立場が危ういことを悟り、降伏を余儀なくされた。
そうして、トーマスが密かに手配した敵軍がついに到着した。その先頭には、堂々とした姿で馬に乗る彼らの英雄、そしてチェルシーの恋人でもあった男性の姿があった。彼の顔が視界に入った瞬間、チェルシーは息を呑み、胸の高鳴りを抑えきれなかった。
チェルシーは気が狂わんばかりに手を振りながら、彼の元へ駆け寄った。戦場の緊張感などどこか遠い世界のものに思えるほど、彼女の心は彼一色に染まっていた。
彼女が彼の前にたどり着くと、彼はすぐに馬から飛び降り、チェルシーを抱きしめた。その力強い腕の中で、チェルシーはようやく安心感を覚え、涙が頬を伝った。
「チェルシー、生きていてくれてありがとう」
彼の声には深い愛情と安堵がこもっていた。チェルシーはその言葉を聞き、震える声で答えた。
「お願い、この地を守ってくれた人たちに優しく接してあげて。彼らは私をフォーブスから救ってくれたの」
チェルシーの言葉に彼は固まった。それでもチェルシーの言葉を受け止めた彼は、その深い漆黒の瞳で彼女を見つめた。戦場で鍛えられた厳しさの中に、彼女への計り知れない愛情が滲み出ていた。
「この土地のことやフォーブスの手先たちについてはどうしても整理が必要だ。彼らが本当に君を守ったというのなら、その背景を教えてほしい」
チェルシーは震える手でその手を握りしめた。彼の手は暖かく、その感触が彼女に言葉を紡ぐ勇気を与えた。
「彼らが私を守ったのは、彼らなりの誇りと正義があったからよ。この地はフォーブスや逃亡したバクスターという男の暴挙に苦しんでいたけれど、それでも彼らは自分たちの方法で秩序を守ろうとしていた。トーマスは、私をフォーブスたちから隠すためにどんな危険も顧みなかったわ」
チェルシーの声は途中で詰まり、涙が瞳に浮かんだ。彼は彼女の肩に手を置き、静かに話を聞き続けた。
「だから、どうか彼らに罰を与えるだけの決断をしないで。彼らと話し合って、共にこの土地を再建する道を模索してほしいの」
彼はしばらく考え込んだが、やがて真剣な眼差しでチェルシーに応えた。
「分かった、チェルシー。君がそう望むのなら、僕もその意志を尊重する。君が信じた人々を、僕も信じよう」
彼の言葉に、チェルシーの胸は希望で満たされた。自分をこんなにも尊重してくれる、愛する男性に、改めて深い感謝の念を覚えた。彼女は頷きながら微笑み、震える手で彼の頬に触れた。その温もりが彼女を支え、これまでの苦難を忘れさせてくれる。
彼女が最も恐れていたことは、彼らの到来がこの地にさらなる混乱や報復をもたらすことだった。再建時代の渦中、敗戦国としてのこの地はすでに多くの困難を抱えており、チェルシーの救出が公にされれば、その影響は計り知れない。しかし、彼女はトーマスの助力を受けて慎重に行動し、この状況を平和的に解決しようと決意していた。
チェルシーと彼の再会の余韻がまだ空気に漂う中、敵軍の兵士たちは迅速に周囲の状況を整理し始めた。フォーブスの部隊はすでに大半が撤退しており、彼らの残党も戦意を失っているように見えた。
「フォーブスの部隊の残党は捕縛し、速やかに戦争犯罪の調査を行え。ただし、チェルシーが言うように、この地の民間人には手を触れないように。彼らが彼女を救ってくれたなら、恩義を忘れるわけにはいかない」
その言葉は兵士たちにもすぐに伝わり、彼らの態勢は迅速かつ秩序だった。彼の冷静な指揮と責任感ある対応に、チェルシーは改めて彼の偉大さを感じずにはいられなかった。
それでも。フォーブスによって傷つけられた自分の心と体が、彼にとって許容できる存在なのか、不安が頭をもたげる。
「一つだけ、聞かせて」
その問いに彼はチェルシーの方に振り返った。
「私が、以前の私じゃなくなったら……あなたはどうする?」
震える声で問いかけると、彼は眉をひそめた。
「君は君だ。何があろうとも」
チェルシーは思わず涙を流した。その深い眼差しを見つめるだけで、チェルシーは自分がどれだけ愛されているのかを感じた。彼が手の甲でそっと彼女の頬を撫でると、チェルシーの心に重くのしかかっていた影が少しずつ薄れていくのを感じた。
「あなただけがずっと、心の支えだった。あなたに会うことだけを望んで、生き続けたの。愛しているの、本当に」
二人の関係にどんな結末が訪れても、この瞬間だけで十分だと思えるほど、彼女は幸福に満たされていた。
その後、チェルシーは彼と共にトーマスや地元有力者たちと対話を重ねた。指導者である彼は、チェルシーの要望を受け入れ、地元の人々に対する措置を寛大なものとするよう指示を出した。これにより、この地は報復の嵐を免れ、西部の誇りを守ることができた。
チェルシーは立ち去る前にトーマスに感謝の言葉を述べ、何度も手紙を書くよう頼んだ。
「トーマス、あなたの助けがなければ、私はここに立っていられなかった。本当にありがとう。これからも手紙で近況を教えてね」
トーマスはその言葉に微笑みながら頷いた。
「もちろんだ、チェルシー。君が幸せでいることが何よりだよ」
こうしてチェルシーはこの地を後にした。彼女はその目に希望を宿し、新たな未来に向けて歩み始めた。トーマスや地元の人々、そして傷ついた彼女を最後には救う決意をした人々への思いを胸に、チェルシーは再建時代の激動を乗り越える決意を新たにしたのだった。
この後彼らがどのような運命を辿るのか、そしてチェルシーと愛する男性が再び完全に結ばれる日は来るのか。それは読者の想像に委ねられる。
戦乱による数々の傷跡は、彼女の心にも体にも深く刻まれ、未来への道のりが平坦なものでないことは明白だ。
が、一つだけ確かなのは、彼女が愛する彼の眼差しの中で、救いと幸福を見つけたことだった。彼女は愛を再び信じる勇気を取り戻したのだ。それは、痛みや苦しみを超えた先に見つけた、彼女だけの真実の愛の形だった。
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