魔法が生きる世界で

やっさん

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第一章 魔法が生きる世界

合同訓練

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【合同訓練】





「おいルイス、お前なんか顔色悪くね??」
「あ?」


月影軍から北東に位置する森林地帯。

今日はここで、第十二部隊(黒龍)と第三部隊合同の訓練が行われる。

互いの部隊を相手とし、本番さながらの実践訓練を行うのだ。

人数だけで言うならば、第三部隊の方が倍以上ある。
しかし知っているように、第十二部隊である黒竜は十二の部隊の中でもっとも優れた隊士が集う部隊。

どちらが勝つかなんて誰もが想像がつくだろう。
それでも格上の部隊と戦うのは、彼ら第三部隊や他の隊にとって、実践的に得るものが多いということだ。


「寝不足か?それとも腹減ったか?」
「・・・違う」


ルイスの顔色がよろしくないのは、本当のことだ。
それでも彼は、その事を隠すのが得意なため、周りはそれに気づかない。

・・・気づかれたくないのだ

しかしキリクときたら、相手のちょっとした表情の変化に敏感であり、それはルイスに対してもしかり。


「じゃぁ腹がへったか?
お前いつも少食だもんなぁ、そりゃ体調も悪くなるぜ」


とんだ勘違いをされたルイスは、しかしそれを言い返すのも面倒くさくなった。


「よし、今日の昼飯は俺と一緒に大盛り定食をくうか!」
「ヤダ」


誰があのバカ多い定食なんかくうか。

とにかく、ルイスが悪いのは体調というより気分の問題なのだが。


(夢なんて・・・いつ以来だ?)


基本ルイスは夢を見ない。
見たとしても、直ぐに忘れてしまう程度だ。
しかし・・・


(あの夢は・・・気分悪い)


ハッキリとした事は曖昧だが、ルイスにとって不愉快であったのは間違いない。
そのお陰で早朝の4時に起きてしまう始末。

だから今回の二つの部隊合同の訓練はあまり乗り気がしないのだ。


「あっれー、ルイス先輩不調っすか??」
「・・・・・・」


そして何より、コレが常に視界に入るのが気に食わない。
先週黒龍に入ってきたばかりの新入隊員。


「へー、ルイス先輩も具合悪い時あるんすね。そんなんじゃ第三部隊にやられますよー?」


まるでイタズラを仕掛けた子供のように笑うカイ。

カイが入隊したあの日から、彼はいつもこのようにルイスにちょっかいを出す。
最初こそ無視を続けていたルイスだったが、流石に鬱陶しくなってきたようだ。


「あ、なんならルイス先輩の分、僕が働いて見せるっすよ!これって下克上のチャンスっすかね?」


そう、彼の特徴の一つは他にもある。
それが、ルイスに対する宣戦布告。それは初めてあったその日から始まっていた。

どうしてそこまでルイスにこだわるのか、キリクはこっそり聞いてみたことがある。
すると・・・


『ルイス先輩は、僕にとって憧れの先輩っす!でもそれ以上に、倒したい相手でもあるんすよ』


なるほど、目標となる相手を超えてみせるという一種の決意か。それはカイに限らず誰にでも持っているものだ。

しかし、カイのそれは他の奴らより少しズレていた。


『ルイス先輩、いつもグレン隊長の横にいるじゃないですか。特に戦場なんか・・・まるで打ち合わせでもしたかのように息がピッタリらしいし』


そう、ここからカイの雰囲気がガラッと変わったのだ

胸の内に潜む野心が、表に出かかっているような・・・・・・


『僕、ルイス先輩が今いる位置に行きたいんすよ。月影軍一と恐れられ、尊敬されるグレン隊長の隣にね・・・』


いつもと変わらぬ口調、そして笑顔。
けれどキリクは、カイの瞳の奥に潜む狂気的な何かを感じ取った。


「おいお前ら、遊んでねぇで集まれ」


グレンの一声で今までガヤガヤしていた隊士達が一瞬で静かになった。
キリッと空気が引き締まる。


「今回は第三部隊、第十二部隊合同の訓練だ。ルールは言わなくても分かるな?
それじゃぁ、ちゃっちゃと始めろ。」


なんとも適当なまとめ方だ。
こうして部下達の前に出る時、必要なこと以外は決して口にしないのが彼なのだ。


「ん?ルールってなんすか??
僕初めてだから分からないんすけど」


ルイスは思わずため息をついた。

なるほど、こうした説明も含め、世話係の務めという事が。

しかし、ルイスは面倒臭いオーラを隠すことなく佇む。
せめてもの抵抗という事だ。


「あー、えーっと・・・簡単に言えば、敵である第三部隊を殺さない程度に倒していくだけだ。そしてより多くの隊士が生き残った方の勝利。」
「へぇ、戦場と変わらないっすね。
本気を出せないのが残念っす・・・」


ルイスの雰囲気を悟ったキリクが、咄嗟に説明に入る。
ルイスに任せると余計な時間を増やしてしまうからだ。


「では各自、配置に着くように。
5分後に開始のアイズを送る」


イクトの声で隊士達が一斉に散らばった。

皆事前に作戦を練り、自分達の役割を果たすために駆け出したのだ。


「んじゃぁ、ルイス!
俺達も気楽に行こうぜ!」
「・・・あぁ」


珍しくキリクの言葉に素直に返事をするルイス。
訓練とはいえ、これから起こる戦闘に胸を踊らせている証拠だ。


「ルイス先輩、どちらが多く倒すか勝負っすよ!!」


そう言ってカイは、他の隊士が多く向かった森林へと消えていった。



















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