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3[リア]
楽しい夜
アレンさんとダニエルさんに、二人でどのような学生時代を過ごしていたのか尋ねてみた。
すると、ダニエルさんはニヤニヤしながら思い出話を始めた。
「出会った頃のアレンは、今よりもずっと不愛想で」
「ちょっと待て、余計なことは言うな」
「目つきも悪くて少し怖い雰囲気だったけれど、話してみたら実はすごく優しい奴で」
「なんか引っ掛かる……」
「よく私を褒めてくれました」
「ふむ」
「彼は私と仲良くなってからモテるようになったと言っていて……」
「ちょっ、お前マジで黙れ!」
「あはははっ、素が出た。冗談だよ」
「リア様、彼の話は半分以下で聞いてくださいね? 真に受けないでくださいね?」
クール系のアレンさんをイジれる貴重な新キャラ登場に、わたしの心は沸いていた。
彼を手玉に取るとは素晴らしい(笑)
「アレンさんは生徒会だったのですよね?」
「リア様、話を振らなくていいですからっ」
ダニエルさんは嬉々として「いやぁ、今日は楽しい夜になりそうだなぁ」と言った。
二人は十歳に満たない頃からの付き合いらしい。
周りから揶揄われていたダニエルさんをアレンさんが庇ったことがきっかけで仲良くなったそうだ。
「当時、商業科から騎士科への転科というのはすごく珍しくて……。しかも商人の息子だというだけで道楽だと思われてしまうのです」
「でも御嫡男ですから、それなりの覚悟があってのことでしょう?」
「ええ、本人は至って真剣なのですが、私もこういう感じなので、なかなか真剣さが周りに伝わらなくて」
「無事に卒業して騎士団に入れたのはアレンのおかげです」と彼は言った。
二人が出会った頃、アレンさんも少し悩んでいた時期だったらしい。物怖じせず話しかけてくる朗らかなダニエルさんの存在は大きかったそうだ。
二人は持ちつ持たれつの良い関係を築けたのだろう。
共通の憧れの先輩は「クランツ先輩」だそうだ。
男子の憧れはヴィルさんのような王子様タイプではなく、クマさんタイプらしい。
「男が惚れる男というやつですね、団長は」とダニエルさんが言うと、アレンさんも頷いた。
「女性から見ると感じ方も違うでしょうが、我々から見ると、同じ時代にいてくれて良かったと思う先輩です。いまだにお世話になっています」
ああ、後輩から慕われるくまんつ様、やっぱり素敵です。
「またお会いしたいですねぇ。先日のお礼もしたいですし、新しい絵も描いて頂きたいし」
「絵はやめてください」
「どうして? アレンさんだって大好きでしょう?」
「生命の危機を感じます」
「ぷふふっ」
ダニエルさんは「似顔絵を描いてもらうのがオススメ」と言った。
上手いのかとアレンさんが尋ねたところ、「ちっとも上手くないのに、なぜか一周まわって芸術作品に見える」と彼が答えたので、わたし達は吹き出した。
「ルアランのナントカっていう画家を超えるのではないかと思う」
「なんだよ、ナントカって」
「なんとかハートっていう、風景画で有名な画家がルアランにいるんだよ。で、その人が描いた人物画が団長の絵に似ていることがあるわけ。マジで面白いから今度見てみて。多分、画廊に行くと売られているよ」
楽しい話でたくさん笑わせてもらった後、わたしは「またアレンさんと一緒に来ます」と言ってバーを後にした。美味しいと噂の牡蠣のオイル煮も最高だった。
上機嫌でお部屋へ戻ると、入ってすぐのところにミストさんがいたので「ただいま戻りました」と声を掛けた。
「団長から皆さま宛に伝言が届いています」
「え……、ヴィルさん、まだ戻っていないのですか?」
「はい、まだ市長のところにいるそうです」
ミストさんがフィデルさんにメモを何枚か渡した。
時刻は二十二時を回っている。
さすがに戻っているだろうと思っていただけに少しショックだった。
一番新しい伝言には「帰りは夜中になる」と書かれているようだ。
「詳しくは分からないが、問題が起きているのだろう。あちこち動いて最終的に市長のところへ戻っている」
フィデルさんは過去のメモを時系列で見ながら眉間にシワを寄せた。
「何か調べ回っているのでしょうか」とアレンさん言うと、フィデルさんは頷いた。
「教会、牧場、病院、漁業組合……訪れている場所にまったく関連性がない。しかし、夕方以降は部下を八人付けてある。応援要請も来ていないから、人手には困っていないということだろう」
「となると、政策的な問題ですかね?」
「それだと我々には手も足も出ないな。手伝ってくれと言って彼が事情を話してくれるのならば話は別だが、我々からよその領地の問題に首は突っ込めない」
「そうですねぇ……」
二人の話を聞いてしょんぼりしていると、アレンさんがヨシヨシしながら「今日は先に休みましょう」と言った。そして、お部屋の前まで連れていってくれた。
お風呂に入って寝る支度を済ませ、ガウンを着込んでペントハウスのリビングに出た。
もふもふクッションがたくさん置いてある広いソファーにころんと転がると、ガラス張りの天井から満天の星空を眺められる。
クッションを抱っこして、贅沢なプラネタリウムを堪能した。
もうじき日付が変わる。
ヴィルさんはまだ戻ってきていない。
初めての旅行だったし、もう少し一緒にいられるのかなと期待していたけれども、現実はそう甘くなかった。
最近、おぱんつ系の質問攻撃がピタリと止んだので、もう二人きりになることを警戒してはいないのだけれども、そうなったら今度は彼が忙しくなってしまった。
星を見ていると、まぶたが重くなってきた。
──夢を見た。
遠くでわたしを呼ぶ声がして、返事をした。
雲がわたしに「天から落ちてきたみたいだ」と言う。
体がふわりと浮いて、雲と一緒に漂った。
気持ちが良くて、そのままふわふわ漂っていると、わたしのお気に入りのフカフカソファーが迎えにきた。
ソファーに乗って漂っていると、そばに誰かが来て髪を撫でた。そして、小さなキスをくれた。触れたか触れないか分からないくらいの優しいキスだった。
──────────────
※117話と118話の間に、幕間のエピソードがあります。
『第117.1話:ベルソール』
『第117.2話:旗振り信号』
『第117.3話:アレンと壁』
メンバー限定ですが、もしご興味がありましたら下記をご覧ください。
https://mutsukihamu.blogspot.com/p/note_21.html
すると、ダニエルさんはニヤニヤしながら思い出話を始めた。
「出会った頃のアレンは、今よりもずっと不愛想で」
「ちょっと待て、余計なことは言うな」
「目つきも悪くて少し怖い雰囲気だったけれど、話してみたら実はすごく優しい奴で」
「なんか引っ掛かる……」
「よく私を褒めてくれました」
「ふむ」
「彼は私と仲良くなってからモテるようになったと言っていて……」
「ちょっ、お前マジで黙れ!」
「あはははっ、素が出た。冗談だよ」
「リア様、彼の話は半分以下で聞いてくださいね? 真に受けないでくださいね?」
クール系のアレンさんをイジれる貴重な新キャラ登場に、わたしの心は沸いていた。
彼を手玉に取るとは素晴らしい(笑)
「アレンさんは生徒会だったのですよね?」
「リア様、話を振らなくていいですからっ」
ダニエルさんは嬉々として「いやぁ、今日は楽しい夜になりそうだなぁ」と言った。
二人は十歳に満たない頃からの付き合いらしい。
周りから揶揄われていたダニエルさんをアレンさんが庇ったことがきっかけで仲良くなったそうだ。
「当時、商業科から騎士科への転科というのはすごく珍しくて……。しかも商人の息子だというだけで道楽だと思われてしまうのです」
「でも御嫡男ですから、それなりの覚悟があってのことでしょう?」
「ええ、本人は至って真剣なのですが、私もこういう感じなので、なかなか真剣さが周りに伝わらなくて」
「無事に卒業して騎士団に入れたのはアレンのおかげです」と彼は言った。
二人が出会った頃、アレンさんも少し悩んでいた時期だったらしい。物怖じせず話しかけてくる朗らかなダニエルさんの存在は大きかったそうだ。
二人は持ちつ持たれつの良い関係を築けたのだろう。
共通の憧れの先輩は「クランツ先輩」だそうだ。
男子の憧れはヴィルさんのような王子様タイプではなく、クマさんタイプらしい。
「男が惚れる男というやつですね、団長は」とダニエルさんが言うと、アレンさんも頷いた。
「女性から見ると感じ方も違うでしょうが、我々から見ると、同じ時代にいてくれて良かったと思う先輩です。いまだにお世話になっています」
ああ、後輩から慕われるくまんつ様、やっぱり素敵です。
「またお会いしたいですねぇ。先日のお礼もしたいですし、新しい絵も描いて頂きたいし」
「絵はやめてください」
「どうして? アレンさんだって大好きでしょう?」
「生命の危機を感じます」
「ぷふふっ」
ダニエルさんは「似顔絵を描いてもらうのがオススメ」と言った。
上手いのかとアレンさんが尋ねたところ、「ちっとも上手くないのに、なぜか一周まわって芸術作品に見える」と彼が答えたので、わたし達は吹き出した。
「ルアランのナントカっていう画家を超えるのではないかと思う」
「なんだよ、ナントカって」
「なんとかハートっていう、風景画で有名な画家がルアランにいるんだよ。で、その人が描いた人物画が団長の絵に似ていることがあるわけ。マジで面白いから今度見てみて。多分、画廊に行くと売られているよ」
楽しい話でたくさん笑わせてもらった後、わたしは「またアレンさんと一緒に来ます」と言ってバーを後にした。美味しいと噂の牡蠣のオイル煮も最高だった。
上機嫌でお部屋へ戻ると、入ってすぐのところにミストさんがいたので「ただいま戻りました」と声を掛けた。
「団長から皆さま宛に伝言が届いています」
「え……、ヴィルさん、まだ戻っていないのですか?」
「はい、まだ市長のところにいるそうです」
ミストさんがフィデルさんにメモを何枚か渡した。
時刻は二十二時を回っている。
さすがに戻っているだろうと思っていただけに少しショックだった。
一番新しい伝言には「帰りは夜中になる」と書かれているようだ。
「詳しくは分からないが、問題が起きているのだろう。あちこち動いて最終的に市長のところへ戻っている」
フィデルさんは過去のメモを時系列で見ながら眉間にシワを寄せた。
「何か調べ回っているのでしょうか」とアレンさん言うと、フィデルさんは頷いた。
「教会、牧場、病院、漁業組合……訪れている場所にまったく関連性がない。しかし、夕方以降は部下を八人付けてある。応援要請も来ていないから、人手には困っていないということだろう」
「となると、政策的な問題ですかね?」
「それだと我々には手も足も出ないな。手伝ってくれと言って彼が事情を話してくれるのならば話は別だが、我々からよその領地の問題に首は突っ込めない」
「そうですねぇ……」
二人の話を聞いてしょんぼりしていると、アレンさんがヨシヨシしながら「今日は先に休みましょう」と言った。そして、お部屋の前まで連れていってくれた。
お風呂に入って寝る支度を済ませ、ガウンを着込んでペントハウスのリビングに出た。
もふもふクッションがたくさん置いてある広いソファーにころんと転がると、ガラス張りの天井から満天の星空を眺められる。
クッションを抱っこして、贅沢なプラネタリウムを堪能した。
もうじき日付が変わる。
ヴィルさんはまだ戻ってきていない。
初めての旅行だったし、もう少し一緒にいられるのかなと期待していたけれども、現実はそう甘くなかった。
最近、おぱんつ系の質問攻撃がピタリと止んだので、もう二人きりになることを警戒してはいないのだけれども、そうなったら今度は彼が忙しくなってしまった。
星を見ていると、まぶたが重くなってきた。
──夢を見た。
遠くでわたしを呼ぶ声がして、返事をした。
雲がわたしに「天から落ちてきたみたいだ」と言う。
体がふわりと浮いて、雲と一緒に漂った。
気持ちが良くて、そのままふわふわ漂っていると、わたしのお気に入りのフカフカソファーが迎えにきた。
ソファーに乗って漂っていると、そばに誰かが来て髪を撫でた。そして、小さなキスをくれた。触れたか触れないか分からないくらいの優しいキスだった。
──────────────
※117話と118話の間に、幕間のエピソードがあります。
『第117.1話:ベルソール』
『第117.2話:旗振り信号』
『第117.3話:アレンと壁』
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