炎のように

碧月 晶

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38.イグと2人

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イグは俺と二人っきりの時以外は常に敬語で話す、教育係の顔だ。逆に言えば、俺だけしかいない時は幼馴染みの顔になる。それでもあまり態度は変わらないが…

因みに俺を『ヴァン』と略称で呼ぶのはイグだけだ。

「…なあ、イグ」
「何だ?」
「今日船に乗っていた黒いローブの男の事なんだが…」
「黒いローブの男?…ああ、お前が珍しくちょっかい出してた奴か」
「そうだ」
「あいつがどうかしたのか?」
「…あいつが何故か気になる」
「…ほー…お前が、ねぇ」
「? 何だ?」
「いや?別に。確か、そいつの名前は『アル』だったか?」
「ああ。あいつについて教えてくれ」
「………あいつについて、か」

イグが少し困ったような顔をした。

「どうした?イグ」
「…いや。明日そいつに関しての資料を持って来てやる。だからもう今日は休め」
「? ああ、頼む。」

イグの反応が少し気になったが、何にせよ教えてくれるというなら助かる。


 
イグが出て行ってから数分後、ある事に気が付く。

「…そういえば、暫くあそこに行けてないな」

 誰にも教えていない、俺しか知らない、俺の小さい頃からのお気に入りの場所。

 
明日行くことにしよう。

 
そう決めて部屋の明かりを消した。

 
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